第8回 プロデュース講座-研修会
■趣 旨:本事業は「デザイン思考」をビジネスに活用しつつ、県内ものづくり産業の発展に寄与するパートナーを育てていくことを趣旨としている。プロデュース事例の講話を聴き、「ものづくり企業のパートナーとは?」という軸を考える。
■講 師: セメントプロデュースデザイン 代表 金谷 勉氏
■ファシリテーター:野村総合研究所 坂口剛氏
■参加者:研修生 24名 (レクチャーのみ公開講座として、外部36名参加 計60名)
■日 時:令和3年11月13日(土) 13:00~18:00(公開講座は13時~14時)
■場 所:沖縄県産業支援センター 展示会場
■メンター:鈴木幹直、仲宗根真、山城豊、宮木健一、大城亮子、知念仁志
講師紹介
有限会社セメントプロデュースデザイン代表取締役社長/クリエイティブディレクター 金谷勉氏
「セメントプロデュースデザイン」を大阪にて設立。大阪、京都、東京を拠点に企業のグラフィックデザインやプロモーション、商品開発のプロデュースに携わる。2011年から全国各地の町工場や職人との協業プロジェクト「みんなの地域産業協業活動」を始め、600を超える工場や職人たちとの情報連携を進めている。職人達の技術を学び、伝える場「コトモノミチat TOKYO」を東京墨田区に、大阪本社に「コトモノミチat パークサイドストア」を自社店舗展開。
ファシリテーター紹介
株式会社野村総合研究所 プリンシパル 坂口剛
繊維産業や生活文化産業を中心に、省庁の政策立案支援や民間企業の事業開発、地域における創業支援などに従事。付加価値向上に繋がる事業やサービスの開発を専門とする。
1.プロデュース講座
本事業の紹介
本事業「沖縄型デザイン人材の育成プログラム」趣旨を、県内デザイナー・クリエイター、モノづくり企業へと広く波及するための取組として紹介する。
セメントプロデュースデザイン 金谷氏講座
■有限会社セメントプロデュースデザイン(CEMENT PRODUCE DESIGN)の紹介
大阪、東京、京都を拠点に商業施設やメーカーのGD、WEB、プロダクトデザインを手掛ける。600を超える企業の現場とマーケット感覚を持ったデザイン設計と、流通へ落とし込みための必要な考動を実施している。
■(この近年で感じること)業界の時計が早回りしてくる
百貨店の衰退やファッション業界の問題など、コロナ前から囁かれていたことが、コロナ禍になり業界の時計が早回りして課題が山積していると感じる。
■地域の企業と生き残るためにデザインは何ができるだろうか?
「見た目のいいものを作る」のがデザインではない。
「これまでの技術と素材と方法を見直して、考えて実行する」
事例:扇子を作る会社からの課題
① 課題はどこか? >a業界が狭いこと、b季節労働(季節商品)であること
② 解決企画案は?>自分たちが使っている素材の特性を見直してみる
扇骨の竹素材の持つ性質を生かした「アロマディフューザー」
③ 結果は?>売り場が変わった「和装業界→インテリア業界へ」
働き方が変わった「季節労働→年間通しての仕事を生み出す」
2.ヒアリング実施 ※ヒアリングの詳細は別途内部のみに公開
■相談に来られる会社は2パターン
Aパターン 現状が厳しいから何とかしてほしい!(下請け仕事が厳しい)
Bパターン この先をどう進むか考えて実行したい!(近い将来大丈夫か?次世代に引き
継げるか?)
