■テーマ:パーパス経営の実践 基本
■講 師: 一般財団法人 沖縄ITイノベーション戦略センター 理事長 稲垣 純一氏
株式会社 POPS クリエイティブディレクター 田中 淳一氏
■ファシリテーター:株式会社 野村総合研究所 坂口剛氏
■参加者:研修生 27名、欠席2名
■日 時:令和4年11月19日(土)10:00~19:00
■場 所:専修学校インターナショナルデザインアカデミー
■メンター:鈴木、大城、仲宗根、知念、翁長、大城ㇼ/サポート:市川、久田
講師紹介
(一財)沖縄ITイノベーション戦略センター 理事長 稲垣 純一(いながきじゅんいち)氏
1953年東京都生まれ。1993年沖縄県に家族と共に居を移し、県内外の多くの教育機関(京都造形芸術大学、放送大学、他)にて講師/研究員。並行して約50本のパソコン入門ビデオパッケージを制作。のべ4,000本の放送番組に出演。/1999年4月より2014年3月まで15年間、国際電子ビジネス専門学校校長。その後専修学校インターナショナルリゾートカレッジ校長(20年3月まで)。14年より16年まで沖縄県専修学校各種学校協会会長。兼任校長として専修学校インターナショナルデザインアカデミーと沖縄ペットワールド専門学校も担当。
講師紹介
株式会社POPS クリエイティブディレクター 田中淳一(たなか じゅんいち)氏
広告代理店在職中ほぼ全業種の大手企業のCRを担当し、 Creativity for Local、Social、Globalを掲げクリエイティブブティック“POPS”を設立。 シティープロモーション、ブランディング、グローバルPR、商品企画など、現在38都道府県以上で 地方自治体のブランディングを担当。 またグッドデザイン受賞展のクリエイティブディレクターを務めるなど 東京都や官公庁やNPO、大手企業のブランディング、グローバルPRを数多く担当。
1) 〈沖縄の産業の夢=花笠〉解説 講師 ISCO理事長 稲垣純一氏
新型コロナの影響を受けた大都市のイベントに未だ人が戻っていない。その中で、ITを介してポストコロナの新たな社会を模索している地域には注目が集まっている。昨日終了した「ResorTech EXPO 2022 in Okinawa」は、沖縄型のITの活用を捕らえたイベントで13,000人の参加者を集めた。
23年前に私の描いた「沖縄の魅力と経済社会の見取図」が、この<沖縄の産業の夢=花笠>。次の次代を担う皆さんには、この見取図をアップデートして欲しい。
(解説)23年前の当時、「沖縄の心を表わす言葉がとして命どぅ宝(ヌチドゥタカラ)」多用された。米軍統治下に27年間置かれ、本土復帰後に同じ27年が経過したが、まだまだ社会問題が山積しており、時の大田昌秀知事は米軍基地の撤去を訴えて県政を担っていた。
大田氏は、基地関連の収入が次第に減るに当たって新たな産業が必要である(環境面を考えると観光産業を急激に大きくできない)と考え、時代の潮流である情報産業の振興にも目を向けることとなった。パケット通信の利用が可能となり、均一料金の通信が実現して、原料・設備の調達や出荷のコストと時間が掛からなくなった情報産業は、沖縄にとって魅力的だった。
大田氏は県内外の有識者を総動員して県内に情報産業を根付かせる策を講じ、1998年10月に「マルチメディアアイランド構想」として策定した。私はこの議論の過程で、県の政策に関わることとなった。しかしこの動きと時を同じくして、県内の失業率は復帰後最悪の状態に陥っており、この直後の知事選に敗北する。
次の県知事に就任した稲嶺恵一氏は国との協力関係を築き、沖縄振興の予算を獲得しつつ、基地は段階的に縮小する方針を示した。「国からは魚ではなく釣竿をもらう」が口癖だった。就任直後の放送番組(稲垣がキャスター)で、「観光と情報を沖縄の産業の柱にする」と語った。
しかし私は、観光産業と情報産業は別の役割のもので、沖縄のリーディング産業として併置することには違和感を持った。観光の資源としては自然や先陣の作り出したものが既にユニークなものとして存在し、我々はこれを継承している。対して情報産業に関する沖縄の優位性は、商取引自体を見ただけでは「マイナス」がないというだけで「プラス」は何もない。(東京と競争し得る資本・人材・顧客・研究教育機関は沖縄にない)この相違が、私の抱いた違和感の原因だったと思う。
