第1回 企画、コンセプト研修
■趣 旨:ものづくりを考える上でその軸となるコンセプトのあり方を深堀し、ブレない姿勢を作った上でスタートする。
■講 師:TIMELESS LLC 永田宙郷 / ファシリテーター:野村総合研究所 坂口剛
■参加者:研修生 25名
■日 時:令和3年9月4日(土) 13:00~18:00
■場 所:専修学校インターナショナルデザインアカデミー ※講師とはオンライン接続
■メンター:鈴木幹直、大城英樹、仲宗根真、山城豊、大城亮子、知念仁志
講師紹介
TIMELESS 代表・プランナー 永田宙郷 TIMELESS LLC. (themedia.jp)
『ものづくりをつくる』をコンセプトに掲げ、数多くの地域産業や伝統工芸のブランディングや商品開発に従事。課題に応じたクリエイティブディレクションを手掛ける。
常に面白い着眼点で事業を切り取りされる。コンセプトメイキングも人と違った着想が独創的
ファシリテーター紹介
株式会社野村総合研究所 プリンシパル 坂口剛
繊維産業や生活文化産業を中心に、省庁の政策立案支援や民間企業の事業開発、地域における創業支援などに従事。付加価値向上に繋がる事業やサービスの開発を専門とする。
1.開講式・オリエンテーション
1)事務局体制紹介
2)「沖縄型デザイン人材の育成プログラムとは?」
3)「参加における注意事項」説明
4)プログラム参加認定
5)参加者の氏名を覚える―コミュニケーションの基本は誰かを知る―
6)グループ分けの実施(5グループ)
2―①.レクチャー
■ヴィジョンって何?
「ヴィジョンを掲げる」とは、事実に基づいた「「リアリティ」と「クリエイティビティ」がちょうどよい割合で混ざった長期的視野を持った魅力的な状態を指す。
現在から未来をストーリー化すると、その先にヴィジョンがあり、「何をもって成長と呼ぶか?」「社会的意義を持てるか?」を考える。
イノベーションは文脈なく突然出てくるものではない。未来から現在を逆算すると事業計画になる。
「コンセプト」はさまざまな捉え方あるが、あるチャプターにおいての、好循環・高循環を実現するための志向・表現・結果を生み出すための「一貫した問い」だと思う。
ヴィジョンからブレていないか?その都度、段階的に確認していく作業が必要。
■デザインって何?
※DESIGNを見定めdesignを決めていく。
大文字のDESIGNと小文字のdesignがあり、それを繋ぎ、かつ中心にあるのがVISIONとコンセプト。デザインとは「気遣いと思いやり」とも言え、その目的を具現化する軸となるのがコンセプト。
■TIMELESS永田の問い(コンセプトメイキング)の実例
現場に行って自分でクライアントの商品を作ってみたり、体験させて貰ったりあらゆる視点からコンセプトを考えるようにしている。
例1 「Natral moony」 「おむつ替えの体験をどれだけ幸せにできるか?」
例2 大野屋(高岡ラムネ)商品開発 「現代に共感を得ることのできる和菓子とは何か?」
例3 西鉄グランドホテル客室改装 「地元の人がお薦めするホテルとは?」
例4 ホテル西鉄イン 「ビジネスのため(ビジネスが加速する)のビジネスホテルとは?」
1-②.質疑応答
永田氏コメント
新市場の創出というより、「あり続けられる市場とは?」を考えて欲しい。
2010年くらいまではこれほど“ヴィジョン”が語られることはなかった。今は不確実な時代だからこそ、どういう“ヴィジョン”を掲げるかが重要になって来た。
■質疑応答の方法
① 1分で「私が聞きたいこと」を付箋に書く ②30秒×5名お互いの質問1つにまとめる ③発表
Aチーム質問・回答
Q:コンセプトをデザインに落としにくかった事例を教えて下さい。
A:目の前の集客が欲しいというクライアントに対して中長期の計画を提案しても通じなかった。
そのため「こうあるべき」という人にはヒアリングの時間を多く取るようにしている。
Bチーム質問・回答
Q:コンセプトを立てるまでの道筋、コンセプトの決め方を教えて下さい。
A:リサーチの際に根本的なファクトが見つかるまで続ける。複数出た時は唯一無二のファクトを選ぶ。戦術のアイデアを先に決めない。何度もそのファクトに戻るようにしている。
坂口質問・回答
Q:誰が大切にされているのか? ビジネスホテルならビジネスマン。大人のラムネ。人から入っていくのは成立するのか?
