~奥さん!俺…、俺、若道流空手、入門するかもっス~

隣りの奥さんはホント美人っす

By 藤よう

新田瞬さん目線

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ってことで、新田君目線なのですが、キャプ翼歴だけは、日本で(ってことは世界でも)ほとんど負けないくらいの長さを誇るものの、生まれついての半端&ものぐさ人間で、大好きなことでも究極まで突き詰められない性質のため、ちょこっと齧ってきたcannon(オフィシャル)知識も、とんでもなく的外れな活用をしてしまっている可能性もございます。

毎度申し訳ございませんが、何卒いつも通り生暖かく、且、細目にした瞳で、心に余裕をもって下記閲覧いただけましたら助かります。

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俺の若島津さんに対する印象?

って、そりゃあ、別のチームだけど凄い先輩、だよな。

なんていうか、もう…、ちょっと近寄りがたいってくらいの。

特に世界的に見たらさ、縦横でかくて、ごつい選手が腐るほどいるイメージのGKってポジションで、あの細身で、得意の空手技を生かして、とんでもなくスピード感があってワクワクする、派手で華麗なセーブを見せつけてくれる人。

敵チームとして戦う場合、俺たちフォワードからしたら、本当に厄介な人だけど、若島津さんのプレイは、例え敵チームとして対戦していたとしても、心の底から興奮させられるんだ。それだけは間違いない。

なんとしても、この人の守りを突破して、ゴールを奪ってやりたいっ!って、こう言うと…、ちょっと変な表現に聞こえるかもしれないけど、どうしようもなくFW魂が猛ってくるっていうかさ。

これって多分、若島津さんと対戦したことのある、一流と言われるフォワード(俺も含めてだぞ!)なら、誰でもが感じることなんだと思う。

若島津さんが凄いからこそ、この人から、力ずくでゴールをもぎ取って、自分の強さを見せつけてやりたくなるんだ。

これってまじで、半端なFWには、わからない感情だと思うんだよな。

この前、反町さんにちょこっとそんな話をしたら、『あいつは、強い男の嗜虐心を煽るんだよ。それで、しなくてもいいケガも随分してきてる』 なんて言ってた。

嗜虐心…て、なんかすごい言葉だけど、そう言われてみると、なんとなく分かる。

力づくで押さえつけて、痛めつけたい、ってことだろ?

これも若島津さんに面と向かって言ったら、まじでぶん殴られそうだけど、ゴールを背にたった一人で、敵に相対する若島津さんは、物凄く綺麗なんだ。手負いの野獣みたいな凄みがあるっていうか。

例えば野生の黒豹とかさ、1対1で対峙したらそれこそ命の危険もある存在だけど、その姿を実際に目の前にしたら、危険とかそっちのけで、その美しさに絶対に魅入られちゃうと思うんだよな。

そんな存在に、仮に自分がボスだって思い知らせて、自分にだけ懐かせることができたらって考えたら…、ゾクゾクしないか?

試合続行絶対無理!くらいの大怪我を負っているにも関わらず、なお闘志を失わずに、乱れた長い黒髪の間から、あの綺麗な瞳をギラギラさせて睨みつけられたら…。

これこそ誰っにも言えないけど、股間に、ズキッと来たことも…。

いやっ、ホント、そんくらい、やばいんだって!!あの人!

うん、GKって意味では同じ最高ランクの若林さんを前にしては、こういう気持ちにはならない。絶対に。

…若島津さんだけだ。

その上、小学生時代はそもそも日向さんとツートップを組んでたって話だしさ。

もし明和に、そして東邦に、若島津さんに匹敵するくらいのGKがいて、若島津さんが攻撃に専念できる環境だったとしたら…。

同じフォワードとして、対等に戦えるか?代表チームで俺は今のポジションを死守できるか?

これを認めるのは、超くやしいけど!

