■テーマ: 新たな思考から導かれる商品・サービス
■講 師:京都大学経営管理大学院客員教授/オムロン㈱ 竹林一氏
■ファシリテーター:野村総合研究所 坂口剛氏
■参加者:研修生 23名
■日 時:令和4年10月8日(土) 13:00~18:00
■場 所:おきなわ工芸の杜 展示室/多目的室1・2
講師紹介
京都大学経営管理大学院 客員教授
オムロン株式会社 イノベーション推進本部 シニアアドバイザー
竹林 一 (たけばやし はじめ)
“機械に出来ることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである”との理念に感動して立石電機(現オムロン)に入社。以後新規事業開発、事業構造改革の推進、オムロンソフトウェア代表取締役社長、オムロン直方代表取締役社長、ドコモ・ヘルスケア代表取締役社長、オムロン株式会社イノベーション推進本部インキュベーションセンタ長を経て現職。京都大学経営管理大学院客員教授として「100年続くベンチャーが生まれ育つ都」に向けた研究・実践を推進する。日本プロジェクトマネージメント協会特別賞受賞、同協会PMマイスター。その他一般社団法人データ社会推進協議会理事他、政府、経済団体関連各種委員会の諮問委員を務める。著書に「たった一人からはじめるイノベーション入門」「モバイルマーケティング進化論」「PMO構築事例・実践法、利益創造型プロジェクトへの三段階進化論」等がある。
1.事前研修-いい質問について考える- 講師:ファシリテーター 坂口剛
1)質問の種類を理解する
①よい質問をするメリット
・事実や考えを理解することができる、気づきを促すことができる、相手との信頼関係を築くことができる
②質問の種類
・いつ、どこで、誰が誰に、何を、なぜ、どのように、どのくらいなのか。
・クローズドクエスチョン/オープンクエスチョン
・(参考)サトルクエスチョン(間違っていることは訂正する心理)
・相手に仮説を投げかけて検証する
・否定疑問文で本音を引き出す
・NGな質問の仕方
・ネガティブな質問、否定を前提とした質問、意見が中核にある質問
2)G(グループ)別テーブルでの検討【共有・検討】
・これまでに経験した「これは良い質問」とは(なければ気づきの共有)
赤G:そもそもなぜ〇なのか?/オープンとクローズ/話し相手によって使い分け
緑G:回答者が気づかなかった視点にきづかされる質問/整理をしてあげる質問
桃G:前提条件を共有した上での質問/シンプルに聞く
黄G:相手が話したそうなことを質問/本音を引き出す質問/終了後の立ち話
誰かと誰かが繋がるキーワード
青G:相手の状況を把握した上での質問/前向きにさせる質問
2.公開講座「イノベーションをデザインする」講師:竹林 一 氏
1)自己紹介
■イノベーションが生まれ続ける仕組みをデザインする
オムロンの中で「イノベーションが興りつづける仕組み」をデザインするよう依頼された。
■イノベーションとは?>異なる仕方で新結合すること
① 新商品・サービス ②新しい生産方法 ③新規販路 ④供給源の獲得 ⑤新しい組織
■「Will」を見つける
〇私にとっての「しごと」原点
・企業は利益を追求するもの、それは人間が息をするのと同じ
・・・そやけど・・・
・人間は息をするために生きているのではない
〇4つの「しごと」を楽しむ
・私事:自分自身がエネルギーを貰えること
・仕事:職業や業務としてすること
・志事:心がつき動かされること
・使事:使命として与えられたこと
(社会的にやるべきことなど)
〇あなたの「Will」は何ですか?
>やりたいこと100連発で探そう!
1)「Will」が人を動かす
「こんな世界を作りたい」を発信していると共感する人があらわれる・・・
そしてコミュニケーションを取り合い、モチベーションがさらに高まる。そしてその次に
論理・プロセスを補充し合い、具体的なコンセプトを共有し、ビジネスを共創する
2)「世界観」を描く
〇イノベーションとは「軸」を変えるコト
(人や組織と思考プロセスの間に風土が真ん中にある)
①0から1を考える ②技術を変える ③ビジネスモデルを変える ④「軸」を変える
■新たな顧客満足の創出
いいものを安くから、価値を価値に変える新たな仕組みが重要
顧客満足=QCD(品質・コスト・納期)×S(仕組み)
・CS:お客様の満足を上げるS(仕組み)が必要
・CS=QCD×Sの最適化が必要 ⇒プロデューサ、プロジェクトデザイナ―が必要
■新たな軸を定め新しい世界観を創る(既存・新規事業)
今までの仕組み・モデルの賞味期限が切れ始めている
社会構造をとらえ、新たな軸を定める必要がある
※D(デジタル)より、X(トランスフォーメーション)が大切
3)「仲間」を作る>「起承転結」の人材が必要
起:0から1を仕掛ける人材
妄想設計:アート・アート思考/社外人脈が多い/~10年先
承:0~1をN倍化(10、100、∞)する構造をデザインする人材
転:1をN倍化する過程で効率化・リスクを最小化する人材
結:最後に仕組みをきっちりオペレーションする人材
4)「藁」を持って歩きはじめる
「エフェクチュエーション」5つの原則
① 手中の鳥の原則:自分が何者か知ること
② 許容可能な損失の原則:損失が出ても致命的にはならない許容範囲のリスク設定
③ クレイジーキルトの原則:いろんな人を集めて一丸となってゴールを目指す
④ レモネードの原則:レモンは酸っぱいが砂糖を入れてレモネードとしたら売れる
⑤ 飛行機パイロットの原則:不測の事態に備えて、状況に応じた臨機応変な行動
■最後に あなたはどんな「藁」を持って歩き始めますか?