A:商品はラブレターだと思っているので、宛先のないラブレターは届かない。具体的にターゲットがあるから誰に届くのが大切。
Cチーム質問・回答
Q:ホテル西鉄インの場合、リサーチの期間は?売り上げはどのくらい上がったのか?
A:リサーチは4カ月間。その間に一人60泊くらいして計150泊して、どこでも起きていることがどのようなことか?というのを探していた。
効果は、平均客室単価7900円から、9900円まで上がった(値段を下げずに年間運営可)
年間クレーム数120件→3件(決まった部屋に泊まっていた人が他の部屋に泊まりたがる)
Dチーム質問・回答
Q:リサーチでファクト探しに気をつけていること?問いについて気をつけていることは?
A:逆説が好きなので、王道じゃないところを探す。展示会は売り先がどこかを機になるので、バイ
ヤーに寄った目線で考えてもらっていた。
Eチーム質問・回答
Q:コンセプトがズレてきた時、どうやって軌道修正するのか?
A:議事録を取る。私は捨て案をあまり作らないが、「言われているように作るとこうなる」という事例を作って見せたりする。
坂口質問・回答
Q:捨て案は無駄な時間なので、リサーチをしっかりやれば必要はない。クライアント案と別の2種類作るのはいい学びになる。
A:AIで評価してくれるサービスもあるので、それを利用する方法もある。
2-①.ワークショップ
課題:「バックプランニング(モノから企画まで戻す)」
説明:先に結果があった場合、そこから紐解いてもらうWSを実施します。
注意:
・これが何か知っている人は言わないでください。
・画像検索はしないでください。
・サンプルを配ります。それを見て、資料1~10の問いに応えて下さい。(30分)
問 い
1. 商品名はなんですか?
2. どんな商品コンセプトに沿ったものですか?
3. 商品の用途・機能その他の特徴を教えて下さい。
4. 用途や特長から読み解いた競合商品はどこの何ですか?
5. 競合商品との差異や自商品の優位性はどこですか?
6. 商品を届けたい想定ユーザーは誰ですか?具体的に。
7. 想定ユーザーにどんな購入動機で手にして欲しいですか?
8. 想定ユーザーの購入導線。どこでどうやって買う物ですか?
9. 商品原価/商品価格※それぞれ1個あたりはいくらですか?
10. 年間何個くらい売れる想定ですか?
〈おまけ〉
A.(Yohoo!ニュースに載りました!)そのタイトルは?14文字以内
B.(Twitterに載せます)140文字以内での宣伝文は?
