塩竈市 塩釜蒲鉾連合商工業協同組合

「 もう一度『かまぼこ 日本一』のまちに!」

宮城・塩竈のかまぼこ業者が一致団結、港町を活気づけています。

鹽竈(しおがま)神社の門前町、仙台藩の外港として発展してきた塩竈市。

かまぼこなど水産練り製品の生産量が日本一の宮城県で、その大半のシェアを誇ったまち。

港の周辺の工場群が津波で被災し、宮城県の生産量は一時全国7位まで後退しましたが、

「塩釜のかまぼこは、どこにも負けない味だ」「おいしさこそ、元気の源」

製造機械の提供など全国からの応援も受けて、再び立ち上がりました。

目指すはもう一度、日本一、そして世界へ。水産のまち、張り切っています。

西暦700年代前半。現在の宮城県中央部に、大和朝廷の東北経営の最前線として陸奥国府・多賀城が置かれました。

そして、現在の塩竈市には、国府津(こうづ)すなわち国府の港が開かれ、陸奥国守護の神として「陸奥一宮・盬竈(しおがま)神社」も創建。歌枕の地として都にも知られるところとなりました。

塩釜港を囲むように広がる塩竈のまち

高台に鎮座する鹽竈神社

ちなみに、昔、この地の浜では、釜の上に藻を積みあげ、藻を伝って流れ落ちる海水を煮詰めて塩を作る「藻塩焼き」が行われていました。そのため盬竈神社には、塩の神様=塩土老翁(しおつちのおじ)も祀られています。

さて、東日本大震災前の塩竈市には3つの「日本一」がありました。

「生マグロの水揚げ量」。

「人口当たりのお寿司屋さんの数」。

そして、かまぼこやちくわなど、いわゆる〝練りもの〟と呼ばれる「水産練り製品の生産量」です。

かまぼこ生産量については市町村単位で全国と比較するデータはありませんが、宮城県は県単位での比較で平成22年まで「生産量日本一」。その大半は塩竈市で作られていました。

「塩釜といえばマグロとお寿司とかまぼこのまち」――。市民は、そういって胸を張ります。

「千賀の浦」と呼ばれる松島湾。塩竈市はその支湾である塩釜湾の奥にあり、港の周囲には多くのかまぼこ工場が立ち並んでいました。

しかし、東日本大震災の大津波は、湾奥のまちを襲い、それら工場や施設・設備に大きなダメージを与えました。

津波の被害を受けた魚市場

現在も続く塩釜港の工事

海の玄関口、マリンゲート塩竈

玄関には津波浸水深を示すプレート

「宮城県のかまぼこ生産量は、震災があった平成23年には全国7位にまで後退しました。平成24年には3位にまで挽回したものの、平成25年は4位です。まだまだがんばりますよ」

そう話すのは、阿部善商店の代表取締役で「塩釜蒲鉾連合商工業協同組合(以下「塩釜蒲連」)」の理事長でもある阿部善久さん。

理事長の阿部善久さん

「水産都市・塩釜の復興は、かまぼこ生産者の元気から。そして、復興するからには、やはり目指すのは日本一です」

東日本大震災が発生したとき、阿部さんの工場では、積み重ねてあったパレット(製品を運ぶ際に使うすのこ状の台)が崩れ落ち、そこへ波高5mの津波が来るという情報が入りました。

「パレットを濡らさないように重ね直す一方で、帰宅できる者は帰りなさい、と社員に告げました。そのうち、敷地内に白い泡のようなものが侵入してきて、だんだん迫ってきました」

工場は周辺よりも少し高い位置にありましたが、それでも冷蔵庫が水に浸かるなどして、操業はストップ。また、塩釜蒲連に加盟する工場の多くが大変な被害を受けたのでした。

「3週間ぐらいは社員も泊まり込んで後片付けなどを行いました。お給料の代わりにかまぼこをあげたり・・・。

震災前、塩釜蒲連には21社が加盟していましたが、現在は23社です。さまざまな助成や補助を受けるには、やはり組合としての一致団結が肝心です。震災後の会議では、借入金のこと、販路の確保と挽回などについて話し合いました」

一方、全国からの支援や応援も続々と寄せられました。

全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会(以下「全蒲連」)からは、義援金のほか、食料品、白長靴、手袋などが届けられました。

また、築地の荷受けさんが東京都に働き掛けてくれて、都からも義援金が届いたほか、静岡や北海道の同業者からは、魚肉を練り上げるときに使う擂潰機(らいかいき)やサイレントカッターといった機械や設備の寄贈もありました。

「工場の再建に1年以上かかった会社もありました。補助金をもらっても、今度は工事をしてくれる人がいない。工場で働く人が足りない。沿岸の市町は、きっとどこも同じような悩みをかかえていると思います」

平成24年からは販路の挽回を目標に掲げ、塩釜蒲連は県の支援も受けて、イベントでの出店なども積極的に行いました。

「でも、イベントは一過性のもの。将来にわたって末永く愛顧される製品を作ってもっと売り上げを伸ばそうと、あらためて一致団結。皆、張り切っています」

なお、今年(平成27年)は、かまぼこが歴史に登場してちょうど900年目に当たります。

全蒲連では農林水産省の後援を受けて、全国の小学生を対象に「100年後にあったらいいな 夢のかまぼこ大募集」というキャンペーンを展開しています。

「塩竈市は、揚げかまぼこの生産量が多いまちです。ちなみに水産練り製品の購入額ランキングでは宮城県(仙台市)が全国トップ。かまぼこは良質なタンパク質を摂取できるほか、みそやしょうゆとともに和食の文化を長く支えてきた食品です。『夢のかまぼこ』を考えながら、家族でかまぼこの話しなどもしてもらえたらいいですね(笑)」

塩竈のかまぼこ、皆さん、お召し上がりください!

日本食は、おいしくて盛りつけも美しく、味わいも多様で健康的。海外でも人気上昇中です。

かまぼこも、板付き、笹かま、ちくわ、さつまあげ、つみれ、はんぺん、なるとまき、だてまき・・・など多種多彩。

もう一度、日本一。そして世界へ――。

かまぼこのまち、一致団結し、大きな挑戦がスタートしています。

<「しおがま」の漢字表記について>

「しおがま」の漢字表記は3通りあります。

地方自治体名は「塩竈市」です。市の所有施設名では「竈」という21画もある漢字を使います。

一方、JRの駅名をはじめ民間の施設や組織は「塩釜」。市内で見かける表記もこれが最も多く、一般的です

「盬竈神社」の場合は「盬竈」です。

塩竈市役所の公式ホームページでは、「竈」の字についての詳しい解説と書き順を紹介しています。

塩竈市ホームページ「竈」の字について