第9回「DXと地域の個性」

■テーマ:DXと地域の個性(沖縄らしさとは何か)

■講 師:(一財)沖縄ITイノベーション戦略センター 理事長稲垣純一氏

■ファシリテーター:野村総合研究所 坂口剛氏

■参加者:研修生 29名

■日   時:令和4年12月3日(土) 13:00~18:00

■場   所:インターナショナルデザインアカデミー 7F講堂

■メンター:鈴木幹直、仲宗根真、大城英樹、翁長佐也子、大城亮子  

■サポート:市川幸平、(オンライン:久田友太)

講師紹介

(一財)沖縄ITイノベーション戦略センター 理事長 稲垣 純一(いながきじゅんいち)氏

1953年東京都生まれ。1993年沖縄県に家族と共に居を移し、県内外の多くの教育機関(京都造形芸術大学、放送大学、他)にて講師/研究員。並行して約50本のパソコン入門ビデオパッケージを制作。のべ4,000本の放送番組に出演。/1999年4月より2014年3月まで15年間、国際電子ビジネス専門学校校長。その後専修学校インターナショナルリゾートカレッジ校長(20年3月まで)。14年より16年まで沖縄県専修学校各種学校協会会長。兼任校長として専修学校インターナショナルデザインアカデミーと沖縄ペットワールド専門学校も担当。



1)講話「デザイン経営の推進」 ISCO理事長 稲垣純一氏         

前回(11/17)は、20年前の〈沖縄の産業の夢=花笠〉を話させて頂き、その後皆さんには今の視点での沖縄社会を見据えてアップデートした新たな概念図を考えて頂いている。

ちなみに、2つの村が町に合併して20周年記念、そして太田昌秀前知事の銅像除幕式のため、昨日から久米島に行ってきた。太田知事は任期の最後にIT化の議論をスタートさせ、「マルチメディアアイランド構想」を策定。それを次の稲嶺知事が実現に導いた。両知事は政治的には対立したが、どちらも沖縄のIT化の功労者である。久米島では、合理的・科学的に離島の問題を解決しようとする情報化推進派と話をしたが、逆に、今以上に島経済が発展して、今の落ち着いた暮らしが失われてしまうことに不安を感じる人もいる現実も知った。意見の対立は、スポーツならゲームのルールがあって管理ができるが、政治の世界には簡単なルールがないので、二項対立の良い点、悪い点、妥協の良い点、悪い点などを考えるいい機会となった。


丁度、この会場までのバスの中で中村桂子著

「生命誌とは何か?」という本を読んでいた。その

中にあった右図の太枠円のように、現代社会は

大きな〈都市の利便性〉とそこで疲れた方が足を延ばす小さな〈地方のゆとり〉という二つの領域の組み合わせになっているが、中村氏は右図の真ん中の円のように、左上と右下の領域も含めたバランスの取れた組合せが理想だと語る。

さて、皆さんはどのように沖縄の産業界を考えるのだろうか?

-この後、チームに分かれて〈花笠〉発表のためのブラッシュアップの時間を取る-

芸の杜① 「世界がうらやむ観光産業」

チーム発表:センターを「観光産業」と捉え、周囲の花びらに4つの「旅」を配置し、その価値として「はっけん」を増やした。はっけんにはスポーツ・エンタメ産業と自然活用型産業が関わり、空手やバスケ、食文化や防災が魅力として加わる。