この場合、私がクライアントへ問う2つの質問
「何のために「商品」をつくるのか?」>(1つ目は答えの大半が「売り上げ向上」)
「2つ目の理由は何ですか?」※同じ下町の工場でも、工芸の工房でも2つ目は違う
「これまでの技術と素材と方法を見直して、考えて実行する」
■「考動」への思い
製造流通が成り立ってこそ、デザイン業が成り立ってきた。
現在縮小傾向にある製造業を、商流設計も合わせてクリエイティブ側から解決していけないか、「製造業とデザイン業の持続可能」な需要創出も考えた、新たな関係作りを創り出す。
■CEMENT PRODUCE DESIGNの取り組んでいる事
デザイン事業:広告、WEB、プロダクト、パッケージ、映像制作、イラストレーション、ロゴ、空間演出
プロデュース事業:地域産業の商品開発、行政団体のプロデュース、企業コンサルティング、OEM/製造ディレクション、イベント交流プロデュースなど
これらをすべてサポートしてはじめて「デザイン」である
■CEMENT PRODUCE DESIGNの6つの考動
1.企業の成功のための「経営資源」づくり
2.モノづくりの「向こう側を伝える場」づくり
3.モノづくり事業者と手を組み「次へ繋ぐ道」づくり
4.生産者と購買者のつながりの場づくり
5.異業種間へ風を通して「新しい土壌」づくり
6.小さな企業の「事業継承への道」づくり
■CEMENT PRODUCE DESIGN ショップ案内
>2.モノづくりの「向こう側を伝える場」づくり
・製造業とクリエイティブ産業との次の形
「墨田区との連携拠点・コトモノミチ@東京」
・日本のものづくりを支える人たちをもっと前に
「大阪本社1階にコトモノミチ@パークサイドストア」
ショップで取り組んでいることは・・・
職人にモノづくりの現状や課題を語ってもらう/現場の職人の技を体験するWS、
開発商品を見せる/信用金庫と一緒に開発ゼミ(東京)
■なぜ、デザイン会社なのにものづくりを始めたか?
>3.モノづくり事業者と手を組み「次へ繋ぐ道」づくり
受注型の仕事で高下する状況の安定を図るために自社での収益仕事を考えた
↓
請負の仕事から自販への道
最初に作ったプロダクトは何もわからずに大苦戦「7つの苦戦」
・見合った工場を探す作業
・工場との意思疎通がうまくいかない
・製造するための資金が足りない
・売るためのパッケージの金型代がない
・商品の営業方法がわからない
・大手との取引口座の壁にぶつかる
・仕入れ売りで資金繰りに苦戦する
■地場産業の開発商材の普及や進行における課題
1.デザイン自体が今の市場と合わない
2.素材や風合いが今の市場と合わない
3.宣伝やPRが不足している
4.小規模事業者の適切な発表の機会や場が少ない
5.海外で製造されている製品の違いな無い
6.値段相応の価値があるのかわからない
クリエイティブの業界から解決できることが多い
サイドメニューで進めてきたことが本業となってきた。
■発信もサポート
蚊遣、マシュマロなど開発した事業者が全く動かなかったので、ひたすらSNSで呟いて販売を支援。毎日5、6投稿を上げて1万以上にフォロワーを増やした。しかし、バズると今度はコピー商品が大量にでて、終いには中国からコピーが押し寄せてくる。
「売れても、売れなくても、小さな会社のものづくりは大変」
■デザインが中小企業のものづくりを変えることを実感した取組み
事例紹介
メガネの産地鯖江(材料を海外から輸入してメガネメーカーに卸している企業)
課題:製造メーカーが新作を出さなくなった
↓
開発への課題は?
・メガネ業界以外への展開ができる商品は?
・新たな業界で仕事につながる商品は?
・既存の設備や技術でできる商品は?
↓
この会社の強みは?
・素材の国内輸入権利を所有
・鯖江がメガネ産地であることが周知されている
・普段から分業が多いため他社協業がしやすい
↓
既存設備は?
・現状の設備で加工可能であること
・生産しやすい形状であること
・素材量が少なくて、低価ですむこと
↓
「みみかき」に決定
・原価設定を考慮し、耳かき(4千円)
・メガネのテンプル部分とそこを強化する金属を利用した形
・著名な産地名である「鯖江の耳かき」としてネーミング
・パッケージ(売り方)で特許を取得
↓
発展形:・メガネのフロント部分の加工技術を転用(くつべら)
・製菓職人の技術×メガネの原型技術との掛けあわせ
・岐阜県関市の刃物技術×福井県鯖江市のメガネ技術の競合
この事業者はデザインをきっかけに5年で売り上げを12倍に伸ばした
■小さな会社や若手の初めてのものづくりをサポート
>4.生産者と購買者のつながりの場づくり
