第3回 研修会
ビジネスモデル研修
第3回 研修会内容報告
第3回 ビジネスモデル研修
■趣 旨:沖縄のものづくり産業は、商品力、販売力について、多くの課題が存在する。
付加価値の高いビジネスモデルを構築するために、ものづくりの人材ができること、デザイナー・クリエイターができることなど、一緒に考えていくための実践事例紹介。
■講 師:生産者直売のれん会 黒川健太氏
■ファシリテーター:野村総合研究所 坂口剛氏 ■参加者:研修生 24名
■情報提供:Y‘sキッチン 山城洸太朗氏
■日 時:令和3年10月9日(土) 13:00~18:00
■場 所:専修学校インターナショナルデザインアカデミー
■メンター:鈴木幹直、大城英樹、仲宗根真、山城豊、宮木健一、大城亮子、知念仁志
講師紹介
株式会社生産者直売のれん会 黒川健太氏
生産者の未来は「高付加価値化」=「ブランド化」の成否に懸っていると考え、「価格競争ではなく価値競争の食品流通」の構築を目指し多種多様なタイプの販路展開を行う。また、東日本大震災後の復興支援事業をきっかけに「食を通じた地域興し」を全国の自治体や地域金融機関様と連携し推進している。八天堂の「くりーむパン」などを始め現在12ブランド30店舗を展開。
「カンブリア宮殿」「ガイアの夜明け」にも出演。
1.レクチャー (1)ビジネスモデル 研修
■市場縮小を乗り越える為に
食品は、少子化高齢化に伴い、これから将来消費量が落ちていきます。
そこで、必要なのは、指名買いされる A ブランド化となるでしょう。
※ブランド化とは、「指名買いされる商品」のこと。
■「デザイン」が果たすべき役割とは?
デザインの B 【目的】 ➡ C 認識されたい姿を認識されること = D ブランド化
※ブランド化につながるデザインでなければ意味がない
■「小さなNo1ブランドになる」戦略
赤の丸が同じ大きさなのに、青い大きな丸の大きさで小さくも大きくも見える
つまり、大市場の小シェアではなく、小市場の大シェアを目指す
同業他社とは別の【自社の魅力】が最も輝く【独自の市場】を設定する
■レジリエンスを発揮するポイント
① 主体性 自らリスクを取り、楽しく、チャレンジできるか?
② 創造性 商品・サービスの価値はコンセプトまで決まるが、一般的に生産時や販売時
にお金や人が投入されるのはなぜか?
>理由:生産や販売は方法論がたくさんあるから。しかし、定型化された仕
事や創造性を持たない仕事は淘汰される。他者と協調し創造していく仕事
は付加価値を生む(コンセプトの仕事など)ため、残っていく。
③ 機能補完 ひとりでは何も完遂できない>チームになる。
+ ④ 圧倒的なスピード感
【独自市場】は、「掛け合わせによって設定する
商品カテゴリーのNo.1の椅子は1つだが、
「掛け合わせ」の No.1の椅子は無数
■事例:㈱三代目茂蔵(とうふ販売) 2004設立(代表に就任)
単価が安くて価格競争の激しいスーパーではなく酒販店に卸展開した
酒販店(販路)におけるとうふ(商品)カテゴリーのNo.1
■事例2:八天堂(パン販売)
エキナカ(販路)におけるスイーツパン(商品)の 手土産(利用シーン)
価格競争の激しい「自家需要」ではなく、「手土産」という「利用シーン」を狙う
次にその駅でしか買えないパッケージの工夫 「東京駅箱」「金のしゃちほこ箱」など
■2つの「小さなNo.1ブランド」事業を通じて学んだこと
【種】は適した【土壌】で実る
いい種やいい土壌、悪い種や悪い土壌があるわけではない。組み合わせが合わないと花は開かない。・商品は、適した販路で実る
食品業界のあるべき姿とは・・・無数の小さな星(=No.1ブランド)が輝く「満天の星空」
■新型コロナショックの影響の本質とは? ➡ 隕石衝突のような衝撃
「気候変動」により【土壌】が変化し、
これまでの実りをもたらした【種】が、同じ【土壌】では実らなくなった。
収穫の減少要因は何か?
探すべきは自社の「種」が花を咲かせる「土壌」
消費者の行動変化から様々な「新しい市場」が生まれている
変化がピンチとチャンスを同時に生む
消費者の行動変化から様々な「新しい市場」=無数の小さな「オアシス」が生まれている
小さなNo.1ブランドを生む最高の環境では?