次に、沖縄の観光資源について、その価値の本質は何かを確認しておこうと思った。県外の方がなぜ沖縄に来るのか? それは「いきがい」「ながいき」「あんしん」「へいわ」の4つのキーワードで表わせるのではないかと考えた。そしてそれを支え、実現する全ての産業も4分野に分類して45度回転させて重ねてみる。この4分野の生産性を上げ、発展させることによって、分野の重なり部分にキーワードを具現化する道が開ける。そしてそのための手段としてITを上手に使うことが切り札となるので、IT産業は沖縄経済全体の下支えをする役割である。沖縄のIT産業の主な顧客は首都圏の大手企業だが(下請け型が未だに多く所得が上がりにくい)、今後は県内の全ての産業と県民個人を対象とするビジネスの比率を上げていかなければならないだろう。言うまでもなく、これら全ての産業の中心に観光産業があり、この構図は今後も大きくは変わらないのではないかと考えた。
2)質疑応答
緑G:〈花笠〉が25年経って、沖縄社会への影響や変化のあったことを教えて欲しい。
稲垣:あまり影響がなくて、それが悩みです。ここ数年はやっと県が注目してくれた。それが「Resor Tech Okinawa」のマークになった。
緑G:4つの産業でまとまりはあるが、5つ目や6つ目もあると思う。
稲垣:私もそう思うので、ぜひアップデートにご協力お願いします(笑)。
桃G:沖縄でも以前のITは、安い賃金人材やコールセンターがキーワードになっていたと思うが、今はもっと上位にいると思う。なぜそうなったかご意見を聞かせてほしい。
稲垣:そのような感想をもって頂いて嬉しい。参考にですが、どう変えようとしたかという当時の私の考えもここで少しお話ししておきたい。1999年にQABの開局4周年記念の特別番組を作った時、欧州のコールセンターが集中しているアイルランドへ取材に行った。そこはすぐ隣に大国(イングランド)があり、苦難の歴史を歩んできていた。独自の古代史と伝統、失われつつある母語などへの対応に沖縄との類似性があり、興味を惹かれた。その国家の経済戦略を担っていたIDA(アイルランド開発庁)で話を聞いた。それによると、30年計画の20年を過ぎたところで、最初の10年は医療・医薬分野(たとえばコンタクトレンズ)のビジネスを集積し、次の10年で金融に特化し、現在はコールセンターなどの情報サービス産業のクラスターを形成中、ということだった。人材育成でも、この目的を達成するために、国内の学校は理科系に限って公立・私立、大学・専門学校の区別なく授業料が無料ということだった。
この時、沖縄の向こう30年はこれと逆の順番で産業の集積を行うのが良い、と思った。まずはコールセンターで雇用を増やして失業対策とし、併せて働く人のPC活用技術・知識とコミュニケーション能力を伸ばし、その人材が県内に広がってゆけば、県全体のIT化が進むと思った。(専門学校はその前段階を担う)プログラミングやシステム・エンジニアリングはその後でも良いと思う。
桃G:「スポーツ・健康産業」を選んだ意図は?「ながいき」の指標理由も聞きたい。
稲垣:沖縄への入域客は、夏と冬の差が大きく開いていた。これを平準化する目的でプロ野球のキャンプややウエディングの誘致を行った。ここからスポーツは、修学旅行・平和学習などと並んで沖縄の観光産業の、冬の重要分野になっていく。
このころ沖縄の「ながいき」のイメージは長寿日本一の座から転落したことをきっかけに毀損してしまった。これを再考したいと考え、この時点での県外から見た4つの魅力の一つに取り上げた。
赤G:「アジア分業型産業」について詳しく教えてほしい。
稲垣:最近のことを例示すれば、那覇空港に第二滑走路が完成して、国際貨物ハブや航空機整備のビジネスも誘致できた。アジアの航空機の整備を受注できる態勢が整い、国内の航空各社もこれまでコスト面を考え海外で整備をしていたところが、カントリーリスクやコロナの影響を回避するために、少々割高でも沖縄への委託が見込めるようになった。物流の面では、夜から朝まで国内・海外の貨物便を沖縄に集中させることにより、アジア各国と国内各地の間の輸送が飛躍的に効率化できた。今後は台湾、香港などとの国際連携・分業が特に重要になるでしょう。金融センターやデータセンターをどこにどう配置するか、夢は広がります。また、安全保障においても、共同での態勢を作っていけばコストも下がるし、自国だけを守るというより多国間の連携が望ましいと考える。
赤G:4つのキーワードが今後変わっていくと思うが、特にこの4つを選んだ理由は?
