過去のテーマ紹介

研究テーマ紹介

制御理論(進行中)

都市インフラ制御

電力系統制御(進行中)

航空管制制御(進行中)

農業環境制御(進行中)

行動経済学と制御(進行中)

自動車アシスト制御(進行中)

過去のテーマ紹介

人間集団の意思決定をループに含む新しいフィードバック制御理論の開発(吉田)

 自動車の交通流の制御や航空管制による航空機の制御、デマンドレスポンスによる消費電力量の制御においては、ドライバーやパイロット、電力需要家といった人間集団の意思決定の影響が大きく出てしまいます。特に、フィードバックループ内に不確かな人間の意思決定信号が含まれる場合には、システムの制御性能を担保できないばかりかシステムの不安定化につながることもあります。そのため、人間の意思決定を考慮したフィードバック制御理論の構築が求められます。



系統の減衰性能を強化する電力潮流制御(荒幡)

 再生可能エネルギー(再エネ)の導入は、地球温暖化対策などに貢献する一方、電力系統において新たな問題を引き起こす恐れがあります。たとえば、再エネによる発電量は天候に依存して不確実に変動するため、外乱として振る舞い、電力系統の周波数や電圧に悪影響を及ぼす恐れがあります。これらの悪影響を抑制するためには、外乱に対する減衰性能を強化する方策が必要となります。

 電力系統の減衰性能を強化するために、望ましい制御器を設計することがよく考えられるかと思います。本研究では、制御器の設計に加えて、電力系統の潮流(系統内の電力の流れ)を制御することで、減衰性能の強化を図ります。これは、非線形システムの平衡状態を制御する問題に相当します。物理的な制約やコストの問題により制御器の実装が困難である場合、潮流制御による減衰性能の強化は効果的であると考えられます。

制御系のパーシステンス(井上)

 これまで,制御系に期待される性質の一つとして,現実の不確かさに対するロバストネス(頑健性)が認識され,明確な定義のもと数多くの解析や設計論が研究されてきました。最も重要な成果であるロバスト制御(H無限大制御)は,制御の標準的な教科書には必ず書かれていることでしょう。本研究室では次世代の制御系に求められる性質として,パーシステンス(粘り強さ)に着目しています。そして,数学的な定義を与えるところから解析から制御系設計論の構築まで取り組んでいます。

 制御工学におけるロバストネスは,有界なモデル集合に属する不確かさのもと制御系の安定性や性能の保証をする考え方です。事前に見積もられた大きさまでの不確かさに対しては頑健な理論保証がある一方で,それを超える不確かには何の保証もありません。この意味でロバストネスは不連続でバイナリ的な性質になります。我々が提案するパーシステンスは不確かさの大きさに対して連続的な性質です。当然,不確かさが大きくなれば系の安定性が劣化することは避けられませんが,劣化を連続的な変化にとどめ,劣化度合いを低減する考え方を提案します。

 現実的な大規模複雑系では,サブシステムの結合・分離が繰り返されることが想定されます。このようなシステムでは不確かさの大きさを事前に見積ることは難しく,従来のロバストネスではなく,パーシステンスの見方から解析・設計する必要が出てくるものと信じています。

[M. Inoue, Persistence in control systems, IEEE Control Systems Letters, Vol. 2, No. 3, pp.387--392, 2018]など

サブシステムの接続で消散性強化

モデル集合ベース制御(井上)

 古くから学会で実用性が主張されてきたモデルベース制御ですが,近年では(ようやく?),産業界でも一般に認識され取り入れられはじめました。開発と実機試験を無闇矢鱈と繰り返すのではなく,間にモデルに基づく解析から制御系設計を取り入れることで製品開発の効率化から性能自体の向上まで図れるようになります。ただ,モデルベース制御が一般に認識された今,我々大学では何を研究し提案していくべきでしょうか?

 次世代の制御系設計方策として,我々はモデル集合ベース制御を提案していきます。この提案では,一つ一つのサブシステムに対して精密なモデルを立ててシステム全体の解析,制御,最適化をおこなうことはしません。サブシステムは何らかのモデル集合の元とみなし,そのモデル集合のみで解析から制御・最適化までおこないます。想定している制御対象は,従来のモデルベース制御が適用できない大規模複雑系です。精密なモデル化ができない複雑な非線形システム,モデルベースでは次元の呪いをまともに受けてしまう超多数・超大規模のシステムを想定しています。

 モデル集合の記述には,受動性(passivity)や消散性(dissipativity)を利用しています。従来から知られるこれらの定性的な性質にパラメータを導入して,たとえば,性能付き受動性を定義します。そして,システムを微分方程式などで精密に記述するのではなく,このパラメータの値で特徴づけます。これにより,システムの結合・分離をパラメータ変化として捉えることで,規模や複雑さによらずスケーラブルかつ簡易に解析から設計までが行えるようになります。

[M. Inoue & K. Urata, Dissipativity reinforcement in interconnected systems, IFAC Automatica, Vo.95, pp. 73--85, 2018]

[M. Inoue & K. Urata, Quantitative analysis of passive systems interconnected on graphs, IEICE NOLTA, Vol. 9, No. 2, pp. 185--195, 2018]

[K. Urata & M. Inoue, Dissipativity reinforcement in feedback systems and its application to expanding power systems, IJRNC,  Vol. 28, No. 5, pp. 1528--1546, 2018]

実験デモ

 こちらに一部を公開しています。順次公開予定です。