事例3: 駅ナカの人通りの激減
人と人が合う場面の激減
↓
「手土産」需要の激減
解決策
「おうち土産」と書いたラベルを無地箱に巻いただけ。しかし、そこにある文章は考えに考えた。
身近な人に贈ろう「おうちみやげ」 -「いってらっしゃい」のお返しに「ただいま」に添えて-
※手土産需要が戻ったのではない、新しい需要を生み出した
〇沖縄でも観光客手土産で喜ばれていた商品は、他の誰になら喜ばれるのか?を考えてみる。
■事例4:「ミニヨン」
博多店では大人気なのに、横浜では全く売れなかった ➡ おうち土産で月商2000万まで上げた
駅ナカ(販路)にある パン(商品) の おうち土産(利用シーン)
■2011年の東日本大震災の復興支援の取り組み ⇒ 石巻の会員企業様へ訪問
流されがれきに埋まれ汚れた「缶詰」を現金にしたいという依頼を受けた
どんな「デザイン」にしたか?
↓
デザインは 掘り出した缶詰そのままの姿で売った >命名「希望の缶詰」
上野松坂屋の「訳あり催事」に催事出展
「訳あって安い」催事に「訳あって高い」と言って売り出した
デザインより「何を伝えたいか」が上位にある(石巻の現状を知って欲しい)
東京土産プロジェクト
「(観光)土産」とは 土産話 とセットであるべき
■事例:「人形焼き」の現代風リメイク
常盤堂 雷おこし本舗 8個600円 >8個1000円を目指す
変更したのは・・・
・ 食感を変えた (1カ月1回試食会をして2年間かかった)
・ デザイン(不揃いにこだわらない)
■事例:「レーズンサンド」12個1080円>7個1240円
・名称「東京サンド」>「浅草サンド」
・名前は強いがコロナ禍で困っている「神谷バー」看板商品の電気ブラン
・「浅草 電気ブランレーズンサンド」これを電気ブランのラベルをパッケージにした
■地域特産品プロジェクト
・弊社の取り組み事例 裾野の広い活性化戦略 と 着火ポイントの絞り込み
質疑応答(付箋で集めて整理したものを黒川氏へ質問)
Q:適した土壌をどのように探すのか?茂蔵の販路を酒屋にしたのか?
A:酒屋さんから問い合わせが来て売ったら売れたので、なぜ売れたのかを探って店舗を増やした。
Q:「おうち土産」に気づいたきっかけは?アイデアの出し方
A:社内の雑談。コロナ禍で外に出られない家族から、「会社に行くのが羨ましい」と思われている
という話。出張で「土産を買うより喜ばれた」のがきっかけ。
※家族にとっての出張とは何か?「出張の概念を変えた」
Q:コロナ禍で周囲の人との関係性は変わったか?
A:コロナ禍になって、新しい相談がたくさんきて関係性は大きく変わった。変化があるから「チャンス」があって、ピンチの時程大きく伸びる企業が多いと思っている。
震災の時は、競合の社長同志が結託することが多かった。そこから新しい関係が始まる。
Q:「認識されたい姿」を企業とどのように共有しているのか?
A:八天堂は既に商品を作っているが、お客から「箱はないか?」と聞かれる。 という企業の言葉
からパンは手土産になるはずがないと思っている企業へ提案した。
平時から「おうち土産」もないわけではない。しかし、コロナ禍で一気に存在が大きくなった。
Q:メディアへの露出が印象的。メディアに対しての打ち込み方は?
A:プレスリリースをよく打っていた。メディアに出るポイントは
① 特色がはっきりしていること(何を認識されたいか?)
② プレスリリースは報じる価値があると思わせること(受ける人が何を応援するのか?)
③ 数字をしっかり提示
④ (いちご産地の復興の際は)データを送って、市役所のファックス機を使わせてもらう
Q:メンタルの保ち方は?
A:大変落ち込んだが、問題を特定したら課題が見えてきた。あとは、一人にならないこと。
※問題がわからないから不安になるので、問題を可視化するのが重要。
事業の要素が分解で来ていると、何が問題かがわかりやすい。
Q:沖縄の観光土産への課題イメージは?