正直危なかったかもしれない、と思ったりもする。

全日本メンバーの中でもFWとしてトップクラスにいると自負している俺が、そう思わざるを得ないほどに、若島津さんは攻撃力も飛びぬけている。

俺もここ数年は、代表戦なんかで、日向さんとツートップを組ませてもらうことも多くなった。

日向さんも! それこそ掛け値なしに凄い人だ。

同じチームでフォワードとして、近くで一緒に戦うようになってみて、改めてその凄さを実感してる。

人間離れしたシュートの威力ももちろんだけど、あの人のゴールを狙う、熱さというか、執念は桁違いだ。

その一方でただ荒っぽくて直情型ってだけじゃない、カリスマ性のある統率力とか、理屈抜きでチームメイトに慕われ尊敬される人間の大きさは、味方として戦うようになって初めて見えてきたものだ。

そして日向さんの近くで、日向さんとほぼ同じ目線で、試合に参加するようになって、わかったこともある。

さっき野生の黒豹を飼いならせたら、なんて言ったけど、あの綺麗で危険な存在が、あの若島津さんが、この世界中で唯一、その全身全霊を無条件に捧げていいと認めているのは、この日向さんだけだってこと。

あの二人の関係は…。

幼馴染でずっと近くで一緒に育ってきたからってことだけじゃない。

噂されているように、恋人関係だったとしたって、それだけで語りつくせるもんじゃない。

同じ時代に生まれて、出会うべくして出会って、運命によって結び合わされた唯一無二の二人なんだ。

なのに、なのにっ、それがどんだけ凄くてうらやましいことかって、わかってんのか?日向さん!

俺は、やるせない思いと鬱憤をどこかにぶつけずにはいられなくて、丁度近くを通りかかった反町さんの二の腕あたりに、反射的にパンチを繰り出していた。

かなりの手加減なしで。

「痛っ、なんだよ!」

二の腕をさすりながら俺を睨み付ける反町さんを俺も無言で睨み返した。

合宿も3日を消化し、休養日となる明日を前にした今日。

ピエールや、ナポレオンなんていう第一線の選手たちが参加した、ほぼフランス代表のメンバーが勢ぞろいしたともいえるチームとの練習試合が行われた。

岬さんの橋渡しもあったらしいものの、たかが練習試合にここまでの面子がそろったのは、実は国際ジュニアユースの時の若島津さんのPK戦での戦いぶりがフランスチームで語り継がれているとかで…

『もう一度、若島津とやりたい』 というメンバーがこぞって集まった結果らしい。

ということで、全くもって練習試合とは思えない、とんでもなく白熱した日仏戦が繰り広げられたわけだ。

そこまではいい。

俺は、反町さんから外した視線を日本チーム側のベンチに投げた。

反町さんは俺の視線を追い、ああ、とため息にも似た声をもらした。

そこには小さな人だかりが出来ていた。

その中心にいるのは、若島津さんだ。

先発出場の若林さんに交代する形で、後半戦、若島津さんがゴール前に立った途端、試合の空気がガラッと変わった。

それまでも練習試合とは思えないほどの熱い試合展開ではあったものの、鉄壁の若林さんを攻めあぐねて、比較的固い試合運びが続いていたのだが…。

若島津さんへの交代が告げられ…。

若島津さんがコート脇で、肩と股間をほぐす軽いストレッチのような動きから、風になびく髪を両手で掻き上げたあの姿。

ベンチでの、ある意味物憂げな、とさえ言いたいような柔らかい雰囲気から、瞬時に試合モードに入ったあの表情。

日本チーム、フランスチームに関係なく、コートにいた全員がくぎ付けになった。

この後フランスチームは完全な攻撃モードに変わり、それでも若島津さんは先行した日本チームの2点を守り切って、日本チームが勝利を手にした。

シーズン前にいい具合にエンジンがかかった感じで、今後の課題も浮き彫りになったし、凄くいい試合だったと思う。思うけども!

若島津さんはそりゃあ元から美形だよ。

同じキーパーでも、空手を基礎に、類まれな瞬発力と柔軟性で華麗なセーブを得意とする若島津さんは、若林さんのような見るからにガッチリ頑丈な熊系とは違って、すらっと背が高くて、細腰の腰高で足が長くて、でも尻はぷりっと丸くて形よくくいっと上がってて、それに加えて、サラサラの黒髪が風になびいちゃったりなんかしたら…って、いやいや!

いや、じゃなくて、そうそう!そうなんだよ!元々とんでもない美形だったのに!

この合宿に入ってから、なんかタガがはずれちゃってんだよ!

色気っていうの?気だるげな、物憂げな、そんな風情が出ちゃってるんだって!

