by 藤よう
反町目線
注:もともと熊好きの私としては、若かりし頃にも、興味の対象といえば、柔道や相撲…といった方面でして…、正直、サッカーに興味を持ったことはなく、ワールドカップなどに備えて、全日本の選手たちがどんな練習や合宿をやっているのか、まったく知りません。
パリのカフェで、若島津の行動を反町達が観察して、勝手に好き勝手な実況をつけたら面白かろう、というだけの観点で、遠~い昔のうろ覚えなFanfic設定を引っ張り出して書き始めた、このシリーズなので、実際のサッカー選手たちが行う合宿の事実や現実と大きくかけ離れているのはもちろん、キャプ翼の(私が全く読んだことのない)大人編の設定(登場人物たちの体格等も含め…)とも全く乖離しているであろう点に、あらかじめお詫びしておきます。あしからず。
『こんなのありえない!!!』って、い、石を投げないでくださいね…。
以下、『妻の朝帰り』の続きです。
*****
一緒にエレベーターに乗り込んだ若島津の顔を、俺は無遠慮に観察した。
なんだ?
気だるげな、いや物憂げ、かな?ある意味、儚げとも言える、こんな表情は見たことがない。
さっき、並んでロビーへと入ってきた、背の高い二人の姿がふとフラッシュバックされた。
まだ学生気分の抜けない(実際、学生もまだ沢山いる)俺たちの集団とは何の関わりもない、大人のカップルにしか見えなかった。
それが、若島津と若林の二人だと気づいて、なぜだか心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。
あの二人の距離感。
若島津の頬にくっつきそうに頭を屈めて、何かを話しかけた若林から、少し俯きがちながらも、身を反らせたり、身体を離すことなく、ごく自然に、大きな体に寄り添うように立ったまま、言葉を返していた若島津。
身内だと認めた存在以外、ちょっとやそっとじゃ、他人に心を開くことがない、ある意味、鉄壁の人見知りともいえる若島津が?
しかも相手は、小学校以来の最強最大のライバル若林だぞ?
まさか、まさかだよな?
まさか、と呟きつつ、自分が何を想像しているのかもはっきりしない。
想像が頭の中で具体的に画を結ぼうとするのを頭のどこかが拒否してる。
気づいた時には、俺は走り出して、若島津の首にしがみついていた。
ただ若島津を若林という大きな存在から引き離したかった。
*****
エレベーターを降りて、若島津と並んで歩きだした途端、まさに俺たちの部屋のドアに寄りかかって腕を組んでいる、日向さんが目に入った。
並んで歩いていた若島津のスピードがガクンと落ちたのに気付きつつも、俺は足を速めて、日向さんに近寄った。
「さ、早く荷物持って、ロビーに集合しないと、合宿所行きのバスに置いていかれちゃいますよ。ほらっ、日向さん!ちょっとどいて!」
俺はことさら声を張り上げて、日向さんの体をわずかに押しのけ、カードキーをドアのスロットに差し込んだ。
その時、俺をドアに押し付けるようにして身を乗り出した日向さんが、近づいてきた若島津のシャツの襟首を掴み、ドアの脇の壁に、若島津の身体ごと、どんっと叩き付けた。
俺は驚愕して、目の前の鋼のような日向さんの腕に、反射的にしがみついた。
まさに走馬灯のように、あ、俺、絶対弾き飛ばされる…、もんどりうって転がった着地点で、俺は絶対にうまく受け身を取れない!と思った瞬間。
若島津の手が、日向さんの手首をつかんで、動きを封じた。
この夫婦、本気を出したら、絶対奥さんの方が強いんだった。
「反町、先にロビーに戻っててくれ」
若島津が真っ直ぐに日向さんを見つめたまま、そう言った。
その顔をじっと見上げて、声をなくしている俺に視線を向けて、若島津がもう一度言った。
「先にロビーに戻ってくれ。大丈夫だから」
若島津のシャツを掴む日向さんの手が少し緩んだ。
喉から飛び出しそうに暴れまくっている心臓のおかげで、少し耳鳴りがしている。
「反町」
俺は必死でしがみついていた日向さんの腕から、ゆっくり手を放した。
しゃくり上げるような息を一つついて、若島津に頷いてみせた。
若島津が俺の髪をくしゃっと撫でて、日向さんの身体の圧力で押し付けられていたドアの前から俺の身体を押しやった。
俺は、俺にちらっと視線を寄越した日向さんを睨み付けて、ゆっくりと歩き出した。
「反町、俺たち後から合宿所に直行するって伝えろ」
日向さんの低い声に、はっと振り返り、二人がドアの向こうに消えるのを目にして、ドアに飛びついて叩きつけたい気持ちを抑え、俺は丁度目の前でドアが開いたエレベーターに乗り込んだ。
あの二人、どうなるにしたって、二人で答えを出すしかないんだ。
*****
この後、離婚協議ですか?
多分、日向さん編に続く。
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