仙台市 若林区復興の輪ミーティング

「一人じゃないよ、みんながいるよ」

宮城・仙台で、支え合いのまちづくりの輪が大きく広がっています。

海岸エリアが大きな津波被害を受けた仙台市若林区。

たくさんの支援のおかげで復興が進む一方、

家族やコミュニティを失い、今なお、支援を必要とする方々もいます。

「被災した方々の周りにゆるやかな輪をつくろう」

仙台市社会福祉協議会や地域の支援団体が、

情報交換の場「若林区復興の輪ミーティング」を重ね、

一人ひとりの心に寄り添う活動を続けています。

地域のみんなで支え合い、助け合う。ふれあいとつながりのまちづくりが進行中です。

「杜の都」と呼ばれる県都・仙台市の中心街区は比較的内陸にありますが、5つの区のうち若林区と宮城野区が海に接しています。

平成23年3月11日、仙台市の沿岸を、大津波が襲いました。

海岸近くの住宅をはじめ、工場や倉庫、学校、商業施設などが流失し、水田や耕地、道路や橋なども大きな被害を受けました。

東日本大震災によって仙台市内では906名※(仙台市民以外の方94名を含む)の方が亡くなりました。

※平成27年9月30日時点

ご家族や友人を亡くした方、ふるさとや地域コミュニティを失った方など、震災前とは暮らしが大きく変わり、元気を取り戻せないでいる方々が多くいます。

ハード面の物理的な復興だけではなく、被災した方の心の支援、生活や健康づくり、新たなコミュニティづくりなど、まだまだ大きな課題があり、震災から5年がたとうとしている今でも、支援や応援を求めている人たちがいます。

「一人じゃないよ」「そばにいるよ」

ふれ合う、言葉を交わし合う。つながり、絆。

心の復興というテーマを、確かな実感に変えていくこと。

仙台市社会福祉協議会若林区事務所では、復興のために区内で様々な活動をしている団体の情報交換とそれぞれの考えや思いを共有し、必要な支援について考える場として、年4回程度「若林区復興の輪ミーティング」という集いを平成24年1月より26回開催しています。

仙台市内には、被災した住民の現在の生活をサポートする多くの団体があり、積極的に活動中です。

復興公営住宅での体操教室、復興公営住宅内や地域住民との交流の場づくり、みなし仮設住宅や復興公営住宅の入居者を個別訪問、仮設住宅でのサロン会の開催、障害のある方や難病の方の支援、仮設住宅や復興公営住宅での子どもの遊び場の定期的な開催、お年寄りへの傾聴ボランティア、震災を風化させないための情報発信・・・。

そうした活動に参加している人たちが、「みんなの経験と知恵を復興のために総動員しよう」「震災前のような、懐かしくあたたかい日々が一日も早く戻ってくるように、被災者の皆さんのまわりをゆるやかな輪で囲もう」と考え、「若林区復興の輪ミーティング」がスタートしました。

今必要な支援は何か、支援がアンバランスになっていないか、どこに支援が不足しているのか、過剰になっていないか?

長い時間がかかる復興期の中で、被災者それぞれの各段階に応じた有効な支援が届けられて、震災後の新しい生活を安心して送ってもらえるように・・・。

「一つひとつのサークルにできることは小さくても、皆で協力し合い、共有することで、力は何倍にも大きくなります」

そう語るのは、仙台市社会福祉協議会若林区事務所長の堀英敏さん。

仙台市社会福祉協議会若林区事務所長の堀英敏さん

「大切なのはコミュニティ。支え合い、助け合える。そんな輪を作って、いつまでも繋ぎ続けたいと思います」

平成27年10月29日には25回目となる「復興の輪ミーティング」が若林区中央市民センター別棟で開催されました。

「復興の輪ミーティング」が行われている若林区中央市民センター別棟

ミーティングは文字通り「輪」になって開始されます

この日は21団体が参加。「被災者の今」をテーマにしたふたつの事例発表が行われ、そのあと「これからの復興公営住宅へどのような支援ができるのか」「これからの仮設住宅にどのような支援ができるのか」について4つのグループに分かれて分科会が開かれました。

グループディスカッション

意見を書き出していきます。

「趣味・特技、あるいは健康づくりを目指したコミュニティを作る」

「お茶会やサロンなどには男性の参加が少ないですね」

「民踊や演歌だけじゃなくグループサウンズ世代の人にはギターを演奏してもらうとか?」

「避難所や仮設住宅時代の同窓会を求める人もいますね」

「手をかけすぎないで目をかけることが大事」

「継続は力なりと信じて」

この日もたくさんの声が交わされて、分科会で話し合われた内容は、ミーティングの終わりに発表され、皆で共有されます。

そこで得た情報は、それぞれの団体の活動に生かされていきます。

最後に発表

堀さんは、

「阪神淡路大震災から20年が経過した神戸市へも視察研修に行ってきました。復興公営住宅などは高齢化率が高く、高齢者が高齢者の見守りをするような状況があります。現在の神戸市が抱える課題は、やがて若林区でも同じような課題となって浮上してくるのかもしれません」

と話します。

コミュニティづくりのサポートは、仮設住宅や復興公営住宅への支援が中心ですが、地域に輪が広がっていくことで、元気や生きがいづくり、お年寄りの積極的な社会参加へとつながっていくはず。

「さらにはそれが『まちづくり』へと変化していく。そんな若林区であってほしいと願っています」(堀さん)

人は人とつながって生きています。

誰かをひとりぼっちにしない。互いに寄り添い支え合う。

誰もが元気で暮らしていけるまちがいい。

「一緒に元気になろうよ」「みんなでがんばろう!」

支え合いのまちづくりの輪が広がっています。