稲垣:首里城が1992年に復元され、同時期に全国で沖縄ブームがやってきた。その頃、沖縄観光の本質的な魅力と思える言葉を、いろいろな観光ガイドや資料・文献からアナログな方法で選んだ。
赤G:当時のリアクションは?
稲垣:知事だけでなく経済団体の方たちにもご説明する機会はあったが、説明図としては面白い、分かりやすいと言ってくれたものの、これを引用する形で具体的な行動を起こす方はいなかった。
黄G:「自立する沖縄」の視点から見ると、県民として理解しやすいと思った。コロナを経験して観光以外の産業を推進しなければならないと思った。
稲垣:23年前に私の「おすすめ産業」は特になかった。当時は、沖縄振興の目的の表現として、経済の「自」立、県民の「自」己実現などの言葉が流行していていましたが、自意識が高すぎるのもどうかと思う。ただ、沖縄は県民意識が高い地域なので、地域振興戦略としては結構だが、日本やアジアの未来を俯瞰する中で沖縄を位置付け、考えるべきだと思う。「ResorTech EXPO 2022」のサブテーマに思いやりを表わす沖縄語を使って「ちむぐくるDX」としたが、競争で強いものだけが勝ち残るのではなく、企業の発展が世界を幸せにすることと共にあるような変化が生じることを期待する。
青G:〈花笠〉の後に起った沖縄の事象(世界遺産に認定、有名人が多数輩出)でこの図に影響したものがあるか?どうしたらIT産業が沖縄に定着するか?
稲垣: 以前の沖縄は県外の人にとっては「非日常的な世界」だったと思う。現在はあふれる情報により「感動がある地域」に変わってきていると思う。以前なら「沖縄の空手とは?」と聞かれれば基本的な歴史の説明だけでよかったが、今はもっと高次の情報の発信が必要になっている。IBMが研究所を創ったら、そこを中心にニース全体が高級リゾート地として発展したように、東京もリスクの分散や働き方改革を考えると、企業のフォーメーション(組織形態)が変わってくる。それこそデジタル・トランスフォーメーション(DX)だと思う。今一度「沖縄だからこそ」を考える。沖縄の新たな価値を発見・発信するアイデアを皆さんには出していただきたいと思う。
3)パネルディスカッション 1期生(3名)+ファシリテーター坂口
坂口:昨年の企業課題は、どんな気持ちで取り組んだのか。
1期①:コロナ禍でもあり、フリーのデザイナーでもあるので毎回の研修が刺激的だった。そのこともあり、「企業課題」に対して、前のめりに取り組んだ。大人になってお金にならないことを一生懸命やる機会はないので、いいチャンスと思った。メンバーですぐに気持ちが固まり東京視察に行った。
坂口:チームで即座に動くのを見て、すごい行動力だと思った。
1期②:前回提案した企業から電話があり、「頂いた提案を参考に、企業改革した」とのこと。チーム内では熱が高まって、この課題だけでなく提案先企業の利益をどう上げるかで、沖縄の経済を上げる気持ちでやっていた。
坂口:与えられた課題だけでなく、売上や商品カテゴリーについてまで考えた点は良いアプローチと考えている。
1期③:私の仕事は営業なので、デザイナーと関わるのが楽しかった。「企業課題」については全課題に関わりたかったが、1つに絞った。通常の仕事ではできないような背伸びをしたアウトプットをしたかった。プランナーがリサーチする機会は多くはないが、日ごろの業務でできないことをやるのがこの研修の良さだと思った。
坂口:時間をかけてでも、一旦提案を仕上げきることが大切で、その後、自身の業務とあわせて、ポイントを絞って提案するのもよい。一方で、研修で苦労した点は何か。
1期①:企業とはあまり密なコミュ二ケーションを取ることができなかった。売上を公開頂けなかったので、一部妄想せざるを得なったが、依頼のあった細かいデザインの提案ではなく、「県民に求められる企業になる」ことの必要性を感じ、テーマを再検討した。
坂口:今回の移転に繋がった要因のひとつとして、全体を俯瞰し、課題の再徹底から進めたこともあるだろう。
1期②:お客様のことを理解するため、個人的にはアンケート調査をしたかった。ただ、日常の業務も多忙を極めたので、結局チームに任せきりになった。その後、相手企業から提案内容についての相談もあったが、本業を優先し受けることができないのが残念だった。
