平井コメント

Post date: Feb 28, 2013 7:54:25 AM

【再現性】

今回の特集で特に問題となっていたのは、疫学的にいうと、因果関係の仮説が明確であり、事前の効果量推定ができるいわゆる「実験デザイン」に関することだったとおもいます。日本の心理学で多数を占める分析的デザインを念頭において理解しようとすると若干ニュアンスが変わってくるように思いました。ある研究で証明された因果関係が別の研究で再現されるかということで追試が必要になり、一方でそういう研究が少なく、大半はコンセプチュアルな追試に留まっているというのは、心理学自体が明確な因果関係を厳密に検討することが苦手であるということを表しているのではないかと感じました。

【効果量】

上記に関連しますが、再現性を考える上で、効果量を念頭において考えることが重要だとおもいます。実験や調査を行う前の段階で、十分な効果量が推定できない研究は、仮説自体がコンセプチュアルな段階であり、仮説自体を探索的に検討するフェーズとして研究を進める必要があるのだとおもいます。逆にそういう研究であれば再現性について大きく気にすることはないのではないかと思います。

【パブリケーションバイアス】

パブリケーションバイアスは研究者のインセンティブに大きく影響を受けるとおもいます。やはりネガティブデータを公表することにもっとインセンティブがあるようにする、少なくともそれがマイナスに評価されないように、特に査読者教育が重要だと思いました。あと欧米に比べると特に心理学では出版数自体が少ないです。論文の本数だけでなく引用数が業績評価に用いられるようになってきていますので、そのためにもベースとなる(英語論文の)出版数を増やすことをまずとりくむべきだと思いました。