A:沖縄土産の括りが大きすぎる。千葉県の海苔でも2種あれば2方向になる。
販路拡大するより、足元を見直す方がよいかもしれない(浅草でしか買えないなど)
大きく考えれば考えるほど、ナンバーワンになる要素が見えなくなるので、小さく絞って考える。
今までは観光土産として高かったが、次の方向性がおうち土産なのか、何なのかを考える。
観察力を上げる>価値を認めてくれているお客さん探し>常に探していく>仮説を立てる
2.レクチャー (2) 「アイデアの出し方」
■これまでの連携
① 地域内での業種を超えた連携(同地域・他産業)
② 地域を超えた業種の連携(他地域・同産業)
③ プロデューサーを核とした連携
・クリエイターが左脳を身に着けてプロデュースする
・クリエイターの方々の志向を理解して、クリエイターと連携することも右脳の活かし方
■最終的に目指すところ
クリエイターとしてパフォーマンスを高めていくことを前提に、声が掛かるのを待つのではなく、仕掛け型の提案営業ができるプロデューサーになろう。
クライアントと同じ目線で話すことができ、会社や社会の課題を端的に整理でき、これまでにない切り口から課題解決を目指す。
ものづくり企業の方・支援機関の方は、クリエイターと連携し、商品・サービスの付加価値を一緒に高めていく。更にそれ継続するだけでなく常に高めていく。
■アイデアの出し方
アイデアを出すことは 才能 ではなく、スキル である。(パターン化、整理分析力)
なぜ、アイデアは出しづらいのか?
「常識」とは・・・18歳までに身に着けた偏見のコレクションのことを言う(アインシュタイン)。
その時代、その場所、そこにいる人間性から発生するものが常識。
業界の中の「あたりまえ」を外す。
イン・オブ・ボックス・・・・・決められたルールの中で組み替える
アウト・オブ・ボックス・・・ルールから外れて新たな組み方を考える
◇手法:視点・視野・視座を変えてみる
視点・・・何のどこを見ているか? 事例:唐揚げの衣
視野・・・見えている範囲とは? 事例:どのように料理するか?
視座・・・どの立場、どの場所から見ているか?
(お客として見る、厨房の作り手として見る、隣の席から見ている客として見る)
◇手法:要素を入れ替えてみる
ユーザー × 状況 × ユーザーの潜在欲求 ➡売れる商品・サービス
◇手法:極を取ってみる(極端志向)
対極にあるテーマをあえて設定することで、視野を広げ、アイデアを抽出する方法
(1) テーマの設定「最低・最悪な××とは?」
(2) 最悪を打ち消すアイデア(素直に問題をつぶす)
(3) 問題を逆に活かす提案(問題をそのまま生かす)
◇手法:マイナスに注目してみる(バグリスト)
打消しに関することを書き出す「バグリスト」の作成
真っ暗闇のソーシャルエンターテイメント「Dialog in Dunkeln」 引き算
こどもだから ・・・・・ こどもだからこそ
田舎だから ・・・・・ 田舎だからこそ
障がい者だから ・・・・・ 障がい者だからこそ
◇手法:四則暗算をしてみる(オズボーンのチェックリスト)
〇拡大したら? ある特徴を大きく引き伸ばす カラムーチョ➡暴君ハバネロ
〇縮小したら? あえて引き算する
〇結合したら?
◇手法:要素分解し掛け合わせてみる(マンダラート)
連想されるものをいっぱい出して、どんどん掛け合わせていく/関係性が薄そうなものほど掛け算すると新しいアイデアが出てくる
2.ワークショップ
(お題)皆さんはプロデューサー集団です。
沖縄の観光客をターゲットに、新しい商品づくりを食品メーカー商品開発部門から依頼されました。どのような商品コンセプトを導出しますか?
〇何を売るか?
〇誰に売るのか?
〇どうやって(どこで)得るのか?
1. 商品のアイデアを出す(要素分解・極を取る)
2,商品アイデアを選定する視点
3.コンセプトに発展
Dチーム>泡盛コーディアル
(ターゲット:大人の女性/用途:試飲用ミニサイズ アイス掛けなど/価格500円)
黒川:人のどんな欲望にヒットしているのか?