■発表
Eチームのバックプランニング
1.KODOMOのたからもの
2.捨てられない子供の宝物を残すためのもの
3.インテリア、思い出
4.写真、ビデオ、学校の制作物
5.クリエイティブ
6.親、おじいちゃん、おばあちゃん>「泣いちゃう」
7.思い出
8.オンライン
9.原価1500円
10.2万個
Dチームのバックプランニング
1.森の声
2.自然を身近に、自然の造形美を楽しむ
3.自然を感じる、見て楽しむ、見て森を感じる
4.インテリアショップ、ドライフラワーショップなど
5.いつまでも楽しめて死なない、ずっと楽しめる
6.都会で働くOL 10代~30代の女性、 その子供にも受け入れられる
7.疲れた時に自然に触れたいと思っていたら、見つかった
8.ガチャガチャ(疲れた時にたまたま見つかった)
9.3000円
10.10万個
Cチームのバックプランニング
1.Fuu 「封」
2.その時の気持ちを閉じ込める
3.その時の気持ちを閉じ込めて永遠に保つ
4.大切な人へ記念日の贈り物
5.美しい、退色しない、
ブリザードフラワー、はーバリウム
6.劣化しない、見た目が保たれる
6.大切な人(大切な人に大切な日を送る)
7.未定
8.百貨店、高級セレクトショップ
9.原価:3000円/売価:1万円
10.3000個
タイトル「大切な人との大切な思い出を、いつまでも色あせることなく」
Bチームのバックプランニング
1.「アイデアの種」
2.世の中にアイデアやインスピレーションが溢れて欲しい
3.机の上に置いていて煮詰まった時に眺める、ボーっと見ているうちにリフレッシュする
4.ハンドスピナー(遊びながら無心になる)、スノードーム、砂時計
5.1点物、唯一無二のアイデアが生まれるはず
6.プランニングやクリエイティブな仕事の人
7.1点物なだけに集めたくなるコレクター欲を刺激する
8.セレクトショップ、雑貨店、文具店、ネットショップ
9.原価:80円/売価:888円
10.1万個
Aチームのバックプランニング
1.「時間を切り取る」
2.学習に使う
3.大人向けの学習
4.朝顔の観察キット(実際に育てるもの)
5.水を上げずに種から花まで成長を一気に見ることができる
6.大人向けの知育商品
7.生命の神秘を感じてもらう
8.雑貨屋、東急ハンズなど
9.5個セット 1500円(300円)or3000円(600円)
10.2000セット
Eチームのサービスから入るのが良かった(ミニチュア化が盛り上がっているので、現代の市場に合っている)
Cチームのネーミング:コンセプトをストレートにネーミングにするのはユニーク
2-②.ワークショップまとめ
■永田氏まとめ
「宙キューブ」についてバックプランニング(企画まで戻す)作業をしてもらいました。
(質問の)1,3,5,7,9の問いがコンセプトの整合性にとって非常に重要なポイントとなる。これらがコンセプトと合致しているかを再度見直してほしい。コンセプトに対して無理があるのであれば、企画の段階で歪んでいるので消費者に届き辛いものになる。コンセプトやヴィジョンがないまま、商品開発してしまうと歪みが大きくなっていく。
最初の2チームはサービスとして考えられているのが面白かった。現在、ランドセルや制服のミニチュア化がブームなのでサービスは現代にあっている。Cチームのネーミング「Fuu」が分かり易さを含めてすごくストレートでよかった。市場に出会っときはもう一工夫必要だが、今回の研修の中ではとてもよかった。
実際に制作した方によると、特に意味があったわけでなく美しいというだけで作っている。小さくて4000円高くて6000円。鉱石が入ったものだとか、シリーズ化が人気になっている。
コンセプトとして整理されたものではないものなので、研修に適しているテーマとして扱った。
皆さんのイノベイティブなモノづくりを考えると、「誰が何を思ってこれを作ったのか?」何か物を見たら「企画書」に戻すことを日常の訓練として行って欲しい。週1回くらいトレーニングしていき、10個くらいやると見えてくる。(たくさん見ていくと)こういう企画書なら、こうにはならないというノイズが見えてくる。そのノイズを私ならこう解消することが重要。クライアントの思いが強すぎたら、企画書に落とすとつじつまが合わなくなる。発注する側の思いがのっかっている。それはそれでやりたいことを実現するのはよいが、本当に何が作りたいのかをクライアントと一緒に考えて欲しい。
■坂口氏クロージング
依頼するクライアントの思いは「企画書に落としていくとつじつまが合わなくなる場合がある。」それはそれでやりたいことを実現する意味で悪くはないが、「本当に作りたいのですか?」というと問いを繰り返すと、クライアントが内省することができている。そこまで寄り添って欲しい。
参加者の名前を覚える
講師・ファシリテーター・研修生とのオンラインレクチャー
会話を減らすために付箋で意見を書く
最後にグループとしての意見をホワイトボードにまとめる