回「チームビルディングの進め方

■趣   旨:「企業課題へ取り組むチーム編成」の前に、リーダーシップや人材活用戦略の一環としてチームビルディングをどのように進めるか効果的な取り組みを学ぶ

■講   師:Zホールディングス 本間浩輔氏 ・ 野村総合研究所 坂口剛

■参加者:研修生 22名、7名欠席(内遅刻1名)

/オブザーバー3名(上間菓子店2名、前原氏)

        課題提供企業8名(㈱上間菓子店、南島酒販㈱、浦添市産業振興課、

ブルーシール㈱、おきなわ工芸の杜)

■日   時:令和4年11月12日(土) 13:00~18:00

■場   所:おきなわ工芸の杜

■メンター:鈴木幹直、仲宗根真、知念仁志、翁長佐弥子、與那覇(記録:大城亮子)

(サポート:市川幸平、久田友太)

講師紹介

Zホールディングス株式会社 シニアアドバイザー 本間浩輔氏(ほんま こうすけ)

立教大学大学院 経営学専攻リーダーシップ開発コース 客員教授/法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 兼任講師1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。コンサルタントを経て、後にヤフーに買収されることになるスポーツナビ(現ワイズ・スポーツ)の創業に参画。2002年同社がヤフー傘下入りした後は、主にヤフースポーツのプロデューサーを担当。2012年社長室ピープル・デベロップメント本部長を経て、2014年より執行役員。同社においてさまざまな人事制度改革に取り組んでいるとともに、戦略人事プロフェショナルの実践家として社内外において広く活動。2014年、日本の人事部「HRアワード」最優秀賞(個人の部)受賞。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。

1.講座 「チームビルディングの進め方」 

(グループディスカッションの注意)

・1人の人が長く話さないこと

・発言する内容を用意するのではなく、前の話に乗っかるというイメージで進めていく


1)なぜチームが必要なのだろう?

緑G(グループ):チームがあることで、生産性やスピードが増す。

本間:狩猟民族がマンモスを狩るように、一人ではできない大きな仕事をするためにチームがある。ひとりでマルチタスクをこなすより、専門家を集め役割分担したほうが、効率的に高度な仕事をできるということ。

桃G:知識や経験を持ち寄れば、アイデアの幅が広がったり、想像以上の成果が出せる。

本間:多様な専門家がいるからこそ、一人では思いつかないことにチャレンジできる。ただし、言葉の壁もあり、例えば、クリエイターはビジネスパーソンと接することに苦労があるかもしれない。

赤G:フォローし合える。モチベーションが上がる。

本間:少し声をかけてくれるだけで頑張ることができる。また、これまでの流れとは別の方向に進みそうなときには戻してくれる、そのような役割もある。

青G:責任を分散することができる。

本間:意思決定をする時には、確からしさが高まる。また、チームのメンバーそれぞれがプロセスを知っていることも大切。

黄G:自分の苦手な部分を他の人がやってくれるので、自分の得意分野に集中できる。

本間:「努力は夢中にかなわない」という言葉があるように、弱みを補強するより強みを活かす方がよい。得意なこと、好きなことをやっている人が集まって、弱いところはお互いにフォローし合えば、チームの成果は高まる。

2)いいチームって何だろう?

黄G:それぞれの能力を発揮できるチーム。得意なことを持っている人が集まる。

本間:では、オーケストラメンバーが一斉に音を出すとどうなるか?サッカーチームのメンバーがそれぞれ個性的な力を出すとどうなるだろう?

黄G:いいリーダーがいるのが、いいチーム。

緑G:お互いのいいところを褒め合えるのがいいチーム。また同じ人とやろうと思えるチーム。

本間:このチームで「もう一回やろうよ」と言えるかどうかは大切。感謝を伝えあえるのもいい方法かもしれない。

青G:円滑にコミュニケーションが取れる。何かを判断するのに話し合いができる。

本間:時には、全員の意見を聞くことが面倒になることもある。しかし、「心理的安全性」が確保されていれば、言いづらいことも言える。優れたパフォーマンスを上げるには、相手が誰であれ、言いづらいことを言えることである。これから皆さんが作っていくチームにおいて、「心理的安全性」が保たれているかを常にチェックする必要がある。