坂口:今回事業で提案して一旦終わりになるが、その後はどうするか、も考えながら進めていただきたい。時間のない中で、どのような工夫をすればよいと考えるか。
1期①:私たちのチームは3人という少人数だったので、やりやすかった。
1期③:私たちのチームは、8人であり、誰がリーダーになるか、というはじめの一歩に苦労した。
最初は気持ちも薄かったが、現場を見に行き働く人たちの声を聞くと「なんとかしないといけない」と熱くなり、その帰りにLINEネットを作り、盛り上がっていった。また、調べていけばいくほど、これが本質の課題かを悩んだ。プロダクトアウトは得意だが、1つにまとめるのも苦労した。
1期②:現場だけでなく人を説得することが大切であることに気づいた。自分たちが動くのではなく、プロデューサーとして現場を動かすために、社員をチームとして巻き込むことも大切だと思った。
坂口:案件にもよると思うが、組織設計も含めて検討することも有効であった。また、たくさんアイデアが出た場合にどう収束させるのかも大切。常に考えてほしいのは、⑴何故この企業がやる(必要がある)のか?⑵本当に面白いのか?新しいのか?⑶結局は、儲かるのか?の3点と考えている。
1期①:最後は本気で取り組んだプレゼンが見れると思うので、ぜひ一人一人が全力で取り組んでほしい。
1期②:(昨年は)クリエイターと支援機関の方だけだったので、データの集積が足りなかったが今回はしっかり仕上げてほしい。更に一歩踏み込んだいい提案ができると思う。
1期③:真剣にやると最終的には楽しめると思うので、いろいろなキャラクターの方がいると思うが、2軸で整理するなど、研修で学んだことを活かしてほしい。
坂口:この3人のように主体的に取り組むと、本間さんからお話のあった「努力は夢中に敵わない」という言葉を体感できるだろう。企業の課題に没入して、ぜひいい時間を過ごしてほしい。
4)チームの作り方
チーム作りルール
・1チーム:原則3~4名(デザイン人材/ものづくり人材/IT・支援人材)
・デザイン人材/ものづくり人材:基本1社1課題を選択
・IT人材・支援人材:複数社・複数課題を選択可能
・ただし、各チームにIT・支援人材が1名以上参加
かつ、チームはデザイン、ものすくり、IT・支援から2カテゴリー以上
① 各自でカテゴリー申請(デザイン人材/ものづくり人材/IT・支援人材)
② 前回以降、メンターが回収した「企業向け質問―回答票」にて各自検討
③ 希望する企業課題に手を挙げてチーム分け
④ 各チーム別自己紹介
5)「パーパス経営の実践①」㈱POPS 田中淳一氏
1)地域からの情報発信とパーパス経営 ~パーパス。ブランディングを知ろう~
地方自治体の「シティプロモーション」を中心に、行政や企業から依頼を受けてブランディング・商品開発を行っている。沖縄でも伊平屋島、伊是名島、今帰[田中1] 仁村などの仕事を受ける。
〈ものを作ったら・・・情報発信!〉
企業や自治体が情報発信しても届きにくい時代
情報の99.996%はスルーされる時代へ
(現代は平安時代の一生分、江戸時代の1年分を1日で浴びている)
>昔は情報が少なかったので、余裕があった。
調情報洪水の中で生活していて、人が情報を処理できる限界をとっくに超えている
情報をスルーする能力が格段に高くなっている
多種多様な視聴コンテンツが登場し、生活者をつかまえにくい状況に
メディアが多様化し、ターゲットへのアプローチの精度が求められる
メインのコミュニケーションインフラがSNSになり、
企業や公共機関と個人が対等な時代へ
SNSこそが生活者にとって、情報を伝達する最有効手段になっている
とてつもない情報洪水で生活者にとって、企業や自治体の情報は関心がない
↓
これからはZ世代(17~26歳)+ミレニアル世代(26から40歳)が購買[田中2] の中心
2025年にはミレニアル世代が世界の労働人口の75%、日本においても50%を占める
↓
Z世代はSNSや動画配信サイトで大量の情報に触れる中で、
「最小の労力で最大の成果を得る」ことを重視する
(生まれた時から情報洪水で暮らす世代は、企業の情報を届けるには更に手強い)
