旦那をつまみ食い

旦那をつまみ食い

by 藤葉

岬太郎さん目線

注!!:藤葉の心は永遠に小次健(時々源健)ですが、本SSには"小次岬"的描写が

でてきます。カップリングに嫌悪感を覚えられる方は閲覧をお控えください。

加えて18禁場面もありますので、ご注意を。

今更の補足ですが、本SSシリーズの年齢設定は20歳くらいとなっています。

原作ではありえない設定には目をつぶっていただければ、ありがたいです。

なにしろC翼はン十年ぶりの出戻りなもので。

明日からフランス合宿が始まる。

僕にとって、懐かしい面々と顔を合わせるのは楽しみでもあり、

妙な精神的不安定を呼び起こされるイベントでもある。

自業自得だけど、絶対に報われない片思いを10年もするなんて、

ホント精神衛生上よくないよね。

今朝からずっとお腹の奥がじりじりと燃えてるような感覚が続いている。

彼の前では、いつもの「岬くん」で笑顔を見せなきゃならないのに。

こんな状態でちゃんと笑える自信ないよ。

今日の午後は東邦のメンバーと街を回る約束だけど、時間はまだあるし、

ピエールでも呼んで、ちょっとガス抜きしようかな。

そう思って受話器を手に取った時、チャイムが鳴った。

「小次郎!?」

そこに立っていたのは日向小次郎その人だった。

秋に入ったっていうのに相変わらず日本人離れして浅黒いその顔は、しばらく

見ないうちに、ちょっと驚くほど大人っぽくなった。

空港でも若島津くんと二人並んで立った姿は、本当にエキゾチックで目立って

たっけ。

「よう」

「約束は午後からだよね」

昨日の晩、到着する全日本のメンバーを迎えるため空港に行ったんだ。

彼の顔も一目見たかったしね。

皆と旧交を温めた後、話の流れで旧東邦のメンバーと街に繰り出す約束をした。

如才ない反町くんにうまく話を持っていかれて、彼はちょっと寂しそうな顔してた。

彼も、自由時間を僕と過ごしたいなんて、ちょっとは思ってくれてたのかな。

「ちょっと時間が空いたんでな。顔見に来た」

僕が問いかけるように眉を上げると。

「お前昨夜、妙な顔してたから」

「み、妙な顔って…」

この単細胞男、本能だけでずばり痛いところついてくる。いつもやりたい放題で

肝心なところは全部若島津くんに任せっぱなしみたいに見えるけど、こういう所

が、生まれながらのキャプテンと言われる所以なのかもね。

でも僕が妙な顔してたからって、こうしてふらっと戸口に現れるなんて、相変わらず

フットワークが軽いよな。いまだに突然姿をくらまして、若島津くんに心配かけたり

してるんだろうか。

「とにかく入って、…コーヒーでいい?」

「ああ」

小次郎はぶらっと室内を見渡しながら、促されるまでもなく窓際のソファへ歩いて

行き、長い足を投げ出すようにして腰を下ろした。

硬くひきしまったその身体は僕の記憶の中にあるよりも、一回りも二回りも大きく

なったようだ。身長も大分伸びたみたい。

「天井が高いんだな」

「もとは父さんがアトリエに使ってた部屋なんだ。僕も二十歳になって晴れて一人

暮らしをはじめるにあたって、ここを譲ってくれたってわけ。父さんは今は田舎の方

にコテージを持って仕事してるよ」

「へえ」

「はい、コーヒー」

「おう」

「ミルクと砂糖は?」

「このままでいい」

僕も自分のカップを手に小次郎の隣に腰をおろした。

シンプルなシャツに洗いざらしのジーンズという格好だけど、齢二十歳にして、

小次郎ってば男臭さムンムンって感じだ。

堅苦しいのが嫌いなんだろうけど、シャツのボタンを二つ外して、肘の手前まで

そでを捲り上げている。襟元から覗く胸板も、二の腕も鋼のように硬そうだ。

ぼくみたいな童顔は、こちらの女性にはあまり受けがよくないんだけど。

小次郎なんか、すっごくもてるだろう。

この腕で、誰かを愛したりしてるのかな…。

一瞬真っ白な肌と浅黒い肌のコントラストが目の前にバンッと浮かんで、僕は

思わず息を呑んだ。今日の僕は本当にどうかしている。

「お前、本当に様子がおかしいぞ。熱でもあんのか?」

