10回「デザインをもっと身近なものに

■テーマ:デサインをもっと身近なものに

■講 師:株式会社フレーム 代表石川竜太氏

■ファシリテーター:野村総合研究所 坂口剛氏

■参加者:研修生 29名

■日   時:令和4年12月17日(土) 10:00~18:00

■場   所:インターナショナルデザインアカデミー 7F講堂

■メンター:鈴木幹直、大城英樹、知念仁志、翁長佐也子、大城亮子  

■サポート:市川幸平、久田友太

講師紹介

株式会社フレーム 代表取締役 石川竜太 (いしかわりゅうた)

1976 新潟県三条市生まれ

デザインをより身近なモノに感じてほしい。そして、デザインをビジネスにしっかり役立てたいという思いで、さまざまなクライアントの課題解決に取り組む。商品・ブランド開発、ブランディング、C.IV.I計画など、デザイン全般にあたる。麒麟山酒造コーポレートデザイン及びパッケージデザイン、キリンビバレッジ「生茶」「yosa soda」、LOTTE「紗々」のパッケージデザイン、ダイニチ工業のロゴデザインなど、県内外企業ブランドのデザインを多数手がける。

20142015年 新潟広告賞審査員

2015年 IDSデザインコンペ審査員

2016年~ 長岡造形大学非常勤講師

2019年〜 国際パッケージデザインコンペpentaward審査員

1.プロフィール紹介

新潟県燕三条出身、㈱フレーム代表。「デザインを身近なものに」を心掛けながらデザイン事務所を経営。普段の仕事では、企業との直接対話を増やすため、営業職を持たず全てデザイナーが担う。パッケージ系を中心に国内外の多数の賞を受賞。 書籍「毎日ロゴ」

2.良いデザインって何ですか?

私が普段している仕事「デザイン」は、一般の方から見ると、色や形を駆使して、視覚的に何かを表現することだと思われているようですが・・・・・

デザイン=計画です

私達だけがデザインをするのではなく、私たちに依頼する企業にも“計画”があり、それもデザインです。


どんなに優れた商品も、その特性を伝えるメッセージ、それらしい見た目、

そもそもそれを誰に届けたいか?と言う計画が伴ってはじめてお客様に届く。

私は、「誰に」「何を」「どうやって」をしっかりお客さまから聞き取り、それを表現することで、お客様に寄り添った(計画を内包した)デザインを提案したいと思います。

Case1:関西のアンテナショップ(物産館)を新潟の情報発信拠点へ

    旧ショップ名「じょんのび にいがた」⇒新ショップ名「新潟をこめ」

    新潟の歴史をこめ、新潟の風土をこめ、人が他の技をこめ、新潟の想いを込める。

    ●やったこと(施設の目的設定、ネーミング・ストーリー・デザイン開発)

Case2:酒造会社のリデザイン(商品に新たな価値を持たせる)

    年1回行事「狐の嫁入り」をイメージしたネーミングだったが、イベントのない日でも、売れるお酒のパッケージとしてブライダル品へ変更

旧酒名「つがわ狐の嫁入り行列」⇒新酒名「麒麟山嫁入り酒」

    ●やったこと(イベントイメージ・お土産イメージの排除・新たな販売シーンの提案)


3.ブランドって何ですか?

             ブランド=共通イメージの認識

   企業:ユーザーにこう思ってほしい ⇔ ユーザー:あの商品・会社をこう思う

(一致する)

 

Case1:こだわりトマトと確かな価値「soga farm」

旧商品名:フルーツトマト ⇒ 新商品名:越冬トマト

      フルーツトマトに対する理解がない(半年育成、冬に育てる)

      ●やったこと(トマトの価値を再設定・ネーミングストーリー開発・ヴィジア

ル開発・パッケージデザイン)

Case2:無添加の手作り寒天の良さを伝える

      大手メーカーの商品風 ⇒ こだわりの詰まった商品へ

      ●やったこと(ゼリーの見た目を寒天へ・値段の説得力・製造者の顔を作る・パッケージデザイン)


4.明日から実践できるデザイン(石川の人生デザイン)

