第5回 デザイン比較→発展
■趣 旨:訪問する「おおいたクリエイティブ実践カレッジ」では、クリエイティブの本質を理解し、企業(商品・サービス)のブランディング、プロデュースの手法などを実践。企業が実際に抱える課題の解決方法や新たな商品の企画などの取組事例を学び、沖縄での今後の活動に活かす。
■講 師:BarbaraPool 廣部慧氏 ■ファシリテーター:野村総合研究所 坂口剛
■参加者:研修生 24名(1名は家族の都合により不参加)
■日 時:令和3年10月17日(日) 9:00~20:00
■場 所:アートホテル大分
■メンター:鈴木幹直、大城英樹、山城豊、大城亮子、知念仁志
講師紹介
株式会社BarbaraPool CDO 廣部 慧
滋賀県出身。中央大学法学部卒業。大手広告代理店にて、大手電機メーカー営業マーケティングに従事。地域創生に関心を持ち、有田焼を中心とした伝統工芸品支援を始め、地域に事業を興し、地元にお金が落ちる仕組みづくり、古民家再生事業、6次産業化商品開発、中小企業へのコンサル等を行い、2016年よりBarbaraPoolへ参画。現在へ至る。
1.大分デザインフィールドワーク(気づきのシェアを含む)
フィールドワークの目的
大分市内で、
①地元の特長のある素材を商品化する
②建物をリノベーションして活性化を目指す
③街の美化やアート化など沖縄にない取り組みが発見できる。
上記により視点・視覚・視座を変えて気づきを増やしてほしい。
■坂口氏まとめ
数字は見るだけでなく、数字を見て出てきた結果を読んでほしい。今後も数字の活用方法をぜひ検討して頂きたい。地域で生産量の高い商品を大都市に販売するのではなく、統計から明らかになった「普段から消費されている地域」にピンポイントで販売するという方法も考えられる。逆に、沖縄で消費されていない商品に着目し、その商品を生産している地域が沖縄に進出する支援を行うことも考えられる。
気づきのシェア(研修生の意見交換+講師・ファシリテーターアドバイス)
■沖縄にはパブリックアートが少ない。老若男女が楽しめるアートを取り入れていきたい
■:(大分きゃんバス) バス停も趣がある。バスのラッピングだけでなく、カーテンや板張りの床、つり革、看板など徹底具合がすばらしい。
■:街にゴミがないのに驚いた。
アドバイス:2005年にギネスの認定を受けているもよう。(1日ゴミ拾い参加者14万人)観光立件沖縄でもできるだろうか?
■:商店街の入り口に「西洋音楽の礎の人」の看板があった。ストリートピアノなどを置いておくとイベントにも使えると思った。
アドバイス:大分県立芸術短大もあり、地域との連携により、街に音楽を取り込んでいる点も興味深い。
■:シーサーのように瓦の上に載っているシンボルがある。
動きや躍動感があるともっと目を引く(図4)
■:大分が出身地だが、30年たってすごくきれいになっていた。老舗のお菓子屋さんが「完熟かぼす」を使っていた。「かぼす」と言えば緑色だが、完熟の黄色がポスターに使われている。
アドバイス:「完熟」や「生」などの季節の一部だけを切り取る方法も手法
の一つになりうるだろう。
■:「かぼすのオリーブオイル」は缶だった(図5)
(普通は瓶で中身が見える)
■:大分ではハンバーガーの種類が3つしかなく、選べないと思った。
沖縄県ではたくさんの種類があるのが県民性だと思った。
■:通常のたわしでもブランディングされている。話を聞いてみると、いろいろな工夫があることを知った。
■:竹細工がガラスケースに入っていて、美術品として鑑賞することができる。沖縄も金細工などがあるがあまり観賞用としてみたことがない。見方を変えることが必要。(図6)
■:「どんこ」がひと箱1万円という高額商品があった。(図7)
1個づつ個包装されている「どんこ」は、消費者にクオリティを目で見せて示せる工夫を感じた。
■:大分県の美術館は、立地もよく座るスペースがたくあった。高齢のご夫婦が何組もいらっしゃっており昨日の「家計支出」の数値から読み取れるように生活の余裕を感じた。
■:美術館は沖縄だと展示を目的に行くが、ここでは景色や空間を楽しむために来たいと思わせる。
