ピラトコミ山
ピラトコミ山(ピラトコミ南東尾根往復)
○1994年4月16日~17日
○L大山 吉岡(男2名)
○コースタイム
16日
07:00 ピョウタンの滝車止め
08:25 コイカク沢出合
12:30 Co1100m(C1)
14:05 ピラトコミ山頂上(P1588m)
15:20 Co1100m(C1)
17日
07:05 C1
O8:40 コイカク沢出合
10:45 ピョウタンの滝
今回はコイカクの沢の入口にあり、あまり登られていないピラトコミを目指した。
横断道路工事のためピョウタンの滝からは車両通行止めとなっている。
ヒッチを期待して歩きはじめる。
10台目くらいで乗せてもらえ1時間ほど稼ぐ。
ピラトコミ直登沢に着くと旭川労山のパーティーがいた。
彼らもヒッチしてきたとのこと。
これより尾根に取りつく。出だしから細い尾根の急登となり、ザックが藪に引っ掛かって歩きにくい。
向かいの尾根を見て標高を確かめながら登るが、なかなか進まない。地図には表れない小さなコブとギャップが意外に多く、Co1100mの台地までは薮のひどい尾根である。またCo800mの崩土記号は岩が露出している。
当初は頂上でテンパるつもりで全荷で登っていたのだが、ペースが上がらずに時間切れになると判断。Co1100m直下に快適なテントサイトを見つけてClとし、ここから空荷で登ることとした。
Co1200mの急登あたりからようやく樹木もまばらとなり、快適に登れるようになる。
北側の視界も利くようになり、勝ポロなどが見えだす。やっとのことで旭川労山に追いついた頃にはようやく頂上が射程内に入ってきた。
頂上稜線は厳冬期であれば雪庇がやばそうであるが、この時期は難なく飛びだせる。とたんに木の間越しに中部日高の山脈が飛び込んでくる。
頂上へは雪庇を避けながら10分ほどで着く。頂上はうまい具合に視界が利き、風は強いが晴れているので1823峰やカムェク、日高ボロ、目を転ずればヤオロ、ルベッネが望まれる。
とくにカムエクの南西稜がヒマラヤ嚢のように輝いていて荘厳であった。
その夜は風が一晩中喰っていたが、C1は全く静かであった。翌日、大山予報官の託宣の如く、尾根を下りきる前に雨に降られ、林道は雨の散歩となった。
この山はふもとでキャンプして往復するのがよい。
(茶房多種No.190記録・吉岡)
ピラトニコミ山(ピラトコミ東面コイカク1の沢往復)
○1996年7月7日
○L中澤 岩本 藤川(男2名女1名)
○コースタイム
7日 霧雨
05:20 コイカク沢出合車止め
06:40 Co660m
地図上滝マークゴルジュ
07:45 スラブ枝沢
09:30 引き返し点(Co900m辺りか)
11:30 Co660m
12:45 車止め
今年は雪解けが遅く、選んだのは標高の低いピラトコミ山。
沢も短く南東面向きで等高線も下部は緩やか。
遡行の記録はなく魅力ある沢ではないのか?。ゴーロとガレを詰め上げるだけの沢でなければ良いなあというぐらいの感覚で入渓。
F氏が加わってくれて百人力。出合は水量も少なく、すぐ上には堰堤が見える。
予想通り穏やかにスタート。
気温は低いが水温はさほどでもない。寒さを予想して服装はいつもの倍。
Tシャツに沢シャツ、ズボン下にジャージ、靴下も毛糸の厚手だったが、雨のせいもあるのか歩いていて暑さは全く感じなかった。
堰堤は3つ連続。全て左から越える。
うっすらとだが踏み跡らしいものも見える。釣り人かそれともピラトコミ山登山者か。
穏やかな流れを左右に進んでいく。
沢が小尾根を左に回り込んでいくところで小さなゴルジュ。
暑い日なら腰まで浸かって行くところだが、今日は膝までが限界。必死にへつる。
ゴルジユの中にスノーブリッジの残骸が登場。ちょっとばかし早すぎるんでないかい。 破片を乗り越えて進む。沢はナメ状の流れとなり、両岸が迫り止すと2つ目のゴルジュ。
地図の滝マークのところだ。