  ⑴ 自分の武器を持て

    持つこと以上に知らせることが大切

  ⑵ 自分の戦場を見極めよう

    まわりの環境を客観的に見ることが大切

  ⑶ 立ち止まらず成長しよう

    常に新しいハードルを見据え超える

〈クリエイティブコンサルティング実施:ディスカッションの中で気づきを生む〉

 ■石川の一日の生活(気にかけるポイント)

  日常の中で違和感やズレ、感情の起伏の原因を探ること

  気づきが普段のデザインに活かされる。直接的でなくても企画のきっかけになったりする→ずっと心掛けているのは、課題解決能力よりも課題抽出能力

2)質疑応答 Q:各チーム代表 A:講師石川氏(ファシリテーターコメント)           

南島酒販T

Q:クライアントと直接話すことにこだわり、課題の抽出に拘っていると聞いたが、そのコツを教えて下さい。

A:全てに課題抽出の必要があるわけではないが、特に意識しているのが「私たちに頼んでよかった」と言ってもらうために、企業の在り方、目指すべき未来を見せてあげる(視覚化)。そのために、徹底的に無駄な話をするようにしている。「なぜこれを作っているのか?」「どういう人にどういう価値を届けたいのか?」など。利益以外の話をしようとすると「お休みの日何をしているか?」など楽しい雑談から引き出していく。


工芸の杜①T

Q:1日のスケジュールでは、デザインやプランニングの時間が少ないと思ったが、その中で成果を出すために工夫していることは?

A:私(石川)がデザインしていると思われているが、(私自身は)プランニングが大切だと思っている。最終のアウトプットはチェックするが、できるだけスタッフに仕事を振って、密に打ち合わせをしている。仕事を振った中堅に指示をさせて若手を育てるようにもしている。

(坂口)社員10人のうち8人がデザイナーという構成のため、それぞれが対応できる状態になっていなければならないということでしょうか。ちなみに、先ほどの講義で

音声情報の話題がありましたが、具体的に何を聞いているのですか?

A:渡辺さんのラジオだったり、古典ラジオを聞いたりしている。視点がいろいろ切り替わって面白い。


上間菓子店T

Q:現在(私たちが提案を考えている)課題から話をすると、コアなファンはいるが新規の客も必要と言われていて、従来型のブランドイメージは残しつつ、新しいデザインを求められている。石川さんの行っている方法を聞きたい。

A:ふり幅のグラデーションを作るようにして、その間を行ったり来たりしている。

私が扱った事例(キッチンツール)として、メーカーとしてアンコントロール的なキッチンツールは触らないようにして、問屋を介さない自社オリジナルのツールを作るようにした。

(坂口)スッパイマンとは違うレイヤーの新商品を開発するにあたり、新商品がスッパイマンのブランドに引きずられるようであれば、組織を明確に分けて事業を進めていくということが必要。

結の街①T

Q:読書が修行とのことですが、石川さんご自身に影響のあった本はありますか?

A:「ストーリーとしての競争戦略」楠木建著(一橋大学)ビジネスにはロジックが必要だということの深い学びがあった。他には「Learn Better」アーリック・ボーザー著など。

(坂口) インプットにおいて、音声情報同様、乱読することもよいですね。

工芸の杜②T

Q:なるべく自分で手を動かさないようにしているとのことですが、部下に依頼した際に思ったモノが出てこない場合は?どのようにマネージメントしていますか?

A:(部下への依頼を)あきらめた場合は自分で作業するが、まだ余裕がある場合は相手に考える余白を残して指示を出す。似たジャンルのものを色々見せていくとか、粗削りなアイデア(核だけ)を渡すなど、目指す方向の矢印だけ見せていく(「原研哉さんになったつもりで作ってみて」などの指示をだすことも)。するとスタッフの良さが出てきて、社内のデザイン幅も広がる。逆パターンでお客様から変な依頼が来た場合は、「なぜそうしたいのか?」「そうすることでどういう効果を求めているか?」を聞き取り、プロセスを紐解くようにすることでストレスがないように工夫する。

(坂口)誰かになりきり、制作活動を行ってもらうのはいいやり方かもしれない。視点・視野・視座のうち、視座を変えることがもっとも大きな変化を生むがやはり難しい。なりきりで視座を変えられことる有効と感じる

ブルーシール②T

Q:パッケージデザインをする中で、(仕上がったものが)売れる確信があるのか?(その場合、どう裏付けするのか?)売れなかった場合はどうカバーしたのか?