A:酒が飲みたいが量はほしくない。置いていてかわいい。
黒川:私はいつも海ぶどうをおつまみとして買っていく。何故なら家飲みが増えていておつまみ需
要が高くなっている。あなたの生活を楽しくするというアプローチが欲しい。
Cチーム>「朝ちんすこう」
(ターゲット:忙しい(観光客含む)朝に食べるもの/特徴:滑らかなゼリーにして食べやすい/価格:250円/販路:空港・ホテルの自販機/用途:土産にして沖縄を思い出す)
黒川:自身では買ったことはないが、社員のお土産「ちんすこう」率は高い。
昔からの商品をリメイクするのはやりやすい。その方法としてデメリットをデメリットと取らず、多角的に考える。味は味として、一段美味しくするポイントをもう少し練っていくといい。
Eチーム>「わっさい瓶」
(ターゲット:沖縄に観光に来たが天候に恵まれなかった残念な客/用途:瓶に詰め込んだ悲しい思い出/特長:体にいい沖縄の塩をお土産話と一緒に友人に渡す/販路:バス会社・タクシー会社・観光カウンター・県外での沖縄観光紹介所/価格:900円)
黒川:家族を連れて2回沖縄に来たが1週間前から天気を調べているので、前半は共感がありました。私は「観光土産」は「お土産話と一緒に持ち帰るべき」と思っているので、後半は、引っ掛かりが少なかった。
私は沖縄に行ってきた人によく言うのは、「ルートビア飲んだ?」と聞く。ああいう会話になりそうな歴史があって、特別な味(飲むサロンパス感)的なフックを強めて欲しい。
坂口:私も「わっさい瓶」に何を詰めるのか?の具体化をもう少し練っていくといいストーリーになる。
Bチーム>南の島のポーポーinリゾートホテル
(ターゲット:ビジネスに忙しい30代女性/用途:部屋の中で自分だけで作るオリジナルポーポーサービス/特長:汚れてもいいように藍染の部屋着、スキンケア込/告知:動画で告知/販路:ホテルやツアーのオプション/価格:3万円)
黒川:数が出なそうなところがいいと思う。(賞味期限や食べやすさやどんどん便利にしすぎると逆に売れない)。売りやすさと正反対だが、コアな客向けに拡げていけるかもしれない。
坂口:これは評価軸では「体験価値」なので、いい商品に育てられると思う。
味の美味しさは基本的に抑えつつ、プロセスにコミットするというのは、これから増えてくるものだと思う。
Aチーム>「せっかく来た沖縄でけんかしてしまった時なのに愛す(アイス)」
(ターゲット:喧嘩をした観光客/用途:パピコのような二つ折りで沖縄の形を模す(味レベルは喧
嘩の度合いで決める)>喧嘩したカップルに対して笑いを誘う/販路:レンタカー会社限定/価
格:500円)
黒川:ご当地サイダーは広がっているが、割とまじめな果物味よりは、ワサビ味など想像しにくい味の方が売れている。長く沖縄にいる方と、短期だけいる人と感じ方が違うので、色々な人に聞いて欲しい。ユニークなアイデアより、徹底的にヒアリングしていく方が現実性が増す。皆さんもコンペに行くことが多いと思うが、中身より納得力の高いプレゼンの方が採用率が高い。その説得力は圧倒的なヒアリング力だと思っている。
坂口:商品の中身は面白いと思うし、アイスもいい。モノを売っていないレンタカーに販路を絞ったことがよい。
3.第3回研修 ワークショップのための情報収集
背 景 県外研修で向かう大分では、かぼすが消費量日本一で、かぼすの文化が根付いている。
沖縄にはシークワーサーがあるが、かぼすを知るといろんなアイデアが拡がると思う。大分でかぼすを参考に、シークワーサーのブランディングをしてもらいたい。
そのため前情報として、シークワーサーの6次化産業を手掛ける企業の方に説明を頂く。
◇情報提供者:Y‘sキッチン 代表 山城洸太朗氏
(紹介:勝山地区で曽祖父がシークワーサーを作っていたが、それを引き継ついで会社を興し6次化産業を行っている。)
製品:健康に効果のあるシークワーサージュース
理由:健康を売りにしているはずなのに、市場はお菓子系のものが多く、あまりシークワーサーの効果(健康成分)が活かされていない。
課題:需要は増えていると思うが、供給は高齢化によって(平均年齢70歳)あと10年持つかどうか
わからない。新規は1kg140円くらいなので、新しく就農される方がそれで仕事ができるとは思えない。>供給の安定と単価を上げていくことが課題。
商品加工については、健康を意識して作るには課題が多い。消費者がシークワーサーの効
果を知らないこと(糖尿や高血圧に聞くことは多少知られているが)や、農作物生産をする上で、発がん性が多い除草剤がたくさん使用されているのが現状で悩ましい。
自分は自然栽培を目標にして、自然のサイクルを活かした畑のデザインをしていく(パーマーカルチャー)を目指していく。>健康と自然環境を課題に取り組み本物の健康食品をつくりたい。
研修風景
コロナ感染防止徹底のため、3グループは間隔をあけて設置、2グループはそれぞれ別部屋を設定することでパネル越しでも会話がしやすくなった