質疑応答
Q:仲間を見つけるのはどうしているのか?
A:①起承転結(竹林は“承”なので)起の人を探す。社内にネットワークを張っておく
②何をやりたいかを常に発信している
Q:お客様の「Will」をどうやって引き出すのか?
A:デザイナーは「抽象度」を上げる役割もある(抽象化の概念を出させる)
なぜこの課題が出てきたのか?⇒そもそもこの人は何がやりたいのか?
外部のデザイナーが入ると、そもそも(上位概念がでてくる)がでてくる
Q:100個のやりたいことは、どうやって出したか?
A:100個をランダムにだせない。例えば会いたい人10人、行きたい所10カ所、学び
たい事10個等マインドマップ的に出していく
そうしていると上の概念が出てくる
Q:自分を見つめるヒント
A:第3の空間を創る(秘密結社=コミュニティを創る)秘密基地だと答えが出やすい
Q:相手の話を聞くときに気を付けていること
A:ベタに一次情報を集めるようにしている。できれば雑談に持っていきたい
意図的に話をするのではなく、雑談の中に本音やヒントがある。
Q:コンフィクションへの対処は?
A:なぜ反対しているのかを考えてみる。そうすると迂回ルートや第3者からの応援を貰っ
て回避できることもある。どこをどう組み合わせたら前に進むか常に考えている
Q:心理的安全性とは?
A:緩い組織ではなく、学習できる組織を作りたい
レビュー会議において上司の言うことは聞かなくてよい(指示と受け取られると困る)
(坂口)言葉の意味が正しく伝わっていないのを避けること
Q:竹林さんの子供のころはどんな子だったか?
A:私は母子家庭だったので、一人の時間が長く、いつも絵を描いた。家にいるタイプだったのでボーイスカウトに入れられてネットワークの大切さを学んだ。
3.ワークショップ「2軸で整理する」講師:坂口剛
1)2軸で物事を整理する
2軸のメリット 1.一番シンブルな枠組み
2.ナレッジが不要(ただしく考え抜く)
3.議論しやすい/説明しやすい(企業担当者、メンバー)
(お題)新興スーパーマーケットのオーナー社長が沖縄県内に初出店する際、県内スーパーマーケットとどのように差別化を図るか。
(お題の設定)県内のスーパーマーケットのポジションの可視化
① 軸を設定する。勝負するポイントを仮でよいので、挙げる。
(商品、価格、立地、店舗数、サービス・・・etc)
② 県内の代表的なスーパーマーケットを挙げる。
③ 軸内にプロットする。
④ どこで勝負するか。(時間があれば)勝負の仕方まで。
黄チーム 店舗名「俺のスーパー」
1軸>縦:高級・リーズナブル/横:独身⇔ファミリー
2どこで勝負するか?>店員が可愛い、プロテイン豊富な食品、カット総菜、ジムが併設、結婚相談に乗ってくれるなど
(コメント)スーパーはそのものファミリー向けの設定なので、それを変えたのがよかった
緑チーム 店舗名「スーパーグリーン」
1.軸>縦:大衆⇔こだわり/横:リアル販売⇔Web店舗
2. どこで勝負するか?>ヤマト運輸が背景にいるので、いちはやく届けることができる
(コメント)ヤマト強みを持ってくる考え方がよい
赤チーム
1. 軸>:縦:高品質⇔低品質/横:オンライン⇔オフライン
2. どこで勝負するか?>おつとめ品(売れ残り、賞味期限が近い)を速く届ける
(コメント)低い品質を「加工度がないもの」と捉えてもよい
青チーム 店舗名「スーパー協働売店」惣菜に絞った品ぞろえ
1. 軸>縦:高価格⇔低価格/横:惣菜多⇔惣菜少
2. どこで勝負するか?>小規模、惣菜種類が少なくて安い、多品数は必要はない
(ひとり親世帯や貧困家庭が対象)その日の給食のような提供、親から予約を貰って提供
(コメント)点数を少なくすることで安価にできることがよい
桃チーム
1.軸>縦:高客単価⇔低客単価/横:都市⇔郊外
2.どこで勝負するか?>郊外で高単価が少ないので、エンターテイメントや併設施設を作
って楽しみながら買う
(コメント)郊外ならではの立地を活かすのも面白い
■本来なら、オーナーにヒアリングをしながら軸を決め、それをプロットしながら何で勝負するかを決めていく
クロージング
2軸はとてもシンプルで簡単なので使いやすいが、徹底的に考える必要がある。
次回は、「アイデアだし」を行う。本来「パーパス」についてやりたかったが、少し重いので宿泊研修へ移動する。「アイデア出し」はスキルなので、過去のケースと結合させながら出していく。そのやり方さえマスターすればだれでもできる。
公開講座講師(竹林一)
公開講座風景
WS風景