今までは、そりゃ美形ってのはデフォルトであったにしても、練習中や試合中に周りのしかも選手がざわつくなんてことはなかった。

一般庶民の俺たちに普通に紛れて、汗だくで、普通にフィールドに違和感なくいたんだ。

なのに…

今だって、ピエールにあんなに接近されて、腰?腰に手ぇ置いてないか?あいつ!

金髪の長髪が、まじで後光が差してるみたいに光って、あいつの目、まじでビー玉みたいに真っ青なんだよな。

あれは、危険だ、あぶないだろ?あきらかに!

こんなフランスなんかで、あんな感じだと、まじで!危ないって!

「俺も、まさかこういう展開になるとは思ってなかった」

「?」

「若島津、日向さんと別れたんだと」

「???!!!」

「いや、日向さんに言わせると、条件付き別居?」

「!!!???」

「日向さんもやせ我慢で、“あいつの気持ちを尊重する”なんて言って、若島津の気が済むまで距離を置いてやるっつって」

そういえば日向さん、もう姿が見えない!どこいったんだよ!

「だから、いつもの防御壁?バリアかな、なくなっちゃってるわけ。日向さん、若島津によりつく害虫、いつも一睨みで蹴散らしてたし、日向さんの傍にいれば、若島津もあんなダダ洩れじゃないしな」

(ダダ洩れって言った!)「そ、そっ…」(反町さんもわかってたのか!俺だけじゃなかったんだ、やっぱり!)

言葉にならない叫びに、ただ口をぱくぱくさせている俺の鼻先に反町さんは指を突き付ける。

「そうそう、そうなんだよ。でもさすがにやばいよなー。あの感じ。日向さん土下座でもなんでもして早いとこ仲直りすればいいのにって言ってんだけどさ。健ちゃんのあの"全開放ダダ洩れ感"にビビらない人間が普通にウジャウジャいる海外じゃ、特に危険だよな」

俺は、とりあえず若島津さんを取り囲む、金髪やら、赤毛やらのフランス男たちを視線で殺せないかと真剣に念じた。

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合宿に入って以来、身体はクタクタなのに神経が高ぶってなかなか眠れない。

昼間の、あの練習試合とはとても思えないほど白熱したフランスチームとの熱戦の影響もあるとは思う。

だけど、何の因果か、部屋割りで若島津さんの隣の部屋になったってことも、俺の不眠の一員なのだ…。

いや、それが主な原因かもしれない。

思い返せば、あのカフェでの一件以来、俺はなんかおかしいんだ。

反町さんとふざけて昼下がりのカフェで寛ぐ若島津さんを覗き見していただけのはずが一転、あの三人の間に流れた空気、緊張感を目撃してしまったこと…。

反町さん情報によれば、あの晩、若島津さんは帰ってこなかったって、若林さんのホテルの部屋に泊まったんだって。

あの翌朝、若林さんと連れ立って帰ってきた若島津さんは…。

俺だけじゃなく、あの場にいた全員がざわついた。

それまで二人きりで、話し込んだりしてる姿すらみたことなかった二人だぜ?

なんっていうかさ!若島津さん、それまでとは別人になってしまったみたいだったんだ。

正直に言う、俺は、あれ以来若島津さんのことが気になって仕方ない.

あの朝の若島津さんの姿を見て以来、いままで無意識に心の中で蓋をしてきたものが、外に出てきてしまった感じ、というか。

それがなんなのか、はっきりさせたくないために、余計に頭の中がぐるぐる混乱している。

とはいえ、反町さんも『ダダ洩れ』って言ってたように、若島津さんの変化に気付いたのは、もちろん俺だけじゃない。

昼間、試合の直後、反町さんにも訴えたけど、男の股間を直撃するような、フェロモンとかなんとかそういうなにかが、とにかくダダ洩れになってるんだ!今の若島津さんはっ!

(日向さん&若林さんの無言の圧力もあって…)戸惑い気味にやや遠巻きにしている日本代表チームに対し、ピッチに到着して若島津さんの姿を目にするやいなや遠慮会釈もなく若島津さんにまとわりつき、試合後も図々しくも厚かましく若島津さんを取り囲んで飲みに誘っていたらしい(←岬さん翻訳による)フランスチームの奴ら!

はぁ。

日本代表チームの合宿所として、貸し切りになっているこの郊外の小さなホテルは、そう壁が薄い訳でもないし、若島津さんが部屋で大きな物音を立てたりするわけでもないのだが、隣の部屋の気配ってなんとなく伝わってくるもんだろ?