3)事例紹介 「課題解決ができる人材育成」研修(北海道美瑛町)

※参照:「ヤフーすごい研修―未来のリーダーはこうして生まれる」

■課題解決と組織マネジメントの2階建ての研修

地域課題に対して、いかにして課題を解くのか。

皆さんにとって、課題解決だけでなく、チーム作りを進めることがとてもいい経験になると思う。

・言葉が合わないこともある

事例:当初、美瑛町と企業の人の話が合わなかったことがある。使う言葉の違いもあり、

円滑なコミュニケーションに繋がらなかった。また、通常の組織の場合、発言する人が

なんとなく決まってしまう。聞いているけど聞いていない、といった状況が生まれる。

多様な人が集まる中で「心理的安全性」をどう保つか、誰がリーダーになるのかを考えながら取り組んでいってほしい。

4)どんな人が、多様な人を活かすリーダー人材になれるだろうか?

桃G:話しかけやすいような空気を作れる人。

黄G:あえて隙をみせてくれたり、人間臭さを出してくれる人。

緑G:「聞く力」、「学ぶ心」がある人。

黄G:圧倒的個性があり、方向性が明確であり、突き進んで行く人にはついていきたくなる。

本間:どれもありうると思うが、これまでの経験では、会議中よりも、休み時間に行動をおこせる人。会議ではあまり発言しなくても、“チームの中でアウトプットを出すために、勇気をもって発言した人”に気づくことができ、その人にさりげなく働きかけることができること。どういうチームを作り、だれがリーダーになるかは、皆さんにとっても重要になると思う。

これから企業の課題を検討する際、時折、「私たちはいいチームか」を自問自答して欲しい。仲良しチームではなく、きちんと成果を出すことがいいチームであることを忘れてはならない。成果を出すためにも自分は機能しているのか、俯瞰してみることが必要。

大切なのは、まずチームの状況が見えていること。そして、(チームの中にちょっと失敗して引いてしまった人がいたら)それに関わることができること。

5)すべてのリーダーにとって、大切なこと(キーワードから考えてみる)

「神輿の心理」:神輿は担いでいない人に限って声が大きい。最後には面白がって神輿にぶら下がる人もいる。

組織も同様で、自分自身がアウトプットできているかに一生懸命になるだけでなく、この組織で何が起きているかを冷静に見て、神輿のように誰が担いでいるのか、誰がぶら下がっているのかを見ながら担いでいくこと。

「プロセスロスを最小にする(1+1=2)」  スタイナーの公式(社会的手抜き)

関わる人数が多くなるほど、人は手を抜く。3人のチームより5人のチームが手を抜く人が増えるというプロセスロスの事象が発生している。逆は、プロセスゲインである。いいチームはプロセスゲインがどんどん起こる。

 「モチベーションを上げてくれる」

世の中にはモチベーションを上げてくれる人と下げる人がいる。例えば、相手の未熟さを指摘してくる人と、「自分はもっとやれそうだ」とポジティブに思わせてくれる人がいる。

 「3歩先を見て、2歩先を照らす」

大きい仕事をする-組織を作る- プロセスロスが起こる。

リーダーが常に先を見ている。3歩先を見ているが、その先で待つのではなく、歩くメンバーの2歩先を照らすことができる人が必要。

6)皆さんに期待したいコト

チーム(組織)として仕事をしないと、大きな仕事はできない。そのために、いい組織は何かと考えてほしい。また、その組織の状況が見えているかどうか、その組織に関わることができているかを常々確認すことも必要。そして、時折、「私たちはいいチームか」を振り返って欲しい。

2.質疑応答

Q:チーム内でレベル差がある場合は、どうしたらよいか?(レベル差に悩む辛い経験があった)。

A:組織論でいうと、背伸びして上手くいかなかったのであれば、しゃがむしかない。(あなたが辛かったのは)周りがしゃがまなかったということではないだろうか。一方で、あなた自身は、これまでできなかったことを埋めるための努力をするに他ならない。

「話が通じないのは受け手が悪い」というのは日本特有の文化。世界では聞いてわからなかったら、話を変えろと言われる。リーダーがしゃがまなければ、コミュニケーションはできない。

Q:チームリーダーはどう決めるといいのか?