稲垣コメント:全体としてビビットな感じで、生き生きしている。

    「本質は何か?」を1点に集中させることなく

分散させており、20年前より楽しい方向へ向

かっているのがとてもよい。



工芸の杜② 「センター:おーきなわの観光産業だからね~」

チーム発表:私らしさを加えて花びらを5つにし、外側に〈S

DGsの円〉を使って17の目標を花笠に落とし込  

んだ。中心はもう少し考えたい。

稲垣コメント:SDGsとの組み合わせたのが良い。SDGsの

問題は、(世界の中で)日本だけしか頑張っ

ていないこと。

日本は国連と共に世界に発信していかなけれ

ばならないが、それを沖縄が中心になって発信  

していけると更にいい。次は、如何に国際化していくかを考えるともっとよい。特に自

立を「わたしらしさ」という柔らかい言葉にして貰ったのがよかった。

結の街① 「IT×デザイン産業」 

チーム発表:〈花笠〉を〈ハイビスカス〉に代えた。コロナのこ

ともあり観光ではなく「IT×デザイン」を中心に据

え、「アジア」を「国際物流環境」に代えた。

コンテンツや情報サービスなどは花を育ててく

れる雨や光の役割とした。

稲垣コメント:何と言っても中心から観光を外したのは画期的。

これから50年先を考えてもわからないので、向 

こう10年を「IT×デザイン」を中心に頑張ること  

もいい目標になる。

結の街②:「人」

チーム発表:今との違いやギャップ化を考えた時、〈花笠〉ではなく、立体的な〈万国津梁の鐘〉に

代えた。沖縄に関わる人を中心に据えて、観光や文化資源なども、状況が変わると

周囲の自然やITへのかかわりも立体的に変わ

っていく(チャンプルー文化)。その動くスピードも  

「人が変える」という意味で右下に人を添えた。

稲垣コメント:まったく説明の通りで、中村桂子さんの話(生命の

階層の中心に人の命がある)に近い。

平面に書くと、とかく二項対立的になりがち、4つ

の象限に分けても限界があるので、立体に全体

像を示しているのが素晴らしい。

ブルーシール② 「観光-次のstageへ質のUP!」

チーム発表:〈花笠〉から〈守礼の門〉へ形を変えた。ハワイよ

りポテンシャルがある沖縄なので、やはり中心は 

「観光」とした。その下に「IT・クリエイティブ産

業」、下に「食」「文化」「経済」「ゆとり」とした。

稲垣コメント:とても分かりやすい。焼き物で言えば器を実現す

るために粘土をろくろ乗せて立体に作り上げなけ

ればならないが、この図はそれを示していると思

う。私は経済重視して考えたが、ここでは「食」や

「ゆとり」を置いて社会全体の豊かさを見据えて

いるところが良いと思う。

ブルーシール① 「沖縄型観光産業」

チーム発表:風通しや沖縄らしさを入れて形を〈花ブロッ

ク〉にした。栄・豊・和・楽をキーワードにして

間に挟み、アジア、自然、歴史伝統文化、食

にまつわる産業で区切って、人がそれを取り

巻く図にした。

稲垣コメント:バリエーションがどんどん出てきて勢いを感じる。

分かりやすい図で、皆を巻き込みやすいアイデ

アだと思う。特に漢字1文字を4つ配しており、

これを更に旧漢字や金文などに遡るとその意味

が浮かんできてイメージが更に膨らむと思った。

南島酒販 「観光産業」

チーム発表:〈花笠〉を基に25年後を想定して取捨選択した。更新されたのは、中心の副題「チャ

リバチョーデー アジアの中心OKINAWA」とし、スポーツ・美容や最先端科学、リゾー

トウエディング、IR、エンタメなどを更新し、沖縄を主体的に動く本体として考えた。IT

がソフト面に対して、建設産業としてハード面も付け加えた。

稲垣コメント:小さな改良を丁寧にされている。ただ、「建設産  

業」については、20年前には消化できていな

かったので、この柱が正しいのであれば「それ

を支える建設とはなんだろう?」と、次の時代

の建設の在り方を考えるいい機会となる。

上間菓子店 「持続可能な自立型沖縄」

チーム発表:〈花笠〉は外部に発信するために「観光」を

中心に据えていたが、これからは沖縄自身

が自立発展するために「自立型沖縄」とした。

そのために、「心」「体」「保存」「発展」をキー

ワードとした。

稲垣コメント:スケールが大きくなっている。特にものづくりは

20年前とは変わってきているので考え直す

必要を感じていた。私としてはワーケーション

をもっと重視していたが、琉大学長はスタディケーション提唱している。そのことも踏まえていいと思う。

【総 括】

1つ1つコメントさせて貰ったことが全てだが、発想をどう転換するか?コンテンツをどうリフレッシ

するか?勢い感をどうだすか?ということにおいて、とても示唆に富む発表だった。今後数年に1

回くらいの頻度で皆さんが自治体に提案してくれれば、「こうありたい沖縄」に近づくと思う。

また、今後皆さんが仕事をする際には、クライアントが持っている想いや目的をクリアするだけで

なく、デザイナーとして自分の考えもしっかり持って、自分の発想とクライアントのニーズの円の重

なるところを探していくようにして欲しい。中村さんの言葉に代えると、「1つ1つの細胞が元気で、

1個体としての生物、生態系、それを取り巻く宇宙が元気になるように、全体がお互いに影響し合

いながら、前に進んでいく」ということが大切なのだと思う。

3)チームでの検討                                           

沖縄県内の企業5社から課題を頂き、8チームに分かれて解決提案へ取り組む。

今回は、チームミーティングと並行しながら、ファシリテーターを相手に〈プレゼン+質疑応答〉の

壁打ちを行った。※企業における売上や戦略も含まれるため、内容公開は控えるものとする

4)プレゼンアウトラインの説明                                   

0)自己紹介:チームメンバーの紹介

1)事業の内容1

2)事業内容2

3)顧客

4)事業としての実現可能性

5)必要な経費と売上

6)事業の将来像

稲垣氏講話

坂口氏講話

チーム作業