2026年度研究会
データサイエンス教育の認知科学
―認知科学者自身によるDS教育を踏まえて―
2026年度研究会
データサイエンス教育の認知科学
―認知科学者自身によるDS教育を踏まえて―
【趣旨】
現在、データサイエンス(DS)教育に対しては、社会的に高いニーズや期待がある。しかし一方で、その基盤には数学的・統計的概念が含まれるため、文系学生を中心に「苦手意識」を持つ学習者も多く、DS/統計学習に「つまずき」が生じているのも実状である。担当教員は、いかにしてこの苦手意識を払拭し、理解を促すかという課題に対し、様々な試行錯誤を試みている。
ところで認知科学会の会員には、自身が文系学部で統計やDSの授業を担当しているものも多い。言い換えれば、自身が担当するDS・統計教育で起きている現象について、人間の認知・学習プロセスの専門知識から考える機会を持っている。本シンポジウムでは、文系学部でDS・統計の授業を担当する認知科学者が、自身の授業実践で気づいた様々な問題に対して、自身の研究分野から考える。DS・統計授業の特徴に対する学術的分析や、学術的基盤のある教育方法、学習支援、教材開発などについて、フロアとの対話も通して考えたい。本シンポジウムを通して、現実の授業に根差した学術的課題の抽出や、逆に学術的知見に裏打ちされた授業改善への示唆を得ることを目的とする。
【プログラム】(変更される場合があります。)
15:00-15:10 趣旨説明
15:10-15:30 文系大学生におけるデータサイエンス履修の影響:数学が苦手な学生に履修させたら、学ぶ意欲が出るのか? 粟津俊二(実践女子大学)
15:30-16:00 統計やデータサイエンスはなぜ難しく感じるのか:確率理解と情報提示研究からの考察 大貫祐大郎(成城大学)
16:00-16:30 可視化ツール(Tableau)を用いたデータサイエンスの導入教育の実践 和嶋雄一郎(北陸大学)
16:30-17:00 データサイエンス教育でのAI利用 寺尾敦(青山学院大学)
17:00-17:30 ディスカッション 竹内光悦(実践女子大学) 粟津俊二(実践女子大学) 大貫祐太郎(成城大学) 寺尾敦(青山学院大学)
【概要】
15:10-15:30 文系大学生におけるデータサイエンス履修の影響:数学が苦手な学生に履修させたら、学ぶ意欲が出るのか? (粟津俊二:実践女子大学)
現在,全ての大学生がDSの基礎的な知識・スキルを持つことが目指されている。しかし文系大学生には,DS学習への意欲が低い者もいる。発表者は,学習意欲と関連性が深い自己効力感に着目し,大学入学前の高校生,DS履修経験のある大学生,DS科目未履修の大学生の3群で,高校数学の成績自認,DS科目への自己効力感,DS科目への興味の関係を比較した。その結果,数学成績自認とDS科目自己効力感,そして自己効力感とDS学習の興味の間には,共通して正の関係が見られた。しかし大学でのDS履修経験によって,自己効力感と興味の関係は強くなり,一方で高校数学成績の影響は小さくなっていた。これらの結果から,文系学生に対する大学でのDS教育の意義と目標について考えたい。
15:30-16:00 統計やデータサイエンスはなぜ難しく感じるのか:確率理解と情報提示研究からの考察 (大貫祐大郎:成城大学)
統計やDSの理解が難しく感じられる背景には, 数式や計算の難しさだけでなく, 数値情報をどのように読み取り, 解釈するかという問題が関わっている。 先行研究では, 同じ数値情報であっても, 提示の仕方によって, その理解や判断が変わることが示されている。 本発表では, これらの研究を概観し, 確率を含む数値情報の理解がどのような場面でつまずきやすいのかを整理する。 さらに, 統計やDSに関する講義で得られた反応も踏まえながら, 数値情報がどのような表現や文脈で誤解されやすいのかについて考察する。
16:00-16:30 可視化ツール(Tableau)を用いたデータサイエンスの導入教育の実践 (和嶋雄一郎:北陸大学)
本発表では、全学共通の情報リテラシー科目における、可視化ツール(Tableau)を活用したDS導入教育の実践を報告する。Tableauを用いることで、初学者でも容易にデータの可視化や探索が可能となり、文系学生のデータへの関わり方や学習行動に変化が見られた。本発表では、授業実践を通して観察された学生の変化を具体的な事例とともに紹介し、直感的な操作でデータ分析を行える環境が、文系学生のDSにおける学習にどのような影響を与えたのかについて報告する。
16:30-17:00 データサイエンス教育でのAI利用 (寺尾敦:青山学院大学)
DS教育に限らず,多くの大学教員は,授業での課題を学生がAIに丸投げしてしまうことに困ってる。米国大学の法学部のようにAIの使用を禁止する動きがあるが,学生はAIの使用が当然の社会に出ていくのだから,AIを活用した大学教育をデザインすることが本筋だと考える。AIが学生の学習を助けるパートナーとなること,そして理想的には,AIとの協調によって創造的問題解決が行われることを目指したい。本発表では,大学での統計学および関連科目での,(1) AIが即座に正解を返してしまう授業課題での学習評価,(2) 英語論文や英語テキストの学習でAIおよび教員ができること,(3) AIによるプログラミング学習の支援,について実践を報告する。最後に,AIとの協調による創造的問題解決を実現するために,大学教育をどのようにデザインできるか,デザイン原則を議論する。
【アクセス】
建物概要はこちら ※502教室へは、入館後左手のエスカレータまたはエレベーターをご利用下さい。
【参加方法】
人数把握のため、参加を希望される方は、こちらのGoogle Formから事前登録の上、上記の会場におこしください。入館時には、現地の受付にてお名前や所属先の確認が必須となります。
https://forms.gle/yUXCMg2q1SNjH9zP7
【問い合わせ先】
粟津俊二(実践女子大学人間社会学部) awazu-shunji@jissen.ac.jp
【共催】
認知科学会 学習と対話研究分科会
実践女子大学プロジェクト研究所 「文系女子×DS教育」