東京インターナショナルギフトショー内での定価の半額以下の出展費用で発表できる場所をプロデュース(企画やデザイン審査あり)
■産地イベントのプロデュースサポート
一石川県山中漆器のオープンファクトリー「around」の手伝い
ー京都の伝統工芸の展示販売会「DIALOGUE」の手伝い
■各地の作り手と異業種の出会いから「新しい商売」を
>5.異業種間へ風を通して「新しい土壌」づくり
異業種交流会「LOBBY」
全国各地の「意思のある人達」の「技術」や「素材」を地域間で交配させて業種や地域を超えて「次」を生み出していく
■日本各地での地元製造業者との自走のための商品開発プロジェクト
>6.小さな企業の「事業継承への道」づくり
―墨田区で金型切削の工場の技術を活かした協業
(香りを身に着けるアルミ製ピンズ「アルーマ」)
■各地で起きている課題
これまで各都道府県の産地で取り組まれてきた「製造業×デザイナー」の協業での課題
↓
デザイン開発されたけれど、生まれなかった商品、消えていった商品が多い
産地で消えていった商品
1企画を感じない
2流通を考えていない
3生産を考えていない
→とりあえず作ってしまったものは消えていく
→デザインだけでは解決していない
→機械を動かす、職人は手を動かす、そればかり考えがち
とりあえずモノをつくってしまう(右能だけのアクションで進んだだけ)
→形の美しさやデザインのバランスだけ整っていても、「事業者の与件要素」を解決しているわけではない
職人とデザイナーは同じ職種属性→新市場への橋渡しが難しいケースがある
■CEMENT PRODUCE DESIGN が考える開発の考え方
コト 意匠設計 → クリエイティブコントロール
モノ 製造設計 → コストコントロール
ミチ 販路設計 → ストックコントロール
■何のために商品開発するのかを考える
自社技術 → 自販商品 → 目標市場 → 認知訴求 →自社技術・・繰り返し
(デザイン) (確保) (マーケティング) (価値創出)
■各地で感じたデザイン業への課題
デザイン料、プロデュース、コンサルの信頼度の低さ
→「依頼者側の見えない不安感」
→見えないものへの経費の不安観念を変えていく
→「伝え方」と「仕事の進め方」の見直し
■デザイン業としてのこれからの在り方見直し
これまで自社で培った、流通を見据えた形での開発のリソースから
中小企業向けの協業開発プログラムを提供することに
■中小企業向けの協業開発伴走プログラム(直接契約伴走型での商品開発の場合)
分析と開発の38ステップ
前半(自社分析と企画開発)・後半(商品開発)
これまで知られることのなかった下請け企業の《顔》をつくる
・最初にロードマップを見せて、一緒に走っていく
・自社の設備・技術・素材から強みを探す⇒自分たちの技術の可能性を探る
・自社企画の行先を見つける
・自社で考えて走り出す
・自社商品で変わること
※「状況」が変われば、売上以外でも、内部外部の「視座」が変わってくる
悩ましいのは、予算確保が難しい小さな企業からの相談
所産確保が難しい企業へ、地方の信用金庫や行政と一緒に「開発ゼミを」を実施する
■私たちがやること
調べて、見つけて、旗を立てる
■ものづくりの企業の皆さまへ
デザイナーに「どういうデザインが必要なのか?」をきちんと伝えず頼んでしまった。
・自社の有形と無形の資産の洗い出し
・要素を確認して、できるかぎり減らす作業(競合調査など)
・自分の今の居場所と行きたい場所を決める
・SWOT>S・Oのみ考えてもらう(40行以上・具体的に)
・素材・技術を徹底的に調べる
・自分のやっていきたい方向やイメージを共有する
(ターゲット、展開したい店舗、展開したいパッケージ)
・展開したいパッケージ、見せ方、適したバイヤーが来る展示会に出展
(展示会は、売りたいものだけしっかり見せて、3日間で勝負する)
伴走から販売の展開として、自社で考えて動き始めている
雇用も変わり始める、自社での情報設計も活発に
■一番必要な要素は?
※参照「地場産業・伝統的工芸品産業のマーケティングfsQCAを用いた分析を通じて―」
これまで関わった事業者をリスト化し、どういう要素を満たしている業者が結果を出しているのかを調べた。
結果:まずは、「熱意」と「企画」の程度が決め手に
2つ目は「熱意」と「技術」の程度が決め手に
では、どんな「企画」だったら良いのか?
・開発の位置づけとポジション取り(点が強い商品?線が長い商品?面が大きい商品?)
何のために商品を作るのか?
・自社の様々な状況で判断は変わる
(生活を安定にする段階?⇒先に繋げる挑戦する段階?⇒技術を次へ継承する段階?)