■パッケージの見せ方で、「三線の音色と私」のようにいろいろな見せ方がある(図8)
■:駅の内装(天井)を見ると、結構こだわっており、その世界観のイメージが伝わる。沖縄ではモノレールの駅は同じつくりなので、首里なら首里城を意識した駅があってほしい。(図9)
■:大分駅の子供向け汽車は、しっかり作られており作ったデザイナーや業者の方の名前が車体に書かれているのも素敵だと思った。
アドバイス:公共性の高いものに、製作者の名前が入ることの意義は有効と考えられる。(図10)
■:自転車道路のデザインが良かった。
アドバイス:自転車の活動イベントも実績もたくさんある。
■:「かぼす」は皮を乾燥させてお茶にしている。沖縄のシークワーサーだとジュースしかないので参考にしたい。
■:大田旗店は、旗のリサイクルで1点もののバッグを売っており、アップサイクルの活動はいいと思った。
■:昨日のレクチャーで大分ではキャンディの消費量が上位だった。沖縄では端の方に少しあるだけだが、明らかに県民性の違いを感じた。(図11)
■:「ドーナツ棒」もかぼすなんだと思った。
「かぼす」は一村一品運動のように展開が多いと思った
■:藍で金属を染めた商品が、沖縄にはなく素晴らしい。(図12)
■:町中にパブリックアートがあふれていて、五番街では電圧器にシートでアートが貼られていて、シートなら季節によっても変えられるし、楽しめるように工夫しているのが、楽しかった。(図13)
■:フルーツピクルスは酢漬けというより、魅力的。
■:南口で迷ったら、駅ビルの中まで一緒についてきてくれて、且つ大分の特長を説明までしてくれた。
■:彫刻は多いが、グラフティは少なく、ストリートのようなものは少ない。やんちゃなお兄ちゃんも、のら猫もいなくて、犬まで品が良くてちょっと怖かった。
■:お昼にラーメンを食べたが、そこにも「かぼす」がふんだんに使われており、地元愛の深さを感じた。
アドバイス:一緒に行動すると同じものを見るが、仲間とそれぞれが写真を撮りあって、後ほど共有することで気づきが生まれる。このような方法も使ってください。
2.ワークショップ
(お題)シークワーサーの県内での消費を高めるための活動を提案してください。
※フィールドワークやチームサポーターの「かぼすトーク」を参考にしながら検討してください。
トーク:かぼすと私
「おおいたクリエイティブ実践カレッジ」プロデューサーの廣部氏
元「おおいたクリエイティブ実践カレッジ」メンバーの天利氏、今長氏、今崎氏、越田氏にご参加いただき、それぞれにご自身が感じる大分県の“かぼす”の印象、扱い方、出会いなどを語ってもらった。歴史も長く、県の普及運動もあり、同時に大分のメンバーは小さな頃から日常的に親しみの深い食材であるため、逆にあらためて“かぼす”との関わりについて考える機会は少ないとのこと。楽しくも“かぼす”への愛情に満ちたトークが繰り広げられた。※詳細は省略
(お題)シークワーサーの県内消費倍増
●提案する活動
・キャンペーン、イベントなど
●提案先:内閣府 または沖縄県庁(公的機関)
●提案の内容
・メインメッセージ/キャッチコピー
・活動で現状をどのように変えたいのか
・訴求対象・内容・訴求方法・体制(パートナーを含む)
2.ワークショップ
Aグループ
① テーマ :ヘルシークワ―サーダイエット(シークワーサージュースの提案)
② メッセージ:メタボ全国1位の沖縄県民をシークワーサーで健康にする。
③ 変えたい事:1日50ml飲む+歩く=痩せる
④ ターゲット:子育てが落ち着いた男性、40代の女性
⑤ 告 知:店頭にポップ、TVCM、新聞など
⑥ ザ・太った沖縄のおじさんがライザップのように痩せる
⑦ 活 動:シーダイエットプログラムとして、シークワーサーのポーションをプレゼント、
⑧ 促進方法:SNSで生産者とつながり、直接生産者と一緒に販売する
※応援コメント(廣部):健康習慣が失われて久しい沖縄で、新しいライフスタイルの提案。シークワーサーのジュースを水に入れているという。クエン酸軸で組み立てた中では、素晴らしい内容でした。
〈質疑応答〉
Q:50ml以上飲んでいるが痩せない私はどうしたらよいか?
