亘理町 にぎわい回廊商店街

「人が集い、活気あふれるふるさとを、もう一度取り戻そう!」

宮城県亘理町に、にぎわいとなりわいの再生拠点施設があります。

海のレジャーや温泉が楽しめる場所として、「はらこめし」発祥の地として

県民からも大きな人気を集めていたまち・宮城県亘理町荒浜地区。

大津波は家並みを奪ってしまいましたが、それでも人々は荒浜に集います。

平成27年春には再生の先駆者を目指す商業者たちの「にぎわい回廊商店街」がオープン。

「海から畑から、おいしいものが届く」「海も山も見える。こんなにいい場所はない」

もう一度、にぎわいとなりわいのあるまちへ―。荒浜に元気な声が戻ってきました。

宮城県亘理町は県の南部、阿武隈川の河口付近に広がる田園のまちです。

豊かな耕土が開かれて、水稲のほか、特に園芸野菜の栽培が盛んです。

阿武隈川河口付近の風景

河口のすぐそばには「鳥の海」という汽水湖もあります。文字どおりの野鳥の生息域として知られていました。

また、その「鳥の海」の北側に、港町・荒浜地区があります。

荒浜漁港、町営の温泉施設である「わたり温泉鳥の海」などのほか、街には名物「ほっきめし」「しゃこめし」「はらこめし」などを食べられる飲食店、獲れたての海産物を販売する魚屋さん、お寿司屋さんなどがたくさん立ち並び、季節ごとの味を求めてやってくる多くの人たちでにぎわっていました。

荒浜漁港

しかし、東日本大震災の津波は荒浜のまちを襲い、さらに内陸へと押し進んで、町の広い範囲に大きな被害をもたらしました。

荒浜地区では、一瞬にして家並みが消え、住宅や商店のコンクリート土台がむき出しとなり、街も、そして農地もガレキに埋もれてしまいました。

荒浜小学校前にある津波到達の碑

それでもまちの人たちはあきらめませんでした。

「豊かな大地も、そして海も、私たちのふるさとだ」

「荒浜に、もう一度にぎわいとなりわいを取り戻そう」

荒浜の復興は、亘理町全体の復興にも大きな力になる。

土色に変わり果ててしまった大地に、人々はもう一度立ち上がることを誓いました。

震災から3年半が過ぎた平成26年10月4日、町営の温泉宿泊施設「わたり温泉鳥の海」と「鳥の海ふれあい市場」が戻ってきました。

「亘理温泉鳥の海」は、震災前「鳥の海荘」という名称で営業していました。

津波による倒壊こそ免れたものの、2階付近まで浸水したため営業は休止となり、また、館内に入居していた産直市場「鳥の海ふれあい市場」も閉鎖となりました。

ふれあい市場は漁港近くに新たに完成した「きずなぽーと わたり」という施設の1階に開店、そして「鳥の海荘」も名前を変え、日帰り温泉施設として生まれ変わりました。

きずなぽーと わたり

わたり温泉 鳥の海

また、平成27年、3月15日には、新しい「商店街」として「にぎわい回廊商店街」もオープン。

施設全体にアルミ製の大きな屋根(アーケード)が掛けられていて、メーンストリート沿いに8軒の商店が並んでいます。

雑貨店、自転車店、カフェ、居酒屋、海鮮丼などを提供する食堂など、津波で店舗を失ってしまった商業者の皆さんです。

にぎわい回廊商店街

「皆、荒浜への思いが強い人たちです。郷土愛というか、自分たちが生まれたまち、育ったまち。今は内陸の仮設住宅にいる元荒浜地区の住民たちも、いつかは荒浜へ戻りたい・・・と言う人は多いんですよ」

そう話すのは「菊一商店」の菊地一男さん。「鳥の海ふれあい市場協同組合」の理事長でもあります。

鳥の海ふれあい市場協同組合理事長の菊池一男さん

「住宅街からは遠いし、夜はまだまだ真っ暗です。商業地としての条件は悪いけれど、そんな中でも遠くから来てくれる人がたくさんいます」

市場、温泉、そして商店街ができて、人の流れも変わりつつあるそうです。

かつての荒浜は、海水浴や潮干狩りもできました。

「海もですが、夏は蔵王に沈む夕陽もキレイです。そして星空も・・・。海遊びがもう一度再開できたらもっと多くの人に来てもらえるはず。何よりも子どもたちの声が聞きたいですね」(菊地さん)

また、亘理の郷土料理であり、今や宮城の秋の味覚を代表する逸品でもある「はらこめし」は荒浜が発祥の地と言われています。今では提供できるお店も10店舗ほどに増えています。

「「よそで食べるのとでは味が違う! と言う人も多いです。私たちも本家本場の味をお届けしたい」と菊地さんは言います。

「にぎわい回廊商店街」のアーケードではイベントも行われています。

毎月第1・第3日曜日には、魚貝の浜焼きや鍋物を提供したり、ミニコンサートを開催するなど、催しがあります。

大屋根付きなので、急な雨でも大丈夫。

回廊を応援してくれる県外の支援団体が、子どもたちのためにとトランポリンを持ってきてくれたり、大道芸やミニサーカスで盛り上げてくれたこともありました。

夏はロックフェスティバル、地元のアマチュアバンドのコンサート、そしてプロのシンガーのステージ・・・。

平成27年には「亘理ふるさと夏まつり」も4年ぶりに復活しました。

亘理町の基礎を築いた伊達政宗の家臣・伊達成実公の山車など4台が練り歩き、花火や盆踊り、灯籠流しも行われ、2万人の人出でにぎわいました。

北海道伊達市から寄贈された山車

何かの催事やお祭りがあれば、みんなが荒浜へやってくる。集まることができる。

「荒浜って、そういう場所なんです。宮城の人たちみんなが気にしてくれている〝まち〟なんです」(菊地さん)

平成28年3月17日は常磐自動車道の鳥の海PAにスマートICもできました。

そして、「にぎわい回廊商店街」にはさらに5店舗ほどが出店を計画中とのこと。

まちも、荒浜地区に野球場やグラウンドを整備中で、将来的にはパークゴルフ場など体験施設も出来ていく予定です。

「そうやって少しずつ、にぎわいが戻っていけば嬉しいです。そしてその始まりが『にぎわい回廊だった』と言われるように、私たちもがんばって行きたいと思います」

大きな空とやさしい海風と、たくさんの四季の恵みがある亘理町荒浜。

戻りつつある街の賑わい。

これからもずっと、ここは「みんなが気になる場所」であり続けるでしょう。