・その商品の役割とは? ⇒その会社にとって商品に「託したい」こと
・商品設計だけでなく「見せ方」や「伝え方」など、要素の設計も必要に
「考えないままデザイナーに渡さない」
「届ける先を見据えたものづくりを」
「何のためにつくるのかを、一度考えてみる必要がある」
※腹落ちしないまま進めると、クライアントは考えないままの状態で進んでいく
■地域に生きる中小企業と生き残るために
1.工場や職人が自主的に進めていけるよう、開発のための必要作業をタスクシェアしていき、離れていても自分自身で自社分析をして、マーケットのリサーチを行い
商品開発を進めることができるノウハウを蓄積させる
つまり、「自走できる状態を目指す」
2.各地のやる気のある事業者さん同士を開発ゼミなどで積極的に交流させていくことで、それぞれの技術や強みや特徴を更に共有しあい、異業種間の協業や商売がもっと生まれやすい土壌へ
つまり、「製造業者を孤立させないこと」
3.各地の金機関や地元人材の交流や連携も深めて、地域のリソースを開発と販路設計へ活かし、各地で不足しているプロデュース人材を各地の金融機関をはじめとした地域の若手人材から生み出せる仕組みを考えたい
つまり「地域を強くしていく土壌づくりが必要」
■商品開発の伴走プログラムで大事にしていること
自分たちが体験し、実感し、実践してきた
温度のある「生きた言葉」で進めること
2.質疑応答
Q:どのくらいのスケジュール感で、商品を仕立てているのか?
A:食品は見立てを立てやすいので比較的速い
製品については、6か月(耳かき)~2年(ステンレス)程度
(その間、6か月は分析・企画は6か月、その後に製品開発が始まる)
その期間を縮めるやめにゼミを始めた(6回で仕上げまで縮めることを目指す)
Q:依頼主に本気になってもらうコツは?
A:①SWOT分析でSOしかやらない
②アイデア出しが引っかかるので、出し方を伝えてアイデア100本ノックをやる
(百貨店を見に行くなどのヒントを出す。趣味を持っている人が社内にいるとやり易い)
Q:企画から販売までの38工程は、自ら作り出したのか?中小企業診断士なのか?
A:社員をつかまえて、一人壁打ちをしながら工程を作っていった。これをやることで、社内のコンサル人材を育てることができた。自分のやったことを次の世代に繋げていくことはとても大切。
Q:金谷さんのように伴走できる人になるには?私も弟子になれるのか?
A:自分で作って売っていったので、それがロールプレイングになった。(「せがれインターン」というのをやっていて、2代目を預かって育てている。ただ、全国を走り回るので交通費がすごく掛かることを承知してもらっている)
Q:「熱意」と「企画」の具体例は?=リスクテイクとマインドセット
A:「熱意」は次の順で調べた。①借金してでもやりたいか?②自前予算をかけてでもやる、③補助金でやりたい・・・※地場産業伝統工芸品産業マーケティング参照
「企画」は、アイデアを出すのが難しいと思う。例えば、知ってる単位(タピオカよりおはぎ・・・など)の掛け算をどんどん繰り返すような方法がやりやすい。
Q:物流と商流を強みとして見立てた事例はあるか?
A:岡山にユニフォームメーカーがジャケットとパンツの提案を持ってきたが、それは意味がないと話した。これまで自分が挑んでこなかったことに取り組むべき。
ユニクロがユニフォームを1年で撤退した理由は、日本各地にユニフォーム企業があり昭和営業を行っている。コクヨも直営店舗を一軒も作っていないのは、昭和営業が壁になっている。このような仕事をしている会社がまだ存在する。
Q:SNS と伝達経路
A:3つ(facebook、Instagram、Twitter)
通販が一番やりやすい。どれが相性があるかは分かりにくい。
どういう投稿が感情トリガーを揺さぶっているかを調べながら投稿している。
Q:金谷さんが沖縄で興味があることは?
A:工芸だけでも17種類あるのがすごい。外の人を受け入れる土壌は少ないと思われるが、真水だとよどみが生まれない。よどみがないのは問題。「よどみ」は大阪の淀川からの言葉。淀川は3本が1本になっている。その重なるところが淀であり、力強さの象徴。
他流試合が少ないと強みは生まれないと思う。
3研修生から金谷さんへの質問(補足) Q:研修生質問 A:金谷氏回答
Q:沖縄の工芸を一般の県民に周知をするために金谷さんなら何をするか?
