第2回 マーケティング研修
■趣 旨:沖縄ものづくり産業の課題解決を図るツールとして、実践的なマーケティング技
法を習得し、日常での活用へ導く。
■講 師:野村総合研究所 坂口剛 ■参加者:研修生 25名
■日 時:令和3年9月18日(土) 13:00~18:00
■場 所:専修学校インターナショナルデザインアカデミー ※講師とはオンライン接続
■メンター:鈴木幹直、大城英樹、仲宗根真、山城豊、大城亮子、知念仁志
講師紹介
株式会社野村総合研究所 プリンシパル 坂口剛
繊維産業や生活文化産業を中心に、省庁の政策立案支援や民間企業の事業開発、地域における創業支援などに従事。付加価値向上に繋がる事業やサービスの開発を専門とする。
■講師 自己紹介
私の仕事に共通すること
・クレイジーであるか?=「消費者の驚きを生みだせるか?」
・右手にロマン、左手にそろばん=「企業として投資に値するものなのか?」
・チーム力の強化=「一人ではできないことをチームとして高め、広めていく」
■レジリエンスを発揮するポイント
① 主体性 自らリスクを取り、楽しく、チャレンジできるか?
② 創造性 商品・サービスの価値はコンセプトまで決まるが、一般的に生産時や販売時
にお金や人が投入されるのはなぜか?
>理由:生産や販売は方法論がたくさんあるから。しかし、定型化された仕
事や創造性を持たない仕事は淘汰される。他者と協調し創造していく仕事
は付加価値を生む(コンセプトの仕事など)ため、残っていく。
③ 機能補完 ひとりでは何も完遂できない>チームになる。
+ ④ 圧倒的なスピード感
今回の研修において
・ものづくり人材及び支援者(左脳型)の方は、周囲にいる右脳型の行動特性や思考構造を理解して、チームとして活動できるようにする。つまり、クリエイターの考え・機能役割を理解し、クリエイターと連携し、商品・サービスの付加価値を一緒に高めていく存在になる。
・クリエイター・クリエイター(右脳型)の方は、クリエイターとしてのパフォーマンスを高めていくことを前提に、仕事の声が掛かるのを待つのではなく、仕掛け型の提案営業ができるプロデューサーになれるようにする。
・つまり、クライアントと同じ目線で話すことができ、企業、社会の課題を総合的に整理でき、これまでにない新しい切り口から、新しい事業を創造できる存在になれるようにする。
2-②. レクチャー【マーケティング】
■スキル①:二軸の切り方・可視化
メリット:1.シンプルな枠組み
2.ナレッジが不要(考え抜く)
3.議論しやすい/説明しやすい(企業担当者、メンバーがいる)
※徹底的に二軸で整理することで付加価値の構築ができる。
2-③.ワークショップ
課題:「二軸で価値を創る」
■説明:下記のお題に沿って、皆さんの二軸を設定してください。
(お題)皆さんは、振興スーパーマーケットのオーナー社長です。
沖縄県内に初出店し、どのように戦うか、検討が必要です。
県内スーパーとどのように差別化を図りますか?
順 番
1. 県内スーパーマーケットのポジションの可視化を目的とします。
2. 軸を設定してください。
3. 県内の代表的なスーパーマーケットを落し込んでください。
4. 軸内に自分のスーパーマーケットをプロットしてください。
5. 自分のスーパーマーケットは、どこで(何を強みに)勝負しますか?
(時間があれば)勝負の仕方まで考えて下さい。
■発 表
Eグループ発表
縦軸:サービス(お客様にとってのメリット)/横軸:独自商品(こだわり)
●沖縄版コストコ目指す。サービスは手厚くなくても、オリジナル商品を揃えた方が県内で勝負ができる。
Q:面白い二軸だが他にも考えたか?