彼らが重要視する価値観
ダイバーシティとインクルージョン
これからの生活者が重要視する価値観があります
もの消費⇒こと消費⇒とき消費⇒いみ消費
ただ売りたいだけの企業は、生き残れない時代
Winwinも生き残れないかもしれない
SDGs、ESG投資、エシカル消費、LGBTQへの理解など、これらに取り組む姿は
キレイゴトではなく、ビジネスの原動力であり本質に。
(日本のものづくり企業はブランド価値では、この20年で世界の表舞台から消えた)
売るものは、スペックから、ストーリーへ
企業の社会的存在意義を問われる時代
(まとめ)
とてつもない情報爆発が起き、生活者が情報を選択する(スルーする)感度が高くなった
生活者は便利やお得などの理性的なスペックではなく、SNSなどの評判を重視し
感情的な好きか、嫌いかで選ぶ
社会問題の解決や貢献を重視する
ミレニアル時代、Z世代がこれからの消費の中心となる・・・
これから中心の購買層になるミレニアム世代、Z世代は、
NIKEのパーパス
健康な地球上ですべての人が平等に競えるフィールド、そして
アクティブなコミュニティをつくり、スポーツの力で世の中をひとつにする
共感&共鳴しなければ買ってくれない
パーパス・ブランディング
企業の社会的存在意義こそがビジネスのコアバリューになる
[田中3] 自分達の存在理由を見つけ、それを生活者に伝えていく
「何をやるか=HOWやWHAT」ではなく「なぜやるか=WHY」
こそが生活者にとって最重要視される企業価値
従来言われてきたCSR(企業の社会的責任)とは全く違い
パーパス自体がビジネス活動と表裏一体
パーパスに共感して、生活者はモノやサービスを選ぶ
【事例紹介】
CASE_毎日新聞
経 緯:新聞創刊150周年の広告>自画自賛になりがち>そして、新聞はかなり厳しい
状況>記者のモチベーションも下がり気味
視 点:毎日新聞の150年の歴史ではなく、150年掛けて培ってきた毎日新聞の
社会的存在意義を伝える
コンセプト:社会的に弱い立場の人に向かい合ってきた毎日新聞ジャーナリズム姿勢こそ、今の時代に伝えるべき
事実を報道するのではなく、
伝えることで、社会を繋いでいくために存在する
Case 岡山トヨペット 経緯~視点~コンセプト(省略)
車を売るためではなく、
より良い車社会の実現のために存在する
CASE_瀬戸内醸造所 経緯~視点~コンセプト(省略)
ワイナリーではなく
地域の食文化を継承するために存在する
CASE今治タオル 経緯~視点~コンセプト(省略)
七福タオルは、タオルを通して
家族を繋ぐために存在する
CASE_高知開成専門学校 経緯~視点~コンセプト(省略)
知識や就職の術を教えるのではなく
実力を教える学校として存在
CASE_リネシス@秋田市 経緯~視点~コンセプト(省略)
家賃が実る家は、
持ち家を持ちたい人の願いを叶えるために存在
CASE_今帰仁村観光協会 経緯~視点~コンセプト(省略)
沖縄観光の中でも今帰仁村の観光は
ゆったりと触れ合う癒し時間を提供するために存在
大切なことは
地域が継続&持続可能なアイデアを提案してくこと
〈パーパス・ブランディングを実施する際のヒント&ポイント〉
■「パーパスは、現在形」
企業やブランドが「なぜ存在するのか」を端的に表した言葉、文章。判断・行動のよりどころにするための概念。今、この習慣の存在理由について強く訴えている。
■「パーパスは、つくるものではなく、見つけるもの」
■パーパスは企業の「強み」「想い」と社会の「ニーズ」(課題解決)が重なったところに存在する
■パーパス・ブランディング
企業の社会的存在意義こそがビジネスのコアバリューになる。
自分たちの存在理由を見つけ、それを生活者に伝えていく。
■地域企業も事業規模や資産ではなく、パーパスで飛躍できる時代
■企業のパーパス(社会的存在意義)こそが、経営のコアバリューになる時代
※参考:「地域の課題を解決するクリエイティブディレクション術」出版:宣伝会議
6)質疑応答
赤G:売上、収益を上げることが(取組の)上位にくると思っているクライアントに、パーパスの重要
性をどのように伝えているのか?