A:飲んでも動かないと痩せません
Q:達成できた際のインセンティブがあるのか?
A:成果が報告できるアプリが開発できればいいという意見があった
コメント(坂口):何回買うかが課題なので、成果を可視化できるといい。配るものから買うものに変えられるといいだろう。
コメント(廣部):衛生管理の問題があるが、ポーションであれば課題解決できる。
Cグループ
① メッセージ:シー(酢)クワーサー(食わせる)・県民の食卓の定番に!!
② シチュエーション:居酒屋でもらったり、他人から貰うことはあるが、買うまではいかない
③ ターゲット :共働きの30代~40代のお母さんにスーパーで配る
(子供が家庭で食べた記憶を育ててもらう)
④ キャンペーン :SNSで拡げていき、多く広げられた方にはタクシー代や家事代行
⑤ 補 足 :面倒臭いと思っている方々には自動絞機で解決できる
※応援コメント(今長):対象が使っている人なのか?使っていない人が対象なのか?が大切なの
で、その課題解決案をたくさん出してもらった。いいレシピは表彰してもらうと自然に拡がる。
コメント(廣部):30~40代の女性を対象として次世代に繋げるのは地方創生として大切だと思った。
自動絞り機は、シークワーサー専用なのか?もし果実がない場合はどうするのか?
A:成果の旬の時期を味わってもらいたいという気持ちがこのキャンペーンの軸
コメント(坂口):シークワーサー本体ではなく、絞ることに主眼をおいているで、その面白さを明確に
伝えられたら。
Dグループ
① テーマ :シークワーサーの素材とイメージの変革による県内消費増加事業
② キャッチ:初めてのシークワーサー
③ モノの課題:農家の高齢化により担い手の減少、枯病に掛かり減産が激しい、種が多い
>解決案 大宜味村や農業試験場とコラボをして品種改良の補助金を得て、事業終了
後は大宜味村が自主的に継続する
④ 人の課題 :苦い、食べにくいという幼少期の印象がある
>解決案 イメージを払拭するために、完熟された果実を給食で出して印象を変える
※応援コメント(今崎):大人になってコーヒーが飲めるようになるように、小学生の時に甘い果実
を食べて喜ぶと、親も買いたくなってくる。シークワーサーの缶詰を作ってみると甘い印象が残
るのではないか。
コメント(坂口):消費だけでなく、生産に着目したことがよかった。就農を促進するのは難しい点も多いが、企業が抱える健康経営や働き方改革の流れを汲み、摘み取りなどを手伝ってもらうことも考えられる。
地方の生産上の課題と都会の企業の課題を掛け合わせることも解決案になる。
Bグループ
① メッセージ:「シークワーサーが未来を救う」
② 手 法:小さな市場からスタートして育てるために、絞った業界を想定した。
③ ターゲット:体調が不調な人(入院している人を含める)、メタボ予備軍など
④ 活 動:「病院食をおいしく味変」
マイシークワーサーボトル、スプレータイプなど業務用もあり
本だしとシークワーサーを合わせた顆粒を製造
⑤ イベント:健康イベントを実施>病院、宅配、・・・「シークワーサーでまーさんイベント」
「シークワーサーレシピコンテスト」
⑥ フレーズ:オイシークワーサー、ヘル(減る)シークワーサー
⑦ 盛り上げ方:キャラクターを作って、美味しく楽しく盛り上がろう
※応援コメント(天利):メンバーが生活習慣病に近い人たちが多かったので、アイデアは止まらなかった。3つの味(アオギリ、完熟など)を食べてもらえるように楽しいイベントに仕上げた。
コメント(坂口):病院という小さいマーケットから始めるのはよい。結果をもって次の提案(介護施設など)へ拡げていくのが確実性があってよい。
