米国大手MFGlobalの破産に見る顧客資産の保全について

Post date: Nov 2, 2011 8:53:41 PM

『ニューヨーク連邦準備銀行は、MFGlobal社との新規取引を停止し、31日月曜、ニューヨークの裁判所に連邦破産法11条の適用を申請した。』

ここまでは、まだ良いのですが、問題はMFglobalに預けていた顧客資産のうち”数億ドルが行方不明”だと言うのです。

多くの投資家が、大手だから大丈夫だろうと考えていたと思います。FX業者や証券会社がつぶれる理由はいくつも有りますが、逆に潰しにくい方法はあります。

  • 潰れないFX業者の条件① 自己勘定で投資家を行わない。MFglobalは自己勘定での投資を積極的に進めていたようです。

ゴールドマンサックスなどの大手投資銀行もリーマンショック以降は投資銀行部門を縮小したりと、リスクの高い投資を控えています。

  • 潰れないFX業者の条件② 顧客の注文を直接カバー先に注文するか、内部で相殺し、相殺できないポジションは、インターバンクなどにヘッジしている。どういう事かというと

『投資家Aから10万通貨のドル円買い注文が入る。ほぼ同タイミングで投資家Bからドル円80万通貨の売り注文が入る。』この場合、10万通貨分は両建てとなる為

注文が相殺されます。FX業者は70万通貨分のドル円売り注文を受けている状態となりますが、リスクを取らないFX業者の場合は、70万通貨のドル円売り注文を

インターバンクに発注します。これには、取引手数料が発生します。リスクを取るFX業者は、インターバンクに注文を出しません。

なぜなら、仮にドル円がその後、円安方向に動いたとなるとどうでしょう?投資家は損失が発生します。もっと円安に動いて、投資家の証拠金がロスカットで無くなったと

します。すると、FX業者は投資家Bには、利益を渡さない為、70万通貨分が概ね利益となります。一方、インターバンクに注文を出しているFX業者の場合は、インターバンク

と投資家からの注文のスプレッド分しか利益が出ません。しかし、これが仮に円高に動いたらどうでしょうか。インターバンクにヘッジしていないFX業者の場合は、70万通貨分

の投資家の利益を持ち出ししなければなりません。

ここで、FX業者にも2つのタイプがある事が分かったかと思います。

  1. FX業者内部で相殺できなかった顧客の注文をインターバンクに流して、リスクヘッジする薄利多売のタイプ
  2. 顧客の負けはFX業者の利益。顧客の利益はFX業者の損失という敵対関係タイプ。

では、どのように見分ければ良いか?

ひとつには、ディーリングデスクを持たないFX業者を選択する事をお薦めします。これをNDD(No Dealing Desk)と呼びますが、NDDには2種類あります。ECN/STPです。

  • ECN(Electronic Communications Network)とは、人間が取引に介在しません。全てプログラムによって自動的に注文が処理されます。

オークション形式で取引しますので取引所取引と同じように板情報(気配値)を見る事ができます。ECNに参加している参加者同士で売買を行いますのでFX業者は場の提供を行うだけです。

板情報を提供しないでECNと謳っている場合はECNではありません。

  • STP(Straight Through Processing)とは、人間が取引に介在しません。かつ、直接、銀行や他のFXブローカー、ECNに注文を受け渡します。

人間やFX業者の意思を介さずに直接マーケットに注文を繋ぐ場合を言いますが、そもそもマーケットというのがFXの場合様々で、他のFX業者に注文を繋ぐのもSTPです。

投資家からするとより流動性が高くスプレッドの狭いマーケットにアクセスしたいと考えますが、STPの場合は中味がブラックボックスで実際はどうなっているかFX業者のみ知る

というような状況です。中にはどのような接続先を持っているか公開している業者もあります。またSTPは昨今、幅広い意味で利用されます。人間のディーラーを介さないディーリングデスクを

用いて、注文を繋ぐケースもSTPと言います。これはFX業者の客同士の売りと買いを約定させて、余った注文を他のECNやFX業者、銀行に流すという方法です。

基本的には、FX業者がECNSTPと謳っている事を確認して、さらに本当にECNSTPかを確認しなければなりませんが、この辺は判断するのに少々、コツが必要となります。

詳しくはNDD(ECN/STP)についてをご覧ください。

もう一つ、信託保全に触れたいと思いましたが、文章量が多くなってしまったので、こちらもまた違う機会に掲載したいと思います。