3.4.102 奈良時代花見川河口拠点集落の機能検討

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これまでのブログ記事作成で、自分の中に形成されてきた奈良時代花見川河口拠点集落の機能イメージをまとめておきます。

1 東海道駅路管理機能

・浮島駅家運営集団の統治

・駅家施設建設、管理、運営

・馬の飼養

・河曲駅及び井上駅との間の道路施設管理、輸送通信業務運営

2 東海道水運支路管理機能

・花見川河口津運営集団の統治

・花見川河口津施設建設、管理、運営

・船修繕管理

・東京湾沿岸津との間における水運路確保、輸送通信業務運営

・杵隈水駅(船着場)建設、管理、運営

・杵隈水駅間との間における水運路確保、輸送通信業務運営

3 軍需産業としての浮島牛牧経営機能

・牛牧運営技術集団の統治

・牛牧施設の建設、管理

・牛の飼養

・陸奥国等への出荷

4 軍事機能

・軍事兵站組織の統治

・武器、食料等の備蓄

・馬、牛の臨機使用のための飼養

・武器の補修(鍛冶機能)

・通過将兵の宿泊、物資補給、輸送支援

5 外交機能

・玄蕃所要員の統治

・玄蕃所(俘囚収容所)の管理、運営

・俘囚の収容監視、検見、異なる目的地への輸送手配

6 漁業生産機能

・漁労集団の統治

・新鮮魚介類の必要量収穫

・魚介類輸送集団の統治

・平戸川筋拠点官人への魚介類臨機輸送、供給

7 農業生産機能

・水田開発集団の統治

・奈良熊-実籾田地域の開拓、米生産、国家への供出

・雑穀栽培、麻栽培、機織り集団の統治

・雑穀生産、麻生産-機織物生産、国家への供出

8 生業集団への鉄製品支給機能

・鍛冶集団の統治

・鍛冶機能による刀子、鍬、鉈、鎌、釣針、銛、釘等の生産、各生業集団に対する供給、リサイクル体制構築

奈良時代花見川河口拠点集落に関連する地物

【感想】

古墳時代には上ノ台遺跡集落がいわば首都であったミニ国家みたいな統治体制があったものと考えています。

ですから、その統治体制のリーダーは曲がりなりにも統治地域(花見川・浜田川流域)の発展を考えていたものと想定します。

しかし、地域開発という視点からの計画的発想力は虚弱であったと考えます。

一方、奈良時代の律令国家体制になると、蝦夷戦争の成功的遂行という目的の下に、計画的に戦略的機能を下総国の各地域に張り付けていくというゾーニングが行われ、そのゾーニング趣旨に基づいて各地域の具体的開発がおこなわれたという印象を受けます。

奈良時代の花見川・浜田川流域は国家の直轄領と同じであったと思います。花見川・浜田川流域だけでなく下総国全体が国家の直轄領と同じであったのではないかと考えます。(鉸帯が下総国で沢山出土することはこうした事情と対応するのだと思います。)

奈良時代の花見川河口拠点集落のリーダー(官僚)は国家(下総国)が計画するプロジェクトを実施することによって自らの役割を果たそうとして、邁進していたと考えます。

計画道路(東海道)、計画水運路(東海道水運支路)、計画港湾(花見川河口津)、計画平坦基地(花見川河口拠点そのもの)、計画的漁業活動(ハマグリ収穫等)、計画水田開拓(奈良熊-実籾田地域)などのプロジェクトです。

しかし、花見川・浜田川流域のまとまりある地域としての円満な発展を図る、あるいは流域住民の福祉をいかに向上させるかというような視点はほとんど無いか、虚弱であったと思います。

律令国家は全ては蝦夷戦争の成功的遂行のために、下総国で、最適な場所で最も効率的な開発プロジェクトの実施に総力をあげていたのだと思います。