Eグループ
① コピー :「月火シークワーサー土日」
② メッセージ:毎食シークワーサーを。
③ ターゲット:お弁当を買う人に対してアプローチ、コンビニ、スーパー、弁当屋
④ 告 知:果汁を個包装にしたものをスーパーで配る(レシピ動画なども配信)
⑤ 活 動:イベント用に容器をシークワーサーの果実風にして、木からもいでもらうようにする
⑥ 結 果:シークワーサーをかける文化が拡がっていったら、自然と需要が拡がる。
※応援コメント(越田):かぼすを参考にしてもらい、個包装なので自分で好きな食べ方を発見してもらう。日常の中にハードルの低い方法で刷り込ませていく
コメント(坂口):ゴールを先に設定してしまい、納豆の会社と一緒にタイアップしてキャンペーン化していく方法もある
まとめ(廣部):おおいたクリエイティブ実践カレッジ」沖縄では沖縄のクリエイターの窓口はあると思
うので、コラボをしたり、動きが生まれることを期待する。大分にもまだまだ課題があって発展形ですが、少し参考になるものがあれば持って帰ってほしい。今後は大分からも沖縄に向かい、逆に成長した沖縄のメンバーから学ぶものがあるといいと思う。
5.まとめ
今日なぜこのお題「かぼすとシークワーサー」を設定したか?
“想いとインセンティブ そのバランス”を考えてほしい。
インセンティブ(商品)だけでは成立しないために、公共性(想いがあるもの)が生み出される。
公益性があるものには、この“想いとインセンティブ”が成り立つ。
クラウドファンディングは公益性が必須だが、最近はおかしくなっている。チキンレースみたいな
様相を呈しているが、それは本来の姿ではない。
6.クロージング
今日の気づきを1メッセージにまとめてください。
Aグループ
あきらめなくてよかったと感動した/大分でのフォールドワークを沖縄でもやりたい/大分の良さを探すうちに
東京や海外だけでなく、足元の沖縄にある/自分もシークワーサーの販売経験したが、0から提案することが新鮮
/人に会う、外に出ることはとても大切
Bグループ
モノ自体に興味を持つことの大切さ/胸を張って沖縄のクリエイティブを創る
/0→1の面白さ楽しさ/一人だと浮かばないがチームだと形になる/身近な人から違う話が聞けた
Cグループ
チームだと短時間でもできることが多い/既に3つくらい仕事に提案したいものが生まれた/
生で体感できることが幸せ/当たり前に慣れずに視点を変えて再発見/
自分の生活範囲内ではでてこない生の経験
Dグループ
沖縄は外から見ると発見がある/写真に撮る前提で視察をすると見方が変わる/多角的な考
えを手に入れるためにいろいろな人を巻き込みたい/沖縄から出るだけで気づきが生まれる/
立場によってみる視点が異なる
Eグループ
かぼす文化のようになりたい/この研修を行動に変えます/食べさせない選択もある/プレゼ
ンに慣れたい/触れるタイミングが大切
大分サポーターチーム
・天利:この研修の横のつながりを大切にすると将来お金になって戻ってくる。
・今長:皆さんが積極的なのが新鮮で、広い視野でみることの大切を思い出した。
・越田:「かぼす」の認識をあらためて考える機会をもらって嬉しかった。
・森:大分県人が「かぼす」に洗脳されているのを知った。
(坂口)
自分のアイデアを並行ではなく、垂直に積み上げていく(ブラッシュアップしていく)ためには、アイデアを外に出して対話していくしかない。
「継続は力なり」の意味は、楽しくやること。周りも一緒に成長すること。
今日は楽しく、そして全員で成長していけたので、これを継続していくと着実に皆さんの力になる。
研修風景