1.1.2 地球の夕焼けの再現①

地球の夕焼けを実験室レベルで再現する.

はじめに

1.1.1で紹介したように,地球の夕焼けは,地球大気による散乱(レイリー散乱)で波長の短い光が抜け落ち,波長の長い光が観測者に届くことによって起きている.これを実験室サイズに縮めて再現するにはどうすべきだろうか.太陽光が大気中を数百キロメートル進む際に,空気の分子から受ける散乱と同程度の効果を,実験室内の数メートル程度の距離で再現しなければならない.実際の夕焼けと同じように,空気の分子で散乱させて再現するには,光源の強さを太陽定数(1.37kW/m2)と同程度にした場合,空気の密度は通常の大気のおよそ105~106倍にしなければならず,これは現実的な数値ではない.そこで,従来から知られている実験方法に少し工夫を加えて地球の夕焼けの再現を試みた.

実験の概要

(A) 準備するもの

水槽, 白色光源,スクリーン, 水, チオ硫酸ナトリウム, 塩酸, ビーカー, 電子天秤.

(B) 実験方法

  1. 水槽の水の中に,散乱粒子として,硫黄の微粒子を分散させる.(水槽に水を入れ、チオ硫酸ナトリウムを溶かし、そこに塩酸を加える.反応が進み,硫黄の微粒子が分散する.粒径は時間経過にともなって大きくなっていく.)

  2. 硫黄の微粒子を分散させた水【大気】に白色光源からの光【太陽光】を入射する.

  3. 硫黄の微粒子によって散乱された光および透過光を観察する.

(C) 実験結果:

  1. 波長の短い青っぽい光が散乱されている.【青空】

  2. スクリーンには赤っぽい色の透過光がとどいている.【夕焼け】

(D) 考察:

実験結果から考えられるのは,次の2つの可能性である.

  1. 硫黄の微粒子(粒径 << 可視光の波長)によるレイリー散乱によって,地球の夕焼けが再現された.

  2. 硫黄の微粒子(粒径≒青色の波長 ,水に対する硫黄の粒子の相対屈折率≒火星大気中の散乱粒子の屈折率)によるミー散乱によって、地球の夕焼けが再現された.

地球の夕焼けを再現する実験

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