田中:今日話した内容をダイジェストにして伝えている。実際はアマゾンやナイキなど売上にシビアなクライアントの方が積極的にブランド投資をしていることを話すと伝わる。
坂口:短期的な収益を求めているからこそ、長期的な計画が必要なのかもしれない
田中:企業広告への投資とブランドへの投資は、長期的にやり続けるとブランドにファンがつき、効果が逆転してくる。販促広告は頻繁に永遠にやり続けなければならないが、Amazonは年1本くらいのブランド投資広告で熱いファンを作る
赤G:情報を発信する上で、モチベーションと工夫がされていること。
田中:「今帰仁ベンチ」はお金がないのでCMは打てないが、WEB広告5万回再生で500のイイネが付いている。それはエンゲージメントが高まっていることになる。結局泣くか笑うか怒るかなどの感情を動かすと好意度が高まる(今は広告も「作品性」を高めることが必要)
坂口:秋田のCMなどはどのような人に見てほしかったのですか?
田中:一般生活者にも現実を知って欲しいし、投資家や金融関係の方にも見てほしい。
緑G:お客さまから○○してと(具体的な要求を)言われていて、そこからパーパスに転換させる方法は?
坂口:先ほどの回答と近いですね(今日話した内容をダイジェストにして伝えている)
緑G:たくさんの企業と仕事をしていて、共通する課題はあるのか?
田中:買い手が減る(マーケット縮小)という課題は共通。それに対して事業規模を維持するために、或いは選んでもらうために「好き」になってもらうことはどこも同じ。
坂口:岡山県の課題などは固有のものだが、固有の課題に対する種差選択の方法は?
田中:ロジカルに考えながらも、最終的には思いつきも多い。「今帰仁ベンチ」も現地での
生活を見ていると浮かんでくる光景がある。現地に行って経営者と話すのは必須。
坂口:話をしながら言葉を拾っていくのか?
田中:経営者も「この言葉なの?」と驚くこともあるが、自分の中にインプットしておくと話をしていて繋がる点が生まれる。
桃G:地方では、広告にお金を掛けられない場合、SNSに頼ることも多いと思うが、それに対する課題は?
田中:媒体料がないクライアントの場合、「言葉」「画像」の一枚絵で勝負をする。
七福タオルなどは200万で作っているが、強いコンテンツを作ることを心掛ける。
桃G:メッセージ性が強い場合の取り扱いは難しいと思うが、マイナスに取られない注意
点はあるのか?
田中:プロなので失敗はしないようにしている。そのための検証は自分の中でたくさん行う。僕らは(お客様にとって)投資先だと思う。例えばグミのCMを依頼された時、100円のグミ(低額商品)をいくつ売ってこの広告費を捻出しているのか、ということを考え、自分がその投資に値するかと真摯に考えること。一般で使われる言葉と企業で使われる言葉があるので、その違いが難しくならないようターゲットを見ながらキャッチコピーをしっかり考える。
桃G:七福タオルの2話目が作りたくなかった理由は?
田中:動画を見て同じような経験(近親者を亡くすなど)をした人が悲しい想いをするのではないかととても悩んだ。
坂口:