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七ヶ浜町 Nana5931

「震災の教訓を、私たちの声で世界に響かせたい!」
宮城県七ヶ浜町。子どもたちが被災地の希望を歌い上げます
 
大震災の起こったその年から、防災と命の大切さを伝えてきた
ミュージカルチーム「NaNa5931(なな ごーきゅうさんいち)」。
地元宮城県七ヶ浜町をはじめ県内外各地で上演活動を行ってきました。
「七ヶ浜が大好き!」「今度は私たちが多くの人を支えたい」
過去を学び、今を知り、感謝し、そして未来へ──。子どもたちの歌声は、
ふるさとの未来と希望と誇りを乗せて、太平洋に響き渡っていきます。







仙台湾の海風をいっぱいに浴びる七ヶ浜町花渕浜地区の高台に、コンサートホールや資料館、レストランなどを備えた町立の複合文化施設「七ヶ浜国際村」があります。

七ヶ浜国際村







その七ヶ浜国際村に、平成13年から活動を続けている「NaNa5931(なな ごーきゅうさんいち)」というミュージカルチームがあります。

舞台を観た人は、その表現力の高さと確かさに驚かされます。
研さんを重ねてきた全身からほとばしる熱さと豊かさ。
チームとしてのパフォーマンスの調和と美しさ。

平成24年11月、チームは東日本大震災の津波被害をテーマにした作品『ゴーヘGo Ahead』を発表しました。名古屋大学豊田講堂、そしてミュージカルの聖地といわれる東京「日生劇場」でも公演を行い、全国から多くの賛辞と高い評価を受けました。

そして平成27年11月、新作となる『ゴスタン Go Astern』が上演されました。
これは、『ゴーへ Go Ahead』の対をなす作品。
Go Aheadは「前へ」、Go Asternは「後ろへ」という意味。
地元・七ヶ浜の漁師さんたちは、実際に海で船を誘導するとき「ごーへ」「ごすたん」と言って使っている言葉です。


ミュージカル『ゴスタン』より



ミュージカル『ゴスタン』より



ミュージカル『ゴスタン』より


『ゴーへ Go Ahead』は、震災から立ち直るために、七ヶ浜に脈々と受け継がれてきた『Go Ahead=先取のスピリット』をもう一度思い出そう、という作品。
そして2015年の新作『ゴスタン Go Astern』は、「千年先の未来から現在の七ヶ浜を見てみよう」という作品です。

それは、こんなストーリーです。
3011年の七ヶ浜町。この町に棲むネコとタヌキとイヌは、ある日、海岸の近くで「海に近づいてはいけない。『ゴスタン』 反対側へゴー」と書かれた不思議な石を発見しました。3匹は意味も分からないまま「ゴスタン、ゴスタン・・・」とつぶやいていると、にわかに空が曇りはじめ、かすかな光の中にはなにやらうごめく者たちが・・・。
3匹は過去へタイムスリップし、町の歴史をたどりながら2011年3月11日に行き着きます。

ファンタスティックな構成の中に繰り広げられる主人公たちの笑いあり涙ありの大冒険。
被災地から未来に託された希望を表現しています。





町の三方を海に囲まれた七ヶ浜町。
中世のころから、地域には、湊浜、松ヶ浜、菖蒲田浜、花渕浜、吉田浜、代ヶ崎浜、東宮浜という7つの浜辺の集落がありました。
あの日、津波はこれら7つの浜と、要害という海辺の集落を襲いました。
「お家がなくなっちゃった!」
避難場所でもあった松ヶ浜小学校の校舎からは、菖蒲田地区の家々がなぎ倒されていく様が間近に見え、泣き叫ぶ子どもたちもいました。

「NaNa5931」の団員の中にも、家を、親戚や友だちを亡くしてしまった子どもたちがいます。
しかし、彼らは、悲しみを乗り越えて、再び歌い始めたのです。
『ゴーへ Go Ahead』は、震災から8カ月後の11月19日に公開されました。