A:最初はオーガニックなど独自志向を詰めていたが、正確性(オーガニックの定義など)が弱い。サービスも宅配などもあったが、お客様にとっての(ダイレクトな)メリットを絞った。
Aグループ発表
縦軸:価格/横軸:独自商品(こだわり)
●方向性は2つ、①独自性がなく価格が低い(消費期限切れ商品を集めた)、②「ハッピーモア」のように農協に卸さず無農薬野菜を集めているものをモデルとして、「肉の専門」で生産者を表示したスーパーマーケットを目指す。
Q:①SDGSは収益性が低いと言われたが、共感を高めれば可能性もある。
②は競合が多い中で商品を絞ることによってやったのはとてもよかった。
A:マグロの解体ショーが受けているので、「ヤギ」の解体ショーがないことを社会の問題提起として提案した。
Bグループ発表
縦軸:価格/横軸:店舗数
●まずは、低価格で店舗数が多いところを狙った。価値を考えると「社会に応援される」「安くて店舗が多い」「SDGsの意味でもフードロス>フードストックができること」
コンテナshop(船で運べる・離島も対象)+タイニーストア(過疎エリア・子ども食堂対策)スーパーマーケットを目指す。
講師意見:離島地域への出店を考えて多店舗展開も有効と捉えている点がよい。
Dグループ発表
縦軸:価格/横軸:安心安全
●農家の直売店に近く、安価で安全なお店の実現(見た目の追求や、同じものがたくさん並ぶJAに不信感がある農家の方が参加する)。その土地土地に小さい規模で出店する。安全性には消費者との密着度の意味も入っている。
講師意見:切り口もよかった。高価格帯で安全性が高いものは普通の考え方なので、プレーヤーが多い。一方安全性が高く価格が安いのはトレードオフになるが、非常に面白い。現実性は置いておいて、商品で勝負ではなく過程で安価を狙うのが面白かった。
Cグループ発表
縦軸:お客様の客単価/横軸:商品の健康志向
●健康志向が高く、客単価の高いスーパーの提案。そのためにやるべきことは、無人化、オートメーションの利用、WEB販売を増やし、廃棄量を減らすという手段を取っていく。
健康志向で高価格>「ハッピーモア」「うるマルシェ」/中道>「サンエー」「イオン」/沖縄に多い安価で品質が劣る>「かねひで」「ユニオン」「ビッグ」「丸大」
講師意見:Dグループは「商品視点」で、Cグループは「お客様視点」と言う意味で2つのグループは異なっている。客単価が低いことをどうとらえるか?>多品種を数多く買ってもらうより、売る商品の種類を絞って、1個しか売らないなどの限定販売方法を考える。
WSのまとめ
皆さん「やればできるのに、やっていないだけ」だと思う。会話をする時に結論が見えないのは、軸が定まっていないことが多い。過去から現在、未来の軸を取ったり、着地にしてもポジティブやネガティブ軸を設定するなど。お客様の課題がある場合、現状が分かりにくい場合、或いは、新しい領域を探している時などは、まず2軸で表現してみると劇的に志向が変わる。自分の考えが整理できる。
1-②.ワークショップ
課題:「ものづくり産業の×デザイン活用」共有
-ものづくり企業のデザイン活用を進めていくために、私たちは何をすべきか?-
■説明:①(最初のワークショップで)付箋で個々の企業でやるべきことの課題に対して私たちがやるべきこと、個人でやるべきことが既に分けてある。
② 個人と企業で分けて二軸をつくる
③ 軸の設定は、縦が「重要度・実施成果」、横が「難易度・事業コスト」にする。
④ グループに分かれて皆で共有しながら、この四象限で今ある付箋の束(活動の案)をプロットする。
1-③.ワークショップまとめ
■坂口氏まとめ
このワークショップは、取組むべき課題を明確にするまでです。解決はこれから皆さんが取り組む活動です。(グループで協議した)成果は、ぜひ写真に撮って帰ってください。
本日二軸と変曲点について話をした。活動は、重要性、難易度の2軸で分類すると、優先順位をつけることができる。皆さんは、どこからこの4つの象限(項目)の中でどこから着手しますか?
「①重要度が高くて、難易度が低い」ところから着手する人が多いと思います。
では、次はどこに着手しますか?本当は、「②重要度が高く・難易度も高い」部分を手掛けるべきだが、殆どの方は「③重要度は低いが難易度も低い」ことから着手していると思う。
本当にそれでいいのでしょうか?今は、コロナ禍でオンラインも増え、多くの方が以前より時間の余裕があるのではないでしょうか。「重要度が高くて、難易度も高い」ものは、意識を集中しなければできないものです。そのため、後回しをせず、今こそ重要な課題にフォーカスして取り組んでください。その際、全てを一人でこなすのではなく、外部に頼ることも大切です。今のグループワークはそのための仲間づくりでもあります。また、「③難易度が低く、重要度も低い」課題については、見直したり、あえてやる必要がなかったりします。そして「④重要度は低いが、難易度が高い」ものについてはこちらも見直したり、時によっては捨ててもよいと思います。今なすべきことをしっかり捉えることが必要です。
■坂口氏クロージング
主体性をもって、創造性を働かせ、機能性を考え、スピード感をもって行動に移しましょう。
やるかやらないかは皆さん次第です。例えば、皆さんが毎日0.1%づつパフォーマンスを変えた場合はどうなるか想像してみて下さい。0.1%づつ重要な課題に取り組んだ場合、1年後には1.4倍までパフォーマンスが上がっていることになります。これが2年たつと2倍を超えます。逆はどんどん自分のパフォーマンスを落としていくことになります。
ぜひ、この研修における学びを、自分のモノになるまで使いこなしてほしいと思います。
研修風景
レクチャー風景(レクチャー専用部屋では前面パネルが反射するため側面のみ)
発表はモニターで講師や全受講生へ提示
コロナ感染防止徹底のため、3グループは間隔をあけて設置、2グループはそれぞれ別部屋を設定することでパネル越しでも会話がしやすくなった