はっきりと言葉にもできない、もやもやした気分を抱えたまま、若島津さんの部屋から意識を逸らしつつ、無駄に寝返りを打っていた俺は、それでもいつの間にか眠りについていたらしい。

というのは、微かな水音で目が覚めたからだ。

雨か?と一瞬思ったが、シャワーの音だと気づいた。

時計を見るまでもなく…深夜だ。

こんな時間にシャワーか?

若島津さんこそ、昼間の試合の熱の余韻で眠れないのかもしれない。

そんなことをうつらうつら考えていたものの…、いつまでも途切れない水音に…、長い、いくらなんでも長すぎるんじゃないか?

ここ数日なんか、疲れてるっぽかったし。ひょっとして中で倒れてたりするなら!

俺ははっと身体を起こした。

突然早くなった動悸を抱えたままベッドから飛び降りて、裸足のままドアに向かう。

ドアに手をかけた時、隣の部屋のドアが開く気配を感じて、ノブを引く手を止めた。

隙間からそぅっと顔を覗かせて…、マジで、心臓が止まるかと思った。

かろうじて腰にバスタオルを巻きつけてはいるものの、ほぼ全裸の若島津さんが部屋から出てきたんだ!

日本のホテルと比べたら控えめな照明とはいえ、真っ暗ではない廊下で、ぼうっと発光して見えるくらいに真っ白な背中には、長い髪から雫が…。

色々な混乱と驚きに固まって動けなくなった俺の方へは視線もくれず、若島津さんは、俺の部屋とは反対隣りの部屋の前へと進み、小さくノックした。

真っ白な素足から滴る水で、廊下のカーペットに足跡がついている。

ドアに手を当てたまま、俯いている若島津さんがふと顔を上げた。

ドアが開いたんだ。

中から太い腕が伸びてきて、若島津さんの肩に回されたと思ったら、一瞬で若島津さんの姿はドアの向こうへと消えた。

若林さんの部屋だ。

なんで俺の部屋じゃないんだ!と、とっさに思ったが、裸でびしょ濡れの若島津さんに深夜ドアをノックされたとして、俺にどんな対処ができる…?

修行だ!

俺には修行が必要なんだ!

一人前の男になるために!

当然あんな衝撃の光景を目にした後眠れるわけもなく、俺は腹いせに、反町さんの部屋を急襲することにした。

明日は休養日だ、徹夜で俺のこのもやもやに付き合ってもらう!

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新田君目線です!そうです!タイトル、”CANNON”(オフィシャル設定)です!

今回は、ン十年振りに半端に齧った、REAL設定をちょこっと盛り込んでおります。

実は、今回数年ぶりの更新を開始した時点で、新田君が健ちゃんたちより、1学年年下っていうことを完全に忘れておりまして…。あっ、石を投げないでください…。

腐女子心の一番の根っこのところをキャプ翼に培われて以来のこのン十年というもの、小次健、源健のことを片時たりとて忘れることなどなかったものの(これ恐ろしいことにホントなの!)、その間、あまりに色んなFandomを渡り歩きすぎて、元から薄かったキャプ翼のcannon設定知識がほぼ白紙に戻ってしまっていたというか…。

いやー、年を取るって怖いですね。

ともあれ、このお話を書き始めた当時の私にその意識&知識があったのか、どうなのか、…とにかく、『人妻ウォッチング』の実況要員として、新田君の口調を敬語にしておいてよかった!

それにしても…、プロになってから(?ですよね?wiki読んだんだけど、その辺がはっきり分からなかったの)、健ちゃんの実家で空手の修業を始めるとかって…。

この子、絶対!健ちゃん虜(とりこ)男子の末っ子…ゴホホッ

今後、健ちゃんを巡って、この子が小次や、源三さんに対決を挑むとかって、…っは、いやっ、それこそ収集つかなくなるから!

Wikiでちら読みしただけでも、若道流で身につけた技で、健ちゃんとついに直接対決して、それでもなおゴールを奪えずに号泣?した??!!とかって…。

もう完全に…、そういうことですよね?

なんにしても、健ちゃんってほんっと、罪作りな美人さんってことですよね。

段々、お話本編よりも、言い訳パラグラフの方が長くなってきたかも。っス

次は…、源三さん目線の予定なのです。

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