A:まず、「売れることとパッケージの良さは直結しない」ことをクライアントに理解してもらう。価格や味だけでなく、作る時に「らしさ」が埋もれてしまわないように意識する。そのため、売れなかったことはあまりない。

(坂口)パッケージだけでなく、容量を変えたり、食べるシーンを変えたりするなど、パッケージデザイン以外のアプローチで利益を上げる方法はある。

ブルーシール①T

Q:石川さんが代表として、スタッフに考えの共有をするためには?

A:それが一番の悩み。組織の成長と年齢の上がり方を考えると、私と同じである必要はないが、もっと視座の持ち方を考えてほしいと思う。社員教育として意識しているのは、振返りを強くしていて、プロジェクトを終わった際に洗い出しをすることで次のプロセスに活かせるようにする。年齢差のあるスタッフ同士でさせたり、キックオフをしっかりさせる。(「こういうことを学ぼう」「達成目標」など)

(坂口)企業と面談する際、石川さん含めて、何人で行きますか。またその時の役割とは?

A:私は雑談しているだけなので、他に1,2名一緒に行く。

結の街②T

Q:石川さんのロゴデザインは素晴らしいが、お客様によっては予算に制限があり、時間や労力の限界があると思うが、クオリティを保ちながらできる秘訣を教えてほしい。

A:クオリティの担保で言うと緩い方だと思う。スタッフ全員で社内コンペをして、私も毎回20代のスタッフと競っており、皆のモチベーションを保っている。そのため、自分の名前(石川)に責任を持っているかというとそうではないと思う。予算によってクオリティは変えない。予算は相手に提示してもらっている。その中では「デザインを事業に導入したいと思って頂くこと」が何より大切だと思っているので、その市場を作るくらいの気持ちで取り組んでいる。小さい企業ほど、デザイン費を捻出するのは難しいと思うので、その本気度に応えてあげたい。

(坂口)石川さんの企画するワークショップの価格は?

A:5万×6回=30万。東京では安いと思われるかもしれないが、新潟だと破格の価格。

久田さん

Q:若い時一人でやっていた頃と比べて、結婚したり環境が変わった場合の、スタッフを育てるスタンスの違いは?

A:メリハリをつける為に、土日はかなりゆっくりしている。デザイナーだから長時間、寝ないで仕事をするという考えを変えたいので、少しづつ環境も変えていって、今は夜に電話が鳴らなくなった。デザイナーとしてより、ビジネスマンや人として成長したい。

市川さん

Q:私も雑談の多い方だが、特に今回セルフプロデュースの話を聞けたのがよかった。

新しいチャレンジを拡げているが、すぐ動けるために何か準備をしているか?

A:基本行き当たりばったりのところもあり、後からそれを意味付けしている。カフェもやりたいと思うとやっちゃっている。

(坂口)石川さんは初動負荷が低いのだと思う。負荷ばかりを捉えすぎて、動けないということはよくある。

人は仕事を貰った時と〆切にしかやる気がおきないとも言われている。〆切がない仕事は、初回にしかモチベ―ションがないので、その時にどう動くかではないだろうか。

3)課題への取り組み 〈講師・ファシリテーターを相手に壁打ち〉                         

沖縄県内の企業5社から課題を頂き、8チームに分かれて解決提案へ取り組む。

今回は、講師・ファシリテーターを相手に〈プレゼン+質疑応答〉の壁打ちを行った。

※企業における売上や戦略も含まれるため、内容公開は控えるものとする

4)クロージング                             

(事務局より)今回が年内最後の研修であり、年明け11回がプレゼン直前になるので、それまでに80%の仕上がりを期待する。年末に作業に当たると思うが、ある程度仕上げた段階で、坂口さんとのzoomミーティングを設定して欲しい。

石川氏セミナー

坂口氏、石川氏ディスカッション

企業課題案件壁打ち