A:工芸を知らない方はまだまだたくさんいる。例えば、私は漆の樹液が入ったアクリルのペーパーウエイトを持っているが、漆の樹液を見たことがある人は少ない。金継ぎとか入りやすい入り口も大切。スタバとコラボしていることをツイッターで上げると何度もバズる。甲州印伝のサポートをした時に、消費者から「欲しいものがない」と言われることがあったが、そのこと自体を作り手が知らないのは問題だと思う。工芸の作り手に聞くのも、逆に一般の人に聞くのもよいと思う。お互いが知り合わないといけない。私も飾り金具なら買わないが、その技術を使った名刺ケースなら買う。270年前の金閣寺の柱で作った名刺ケースなら1万7千円でも安い。今の工芸も30代~40代の人たちが欲しくなるものはまだまだある。
坂口:金谷さんの講演でもあった設備、素材、業界、伝え方の4つの視点を変えることが重要。
Q:アイデアの発想方法、源泉は何があるか?
A:情報は「タテ」ではなく「ヨコ」によむ。
日経MJを読むこともその1つ。データから読み解いて商品を作る方法もある。
新商品を作らなくても工芸の作り手が潤う方法もあると思う。
他のブランドとつながることを工芸はあまりやっていないので、意識の高い企業さんとコラボしてもらう方法もあると思う。
坂口:いろいろな業界の人とも積極的に連携し、あらたなアイデアを生みだすことも大切。業界の事例を徹底的にベンチマークすることよりも、他分野、他業界にヒントを求め、それを自社の業界にアレンジすることも有効。
Q:御社のデザイナーとコンサルタントの受注割合や、仕事の範囲は?
A:デザインの仕事が多いが、徐々にコンサルの事案が増えてきている。価格も3万からスタートし、今は70万、来年以降はもっと価格を上げる。私たちも自分たちのお店の分析(競合分析とマッピング)をさせている。これからはAIが進んでいくので、デザインの仕事の思考関係を変えることを目的としている。5年ごとに会社の棚卸をして、この方向でいいのか検討している。
Q:仕事の切り替えをどうやっているのか?
A:仕事をすべてデータ化して、全社員が見られるようにしている。データでできる整理は、すべてデータ化している。アイデアの整理は、PCのフォルダの中にストックしている。
触感や雰囲気はデータや写真では伝わらないので、それをどうストックするかも考えている。
Q:店舗の話はあまりなかったのですが、大切にしている事を教えてほしい。
A:大阪にはVMDのディレクターもやっていたスタッフがいるので、そこに任せている。
お客は右回りで廻るとか、展示会では腰上はどのような情報を入れるか、下は何を入れるかなどを考えている。社員の中でも共有指数を増やすようにしている。
TUTAYA書店が「売れている100の商品」の中に工芸は入っていない、殆ど食品だけ。
食品と工芸を組み合わせると売れると思う。
Q:分析に何か月か掛かっていると聞いたが、データの収集をどうやっているのか?
A:売上分析、技術分析など、この会社が持っている領域を知り、その領域に合わせて技術を駆使した商品開発を行う。
Q:たくさんの事業者と組んでいるが、気を付けている点、織物・布物を扱った事例があれば聞かせてほしい。機械織と手織りの差別化も課題だと思う。
A:京友禅と組んで組み立てた時、作り手に販売の現場に行ってもらった。テレビ取材が毎年来ているのに、TVクルーが買いたいものがないのは残念。革に友禅を染めたら、布に染めるより原価が下がったなど、開発すべきことはたくさんある。機械と手描きの違いについては、京友禅は手書きからインクジェットまで全て京友禅と呼んでいる。加賀友禅は工程をすべて開示しているので、インクジェットは友禅分野にも入っていない。
Q:相手の会社との方向性を合わせていくコツ。低予算、短期間での製品開発についてアドバイスをお願いします。
A:皆さんがどのくらい健康に配したものづくりをしたくても、トレハロースとショートニングを入れないと駅では売れない。しかし、その健康に気を付けた商品を買うのは駅ではない。ビジネスモデルで契約するということもあるので、それはロイヤリティで支払ってもらうこともある。以前、プレゼン後に10ページの提案を1ページだけ買いたいというクライアントがいた。私は、「私がシャンパンを1本、栓を抜いて口を付けたものを、あなたは飲みますか?」と説得して費用をもらった。
4.ワークショップ ①現状課題、②今後の方針、③悩んでいるところ
【南都物産】