「『ゴーへ Go Ahead』と『ゴスタン Go Astern』には、震災の記憶を風化させないという願いも込められています」
と話すのは、七ヶ浜国際村の事務局長である高橋勉さん。

高橋勉さん



「震災直後、子どもたちの歌声に励まされたという町民がたくさんいらっしゃいました。子どもたちは町の大使的な存在として、神戸に出掛けて交流を図るなどしています。彼らを呼んでもらえること。そして元気と勇気がもらえたよと言っていただけること。それは、私たちへの支援や応援にもなっています。NaNa5931は七ヶ浜町の宝物でもあります」




チームを指導し、まとめるのは宮城県出身の演出家でミュージカル作家の梶賀千鶴子先生。

梶賀千鶴子先生



劇団四季『ユタと不思議な仲間たち』や劇団わらび座『きらきら風の旅冒険』などの創作ミュージカルを多数手がけてきました。
現在は、舞台プロデューサーでシンガーソングライターの廣瀬純さんとともに「SCSミュージカル研究所(仙台)」を主宰しています。

梶賀さんは、「NaNa5931」の結成以来、ずっとオリジナル作品の原作、演出、振り付けを行い、チームを育ててきました。

「千年前の貞観地震津波、400年前の慶長地震津波・・・。海の町・七ヶ浜にとって津波は想定外などではないのだということを子どもたちにも考えてほしい」
と梶賀さんは言います。
「でも、それは先人たちが散々言ってきたこと。『ゴスタン Go Astern』とは、後退することではなく、過去を見つめて学ぶこと。私たちの命はアンモナイトの昔からずっと繋がってきたもの。先へ行くことも大事。でも忘れないことも同じように大切なのです」

「前作『ゴーへ Go Ahead』は震災直後の傷を癒し、分かってもらいたいという気持ちも込め、だからこそ未来を目指すという決意の物語でした。
そして『ゴスタン Go Astern』は、自分たちは明るい方向へ向かっているんだという希望を子どもたちと一緒に表現したかった作品です」
と廣瀬さん。

『ゴスタン Go Astern』に出演した高校2年生の鎌田恵利加さんは、
「震災を忘れない、支えてくださった多くの人たちに感謝を伝えたい。それと『私たちは元気です』という気持ち伝えたかったし、伝えられたかなと思っています」と話してくれました。

鎌田恵利加さん


鎌田さんは現在、工業高校の土木科に在学中です。
「復興に携わる大人の人たちを見て、この道を選びました。土木は基礎を作ること。私も町の基礎をしっかり作っていける大人になりたい」

「練習は厳しいけれど、歌うことが大好き」
「多くの人の支えがあったことや、命の大切さをずっと伝えていきたい」
「私たちは元気です!そのことも知ってほしい」

上演のあと、キャスト全員がロビーに並んで、歌いながらお客様をお見送りするのも「感謝」。





「七ヶ浜が大好き」と、子どもたちは大きな声で歌います。歌うことで、子どもたちも大人たちも、ふるさとを意識します。
誇れるまちがある。今を未来へつないでいく歌がある。
そして、その歌が、時代を超えてみんなの心に染みて、地域の文化になっていく。

『ゴーへ Go Ahead』と『ゴスタン Go Astern』。
梶賀さんと廣瀬さんは、このふたつの作品を、将来的には防災の啓発にもつなげていきたいと考えています。

「全国から助けていただいた支援や応援が『輸入』だったとしたら、これらの作品は、いわば七ヶ浜からの『輸出』です。この先、七ヶ浜の子どもたちは、与える人、支える人に育ってほしいと願っています」(廣瀬さん)

過去に学び、未来を創る。
そして、地域の美しさと素晴らしさをつないでいく文化が育つ。

太平洋を望む丘の上に、今日も子どもたちの元気な歌が響いています。