小次郎が身を乗り出して僕の顔を覗き込んできて、僕はあわてて首を振った。

でも小次郎のこの自然体さっていうか、余裕っていうか…迷いがないって

いうのかな、地に足が着いてる感じがするのは、なんでなんだろう。

昔から一家の大黒柱的な気負いみたいのは感じたけど、最近はいい風に肩の

力が抜けたっていうか、…そこで僕の頭の中に脈絡もなく若島津くんの顔が

浮かんだ。

昔から冗談交じりに「二人は夫婦同然」だなんてからかわれていたものだけど。

どう、なんだろう…。

「小次郎ってさ、恋人いるの?」

「ああ、まあな」

突然何を言い出すのか、と僕の顔を見つめたものの、小次郎はこだわり無くそう答えた。

「付き合って長い?」

「まあ、腐れ縁っていうか、そうだな」

「きっと、すっごい美人で、ナイスバディでしょ」

「むっ、い、言いようによっては、そうか」

「髪が長くて、背が高くて、小次郎のことをいつも一番に考えてくれて…」

子供の頃からの親友と、そうなる、ってどうなんだろう。

あらゆる悩みも喜びも一緒に共有して成長してきた相手と、身も心も一つになるって、

どんな気持ちなんだろう。こんなに相手を思っている気持ちを相手も同じように返して

くれるって、どんなに幸せなんだろう。

「おい、岬、どうしたんだ」

小次郎は、心ここにあらずといった様子の僕の顔を純粋に心配そうな顔で

覗きこんできた。

僕は目の前の小次郎が妙に憎らしくなった。

「小次郎、浮気したことある?」

僕は小次郎の手からカップを奪い取って、テーブルに置き、ソファに座る小次郎に

跨った。そのまま小次郎のシャツの襟をぎゅっと掴んで、小次郎に深く口づけた。

僕のお尻の下で小次郎のモノが瞬時に固くなったのを感じた。

男の生理って、ほんと単純なんだ。

小次郎のソレにお尻を擦り付けるようにしながら、尚小次郎の熱い口腔をむさぼった。

小次郎の力強い両手は僕の腰をがっしり掴んだけど、僕を押しのけはしなかった。

* * *

「さ、小次郎!ぼうっとしてないで!きりきりシャワーを浴びて、支度しないと、

午後の待ち合わせに間に合わないんじゃないの?」

先にさっとシャワーを浴びた僕は、バスローブをはおり、タオルで頭を拭きながら、

依然ソファで脱力している小次郎にはっぱをかけた。

あー!さっぱりした!!お尻はちょっとヒリヒリするけど、これで、「岬くん」の

可愛い、さわやかな笑顔が取り戻せたみたいだ。

「なあにをしやがるんだ、お前って奴は…」

小次郎は一生の不覚、とばかりに頭を掻き毟り、それでも立ち上がってシャワーに

向かった。全裸の小次郎はやっぱりすごい身体をしてるけど、もう冷静に鑑賞できる。

「何って、お昼の軽い運動だろ」

僕はバスルームの戸口から、シャワーストールに立った小次郎に満面の笑みを

見せた。

「…、なんだか知らねえが、…悩み事は吹っ切れたみたいだな」

小次郎は僕の笑顔に向かって、脱力しきった顔で一つため息をついた。

「うん、お蔭様で。あー、小次郎!」

「なんだ?」

「頭まで濡らしちゃって」

「ああ、つい癖で」

「ちゃんとドライヤーかけてね」

「いいよ。こんなもんすぐ乾くだろ、今日は天気もいいしな」

のんきにそういって、ガシャガシャシャンプーなんかしてる。

小次郎って、天然っていうか、まじで浮気なんかできないタイプなんだな。

このまんま若島津くんのところに帰って、大変なことになっても知らないぞ。

(SSその4は、「つまみ喰われた旦那」日向小次郎さん目線の予定です)

は、初めて書きました。”襲い受け”って奴を。

Hシーンもちゃんと書こうかともおもいましたが、お昼のQuickie ということで

大したことはできないだろう、ということで、やめておきました。

岬をこんな形で使ってしまったのって、結構ヒンシュクなのでしょうか。

若島津が一番、キレる浮気相手、と言ったら、やっぱ岬だよな、と思ったら

妄想が止まらなくなってしまった藤なのです。

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