A:例えば、グループで課題を解いてもらう時、「この人がリードしていくと、いい解決がでてくるだろうと思われる人を指してください」と言い、皆が一斉に指すように仕向けると、すぐに決まる。いいリーダーはフォロワーが決める。つまり、リーダーになりたい人ではなく、この人についていきたいという視点で決める。リーダーはフォロワーがいないと務まらないという考えである。

Q:その場合、決めるまでの時間はどの程度必要なのか。

A:方法論ではなく、感覚的な部分もあるので、さほど時間はかからないだろう。

Q:本間さんがヤフー時代にプロセスロスを最小化するために何をしていたか、教えてほしい。

A:まずは「プロセスロス」「プロセスゲイン」を教える。あとは、相性だと考えている。経験上、相性がいいと結構うまくいく。それを見極める為に、組み合わせ会議などを数多くやっておくこともよいだろう。

3.企業課題のプレゼン  

1)―1㈱上間菓子店

【説明】

・1981年に「スッパイマン 甘梅一番」誕生からの社歴

・世代を超えて愛されるスッパイマンの魅力(芸能界にもファンが存在)

・幅広いカテゴリーでOEMコラボ商品を展開(コラボ商品のオファーも多い)

●課題⑴ オリジナルお土産の開発(お菓子以外の商品化も可)

【質疑応答】 ―プレゼン企業との質疑応答 実施―

1)-2 ㈱上間菓子店

【説明】

・自費でアンケート調査を実施

・新しいコンセプトサイトを開発計画

●課題⑵ 新サイトのユーザーを増やす

【質疑応答】 ―プレゼン企業との質疑応答 実施―

2)南島酒販㈱

【説明】

・南東酒販の社歴/業種(卸売業)および県内外の主な仕入先/得意先の紹介

  ・企業理念「南東酒販は沖縄に貢献する会社である」

  ・部署紹介(営業部、管理部、商品部、配送部、センター事業部、システム統括部)

  ・社内雰囲気は、話を聞いて貰える、コミュニケーションも円滑

   ●課題:⑴リクルート課題/⑵売り上げ拡大/⑶文化面向上

【質疑応答】 ―プレゼン企業との質疑応答 実施―

3)浦添市産業振興課 産業振興課 〈浦添市産業振興センター・結の街 公共施設の余活用の推進について〉

【説明】

   ・施設概要紹介 H16年建築/指定管理者:浦添商工会議所(R2~6年度)

  ・施設コンセプト「ひとづくり、まちづくり、情報発信・交流」

  ・実施事業紹介

  ・施設機能(屋外・屋内)

  ・今後の利活用推進について(1F・3F・5Fリラックススペースなど)

●課題:空いているスペースの有効活用/情報発信の強化

【質疑応答】 ―プレゼン企業との質疑応答 実施―

4)ブルーシール㈱ 友利周作氏

【説明】

・企業理念「アイスがもたらす笑顔のために」

  ・商品展開と社歴

  ・2020年以降の売上と活動(成果)について

   ●課題:ブルーシールオリジナルの「キラーメニュー」「サービス」の開発

【質疑応答】 ―プレゼン企業との質疑応答 実施―

5)おきなわ工芸の杜 指定管理副館長:又吉氏

【説明】

・今年の4月から運営開始 (共同企業体:沖縄TLO㈱+㈱沖縄ダイケン)

  ・役割:情報発信(館内展示、3種類のWEB、SNS)

  ・作り手の支援(1室22㎡~、工芸関連機械器具40種類以上)

  ・貸工房入居者支援(専門家に指導依頼)

  ・県内工芸事業者向け支援(公開セミナー・ワークショップ)

  ・作り手と使う人の交流の場(イベント主催・誘致)

  ・今年度来観者数と目標について

   ●課題:次年度入館者数をUP

【質疑応答】 ―プレゼン企業との質疑応答 実施―

4.クロージング 

チームができたら、ぜひ本間さんの言葉を思い返し、チーム内でお互いに問いかけながら、進めていってほしい。

「井の中の蛙大海を知らず」と言う諺には、後に続きの句が足されたとされており、「されどその空の深さを知る」と続く。各講師からのインプットを咀嚼しつつも、沖縄の良さは皆さんが一番理解しているので、新たな課題解決策を提案して欲しい。

講師Zホールディングス本間氏

本間氏の講座風景