人妻ウォッチング
人妻(若島津)ウォッチング
by 藤葉
新:「皆さん、人妻(若島津)ウォッチングの時間です。本日は、とある昼下がりのパリのオープンカフェから、
実況は新田、解説には人妻(若島津)評論家の反町さんでお送りします。反町さん、よろしくお願いしま
す」
反:「よろしくお願いします」
新:「早速ですが、今日は若島津さん、皆と別れて単独行動しているんですね」
反:「試合、練習、合宿など、ことサッカーに関しては、まったくそんな様子は見せませんが、ああ見えて、
あいつ団体行動苦手なんですよ」
新:「意外ですね。しかし一人でいる姿も絵になります。手にしているのは文庫本でしょうか?
テーブル付のギャルソンを始め、カフェの客や道行く人々からもそれとない熱い視線を集めていますね」
反:「不思議と、自分ではまったく自覚がないようなんですが、どうにもこうにも美人ですからね」
新:「おっ、早速動きがありました。これはまさにロマンスグレーとでもいうのでしょうか、年の頃は六十代、
若い頃は随分女を泣かせたのではと思われる男性が、若島津さんに話しかけました。若島津さんは
言葉がわからない、というように小さく首を振っていますが」
反:「この男性、隣に座りますよ」
新:「反町さんの言うとおり、座りました!ああっと、座ると同時にギャルソンを手招きして、どうやらコーヒーを
二つ頼んだようです。コーヒーを待つ間も男性はしきりに何事か若島津さんに話しかけています。
若島津さんも言葉がわからないなりになんとかコミュニケーションを図ろうとしているようですね。
反町さん、若島津さんは、自身が美人であることに自覚がない、これはどういうことなんでしょう?」
反:「本人曰く、小さい頃はよく女の子に間違われたそうです。その頃、今の旦那、日向小次郎と出会い、
案の定、当時は彼にも随分からかわれたようですよ」
新:「それは、所謂、好きな子をいじめずにはいられないという」
反:「まさにそれ、ですよね。日向さんにそれを言ってもまず認めないでしょうが。
で、若島津も、小学校時代は本人なりに気を張って、男らしく見せようという気概を持っていたよう
なんですが、まあ、幸か不幸か、その後日向さんと親友関係になった結果、他の人間からはまったく
といっていいほど からかわれなくなってしまった訳です。そんなことが日向さんの耳にでも入ったら、
間違いなく血を見ることになりますから。
あの人は一旦自分の懐に入れたものに関しては、とことん守り抜く性質を持っていますからね」
新:「なるほど」
反:「その後は、中高一貫の全寮制男子校での6年間の生活です。校外にはファンも沢山いて、
試合の際には大分騒がれていたりもしましたが、校内や寮内でうかつなことを言ったり、したり
する人間は皆無でした。
その頃には、もしそんなことが日向さんの耳に入ったら、血を見るどころか、命が危ない、と
まことしやかに言われていましたから」
新:「えっ、あの人妻ウォッチングなどと称しておいて、いまさらなんですが。
やっぱり、日向さんと若島津さん、ホンモノなんですか?」
反:「それについては、今日のところは言明しないでおきます。
とにかくそんなわけで、若島津は自分がどう見えるかを意識することのないまま、
のびのびと学生時代を過ごすことになったわけです。
おかげで同級生であり、チームメイトの私などからすると、夏場は地獄を見ることもありました」
新:「それはまた、どういうわけで」
反:「育ちの影響もあるのか、日向さんはエアコンが嫌いで、東邦には全館エアコン設備が
完備されているにもかかわらず、自分のいるところは極力エアコンをつけないんです」
新:「ほう」
反:「若島津も根っからの寒がり+冷え性で、暑いという感覚には非常に鷹揚なところがありまして、
よく、夏は思いっきり汗かいたほうが気持ちいい、などといって、エアコンなしの生活に文句もいわず。
すると寮内では、毎年衝撃的な姿を目撃せざるを得なくなりました」
新:(ごくっと喉を鳴らして)「そ、それは…」
反:「ポニーテール、タンクトップ、短パン、です」
新田、ブフッという物音とともに鼻を押さえて蹲る。少しおいて、鼻にティッシュを詰め復活。
反:「あいつ、屋外に出るときは常に長袖、長ズボンでしょう?日に焼けると火ぶくれになるということで
夏場は実家のお姉さんに持たされたUV乳液塗ったりしてましたから、本当に色が白いんです。
真っ白なうなじに後れ毛、ゆるめのタンクトップの胸元にのぞく色の淡い乳首、真っ白ななま足、ですよ」
新:「ご、拷問じゃないですか」
反:「東邦の夏場の水シャワー率、高かったですね。おかげで私などは、少々小遣い稼ぎも
させてもらいましたが」
新:「えっ!!…隠し撮り?ネガ残ってます?後でゆっくり話を聞かせてください。
お、少々脱線している間に動きがありました。コーヒーを飲み終わったロマンスグレイ、席を立ちそうです。
ああ~!!!」
反:「キスですね!」
新:「頬、とはいえ、かなり唇に近い!ニアミス!これはニアミスです!
