Stroebe et al. (担当:藤島)

Post date: Feb 26, 2013 7:02:44 AM

Scientific Misconduct and the Myth of Self-Correction in Science

当日の議論と感想

当日の議論:不正検出に内部告発が有効だとしても、はたしてそれを促進できるのか。

  • 内部告発を促進するとしても告発者保護の困難がある。共同研究者はそれまで投資した労力を無駄にすることになる。特に、共同研究者が大学院生で会ったときには、本人のキャリアに関わるし、場合によってはハラスメントを受けるかもしれない。そのため、内部告発に踏み切るインセンティブに乏しい。内部告発者の地位と今後を保護する仕組みが重要だが、可能だろうか?
  • 誰が不正を予防し、取り締まるのか、という問題もある。現状では、不正を働いた研究者の所属研究機関が主体となって、全容を明らかにし、それに対する処罰を決定している。この場合、Hauserの事例に代表されるように、所属研究機関が積極的な対処を行わず、うやむやになってしまう場合がある。このような研究機関にどのような対処がかのうだろうか。国レベルで対応ができるのだろうか。

発表者の感想:心理学における不正抑制の慣習、制度作り

  • 今回の論文は、心理学における不正と他領域の不正を比較し、不正件数としては心理学より生物医学の方が多いことを示しました。生物医学での不正発覚数が多い理由として、生物医学の方が検出の容易であることがあげられましたが、この点は重要だと思います。生物医学では、倫理的配慮から臨床実験実施に関する提出書類が多くなっていると同時に、CONSORT, STROBEなどのチェックリストが確立されています。他方で心理学ではこのような習慣や制度が確立しているとはいえません。
  • 研究の習慣として、研究手順を事前にできるだけ明確に決定してしまうこと、それを記録にとどめることが重要だと思います。また、分析経過についても随時記録として残す必要があると思います。いわゆるラボノートの作成は心理学でも必須なのだと思いますが、これを系統だって教育している機関は少ないと感じます。次に制度面として、投稿の手引きのupdateが必要だと思います。また、投稿側、査読側のチェックリストを整備することも必要だと思います。これらは不正検出というネガティブなイメージではなく、より公正な協働を促進するために友好なのではないでしょうか。

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