2.4.08 下総台地の広域的地殻変動の学習 その2

シリーズ 花見川地峡成立の自然史 -仮説的検討-

第4部 下総台地形成に遡る その8

1 活褶曲の分布

花見川流域を真ん中に含む関東北東部の活曲動と活褶曲を次に示します。

関東北東部の活曲動と活褶曲

貝塚爽平・松田磐余編(1982):首都圏の活構造・地形区分と関東地震の被害分布図解説 による

この地図に表現されている範囲には活曲動と活褶曲はありますが、活断層はありません。

活褶曲は出典資料では関東地方で全部で14が記載されていますが、上図に示す関東北東部に11記載されています。

関東北東部は活褶曲が集中して観察できる特異な場所であると言えます。

2 活褶曲の変動速度

出典資料には活褶曲の諸元および傾動量や平均変動速度が掲載されています。

活褶曲の傾動量や平均変動速度

貝塚爽平・松田磐余編(1982):首都圏の活構造・地形区分と関東地震の被害分布図解説 による

変動基準面のS面は下総上位面、M1面は下総下位面と同じ。

この表は次のように見ます。

例えば、6習志野隆起帯についてみると、傾動量欄に1~2.5とあります。

これは水平方向1000mに付き垂直方向1m~2.5mの変動があることを示しています。

年代欄には130とありますが、これは変動の基準とした地形面(S面=下総上位面)が13万年前に形成されたことを示しています。

平均変動速度欄には0.01~0.02とありますが、これは1000年間という時間単位で見た時、平均値として、水平方向1000mに付き垂直方向1㎝~2㎝変動することを示しています。

この計測は活褶曲軸に垂直方向の断面で行っています。

11の活褶曲の平均変動速度の桁は7柏沈降帯と8守谷-取手隆起帯を除いて同じで、7と8はそれより1桁小さくなります。

この表は活褶曲の運動が、基準となる地形面が形成されて以降の万年単位という時間軸でみると、一定スピードで平均的に生じていると仮定して作成されています。

3 活褶曲抽出に関する感想

出典資料(1982年)における活褶曲の設定が現在の地形学の設定としてそのまま活きています。

この活褶曲の設定について、それが高度な(高次な)思考によるものであると感じます。

具体的地形を見ると、より小規模の沈降軸や隆起軸があるのですが、それらの細かい情報は捨象して出典資料に記載された活褶曲を抽出するプロセスの背景には膨大多様な情報を高度に処理した背景があると直感しました。

4 活褶曲に関する疑問

さて、活褶曲6~8は一つのグループのように捉えることができるように分布図からは見えます。

一方これらの活褶曲と走向が全く異なる9~15の活褶曲があります。

活褶曲6~8と活褶曲9~15との関係(より直接的には活褶曲6と活褶曲6の関係)について強く興味をもっているのですが、いろいろな専門図書を見ましたが情報を得られませんでした。

なぜ、活褶曲6習志野隆起帯の走向がNW-SEで、活褶曲9八街隆起帯の走向がNNE-SSWであり、角度を持ってぶつかる関係(接する関係)にあるのか。

なぜ、活褶曲6の台地と活褶曲9の台地の標高が漸移的ではなく、段差的に変化するのか。

これらの疑問は今回の学習では解けませんでした。

以前、根拠のない空想を次の記事に書いたことがあるのですが、いつか空想ではなく、専門知識と関わりを持たせて上記疑問の解答を書ければうれしいと思っています。

2013.11.12記事「2つのプレート運動と活褶曲地形との関係

2014.02.05記事「気になる円弧状地形模様」 など