入口の滝は3m程だが濡れる覚悟がないと登れない。
右の草付きはいやらしい。左を大きく巻くことにした。
滝のすぐ手前から左の壁を登って薮にスる。
20mぐらい登り、沢身を覗きながらトラバース。
意外と楽にゴルジュの出口に陰りられる。中の滝は小さなものが4つ程。
暑い日ならば十分通過は可能とみた。
しばらく渓を進むと正面に細い流れを2~3本見せるスラブ状の枝沢。
ここから本流も滝が始まる。
地図上では広い河原のように思っていたのだが予想が外れた。
地元が地図と違っているように感じる。
現在岬点の把握ができなくなる。
滝はすぐ左か色上の4m滝2つは傾斜の強いナメ状で取り付けず、右岸の薮をパス。
すぐ沢が右に狂れるときついナメ滝の連漫帯となった。
直登はボルトの連打という感じ、
考える余裕無く右の根曲がりに突入。
小さく巻いて3つ上の滝の落ちロヘ。
その上にも10mののっべりした滝。また右手の薮を登る。
地区からは想像もできない沢筋だ。Fと“現拍地点はどこでしょう?"と地図を眺める力合点のいくような地形がない。
はてな?とにかく本流らしいところを進みましょうと左右に分かれる枝沢(ナメ状のスラブ滝となって流入してくる小沢。(多数出てきて地図でも確認不能)を過ぎていく。
大きな二股でまた考える。
左はギッシリと詰まった雪渓。Fの高度計ではまだ標高700mを越えた程度で傾斜が強くなるはずがない。
おかしいおかしいと首をかしげながら本流らしい右股へ入る。
少しで沢がパッと開けると雪渓となった。
いよいよきたか。アイゼンとピッケルを持ってこなくてはいけなかった。靴なし、アイゼンなし、ピッケルはN1本のみ。と悔やみながらそれでも登っていく。
前が開けると沢はV字状の草付きゴルジュとなりグッと傾斜を強めている。
沢身にはボロボロの雪渓が詰まってところどころ切れ目から滝が顔をのぞかせている。“これは行けないわ"右岸の薮の高巻きが始まる。
100m程でうまく雪渓に降りられ、こわごわ雪渓を登り始める。
両脇は大きくシュルンドが開き、かなり末期の雪渓だ。下をゴーゴーと流れる水音が響く。
両脇が溶けたか落ちたか?幅せいぜい2m程のノドのようになった部分で前を見ると50mぐらい先で滝が露出して通過不能。このノドすら中央だけ残っている雪渓なんて恐ろしくてアイゼンピッケルでも通りたくない。
ついにギブァツブ。滑りそうな雪渓をそろそろと下る。
草付きに戻ってホッとする。
前の1の足元の岩が落ちてきそうで何の気なしに掴んで下へ落とす。
15㎝径くらい。「ズズツ、ゴポ、ズム」と何ともいえない腹の底に響く音を残して、目の前、今歩いていた雪渓のほんの数m下から雪渓崩壊。
唖然…。お互い顔を見合わせて声も出ない。
登りで草付きを降りてきた時もだいぶ石は落としていたのに。
はずみなのか、当たり所なのか、ついに衝撃が臨界点に達したのか?。
断面は中央でも1m以上の厚みがあるのが見えているのに、小石一つの衝撃でこんなに簡単に崩壊してしまうとは…。
もしそこに踏み込んでいたとしたら…。冷や汗タラア。
我々の雪渓上の行動もほんの僥倖だったのかもしれない。
ヤッパリいやだ!雪渓歩きなんてイヤダア!下りは滝マークのゴルジュの降り口で10m弱の懸垂をした他は登ったとおりに降りられる。
Fは竿を出して晩飯を釣り始めたが当たりなし。水が冷たすぎるのか、下の堰堤が悪いのか。
最後まで霧雨そぼ降る中の沢初めとなった。
この時期の沢は本当に恐ろしい。特に雪が残る部分の処理はどんなにしっかり続いているように見える雪渓ですら命を懸けて通過しているんだと思った方が良さそうである。
スノーブリッジや沢脇に残る雪渓の断片は、小さな落石はもちろん、人の声一っでも崩壊・横転するものだということを身を持って思い知った。
しかし、北海道の沢ではスノーブリッジを避けては通れない。困ったもんだ。
(茶房多種No.217記録・中澤)