3.4.039 古代交通技術「船越」の進化形 古代ギリシャの例
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水運路を短区間陸路でつなげる古代交通技術をこのブログでは「船越」と呼んでいます。
船越のイメージ
船越では船から荷物や人を全部降ろし、陸送し(人力運搬)していたと考えています。
古代ギリシャ(ローマ帝国時代)では船越の進化形が見られますので紹介します。
ギリシャ周遊する人は必ず通過するポイントとしてコリント運河があります。
現在のコリント運河
コリント運河のある場所はコリント地峡といわれ、イオニア海とエーゲ海を結ぶ狭い地峡となっていて、船越として利用されてきています。
コリント地峡
シーザーはじめ古代ローマ帝国ではここに運河を計画し、ネロ皇帝の時代に実際に運河工事を始めました。
運河工事は失敗したのですが、その代わり船越に石敷軌道を敷設して船自体の陸送を行いました。
次の図書の解説にコリント地峡船越についての記述があります。
コリント地峡船越についての記述がある図書
戦後古代石敷軌道が発掘されています。
発掘された古代の船陸送用石敷軌道
台車と奴隷を利用した船陸送の想像図
台車と奴隷を利用した船陸送の想像図
コリント地峡船越の実例は古代船越の最大進化形であると考えます。
古代日本の船越で船陸送の物証は見つかっていないので、古代ギリシャみたいな船越進化形があったかどうかはわかりませんが、奈良時代の東国では車輪が普及していなかったようですので、おそらく船陸送はなかったと考えています。
●余分な感想
船越という交通施設が古代に存在し、その進化形は海外では船陸送技術にまで発展し、古代でその技術は陳腐化したのです。
造船技術、航海技術、土木技術等の発展のなかで、船越は不要となりました。
その技術陳腐化になにか歴史に関する感慨を持ちます。
一方、船越と全く逆の交通技術である陸送用列車の航送技術である青函連絡船が、自分の人生の目の前で陳腐化し、青函トンネルに新幹線が走る時代を迎えています。交通技術が陳腐化するという歴史の流れにさらに強い感慨を憶えます。