あー、若島津さん、ちょっと頬を赤らめています!」
反:「赤くなった頬をそっと撫でましたね!やはりこの男性、かなりのツワモノです」
新:「しかし赤くなった程度で、若島津さん、あまり動転、というか憤慨してませんが」
反:「海外遠征のたびに、似たようなことが頻発して、あいつにはあれは挨拶だ、と言い聞かせて
あるんですが、そろそろ真実を告げないと、その内拉致されかねないですかね」
新:「お、そうこうしているうちに、若島津さん、再び読書に戻ったようです。
ん?なんか巨大な後姿が若島津さんから少し離れたところで、仁王立ちしています」
反:「若林、ですね。相変わらず、海外でも全く見劣りしない、立派な体格です」
新:「ゴツイ、ですね。お、若島津さん、熊のような存在感に気付いたようです。
顔を上げました。ああっ、笑顔ですか?ちらっと笑顔を見せたようですが」
反:「対戦モードに入っていない時は、わりとぽーっとしてるんです。
しかし、あの顔は、ちょっとうかつだったかもしれませんね」
新:「若林さん、まっしぐらに若島津さんに近づいて、すぐ隣のイスを引きました。
縄張りを主張するかのように周囲を威嚇しています。まさに熊です!
そのままゆっくりと腰を下ろしましたね。反町さん、そのままなにやら会話が始まったようですが」
反:「 新田さん、ここからが人妻ウォッチングの本番ですよ。二人の様子どうですか?
まさに人妻と不倫相手の密会と言ってもおかしくない雰囲気がありませんか?」
新:「えっ!?そういわれてみると…悔しいけど、雰囲気ありますね。決して小柄ではない、若島津さんが
妙に華奢にみえますし、若林さんの胸の厚みが半端じゃないんだな。
それに、なんですかあの二の腕の太さは」
反:「おうおう、若林、完全に術中にはまっています。あんなふうに真正面から顔を覗き込んでは
危険です。ああして無防備に見つめられると、まじで吸い込まれそうになるんですよ。
しかしさすがに若林、持ちこたえた」
新:「反町さん、二人の距離、近くないですか?若島津さん、居心地悪くないんですかね、あんなに大きな
人にあんなに接近されて」
反:「いいところに気付きましたね。若島津の対人距離感を狂わせたのも、日向さんなんですよ」
新:「対人距離感、ですか?」
反:「自分と相手との間に無意識に設ける距離、とでもいいますか」
新:「それを日向さんが狂わせた、と?」
反:「日向さんの導火線の短さといったら、まさに右にでるものはいませんから。
いざ日向さんがキレた!となった時、瞬時に止めに入るためには、日向さんのごく近くにいて、
常に日向さんと一緒に状況を見極める必要があるわけです」
新:「それでか、本当にいつも近くにいるもんな、うらやましいと思ってたんだ俺、…あ、いえ、
今まで和やかに話していた二人でしたが、なんでしょう、若島津さんの表情が…」
反:「奥さん、僕と一緒に来てください。
でも、私には夫が。
あんなろくでなしのことは忘れなさい。あなたには幸せになる権利がある、
僕はその権利を無理やりにでも行使させてもらいますよ。
若林さんたら。
奥さん、まじめに考えてください。
やめてください、じきに主人が帰ってきます」
新:「反町さ~ん、そのアテレコやめてくださいよ!わ、やばっ、反町さん!あれ見てください」
反:「日向さん!」
この後、どうなる?
人妻との昼下がり : 若林源三さん目線へ続く
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