① 競合調査済、お土産の参考を調査中、ドライフルーツ入りちんすこうはどこも出していないので良いと思う。生産量が自社課題なので、コラボなどで話題性を高める。
② アイデア出しをブラッシュアップしながら、健康系と素材系に分けて検討している。
販路としてBtoB、健康系、引き出物、社会貢献、面白系
(金谷アドバイス)せっかくなので沖縄ならではのイベントに絡めていくのもいい。(人が集まる数が多いところと掛け合わせる)機会はとても大切なので、その掛け算も面白い。
大きい企業が面倒でやらないことをやるのも商機だと思う。また、個数と売り方もある(最近もみじ饅頭が2個売りになっている)
【ファッションキャンディ】
① 20年余りの会社の歴史から、多岐に手を広げすぎている。何をどこに売りたいのか?がわからない。
② 会社からヒアリングをして、こちらで整理して提案に繋げたい。
(金谷アドバイス)ロードマップのようなものがない/社長以外にも何人か聞き取った方が良い/マッピングを全員の前で作るのもよいと思う。ただ、社風もあるので、セッションの前にどういう会社なのかを調べてどう取り込んでいくかを考えた方が良い。社員が言えないことをいうことも伴走していく意味になる/下請け企業は待ちの体制が多いので、一緒に考えてもらうこと/物理的に無理なことはやらないという選択肢もあり
(坂口アドバイス)2軸で切って4象限を提示し、相手に選んでもらうこともいいと思う。
【南風堂(チーム機械織)】
① ぐすく織は全くネットでヒットしない(認知がない)。良さが伝わっていない。情報発信がちぐはぐ。
② ヒアリングが必要(何ができるか?)/認知度を上げる為にSNS活用を考える/伝統織物との差別化
(金谷アドバイス)伝統織物との差別化が必要なのか?/西陣が機械織なので、参考にするとよい/アパレル以外も市場としてある/素材で売る方法もある/商店建築を参考に建材で使用できるか検討する(巻末にリストがあるので競合調査に約経つ)/100本ノックすることも大切/アパレルなら、エイジレス、ジェンダーレス、サイズレスを進めた方が良い。用尺を多くしたものを作らないと在庫は減らないと思う。
(坂口アドバイス)在庫がどの程度あり、在庫総量でどの程度の価値があるのか数字をはじいた方が良い。資産価値を可視化した上で、毎年どの程度のボリュームで製品開発をするのかを検討すべきではないか。財務の観点からも重要。
【物産公社(わしたのした)】
① 来週東京にいって現地を見てくる
・沖縄でやれること。どういう視点で見てこればよいかを教えてほしい。
(金谷アドバイス)商品売り上げ全データを見れるなら、その配列をいじっていく/酒と本を下に持っていく/銀座で歩いて疲れている人を座らせるなど。
(坂口アドバイス)商品毎の坪効率を調べる/売れている製品をオンラインで繋いで、ロイヤルカスタマーづくりもあり/購買額に応じて、お金で買えないインセンティブを作ってあげると、それを狙って買い物に行くということも考えられる。名刺などはマーケティングツールとなる。名刺データを渡すと勝手に印刷して拡がっていく。
【工芸の杜】
① 県の事業の資料を調査(一般来場者のアンケートがない)
② 一般来場者のアンケートを取る。工芸×〇〇(コラボ)が良いと思う。
・どういうアンケートにするとアイデアを引き出しやすいか?
・メーカーとコラボをする方法を教えてほしい?
(金谷アドバイス)まず、全国の工芸産地(各地の工芸クラフト館イベント)をリサーチすること。京都、石川は必須/組合がやっている館も多いので、それらを細かくリサーチする/工芸事業者のトップチーム作りを作っておいた方がよい/京都には「GoOn」というチームがある/実際に活動している人々の話を聞くことも大切/それに企業が金を出してくれるように/「MOCAD(京都)」も見てほしい。
今手元に資料がないので、やりやすいところに落ち着いたりする危険性がある/工芸系は全国にあるが、上手にやっているところと、下手なところの差が大きい/工芸展をやってバイヤーを呼ぶ(沖縄なので土日遊ばせたらバイヤーも来ると思う)
(坂口アドバイス)県としてどのようなKPIを設定しているのか、事前に把握しておいた方が良いだろう。そのうえで、このイベントで設定したKPIにどれだけ貢献できるのかを明示したほうが良いだろう。(何人入館させるのか?何を新しく創出するのか?目標値に対してこのイベントが適するのか?)
5.クロージング(坂口氏)
発想の拡げ方は現在だけをみるのではなく、未来をどう読むのか?
6.研修風景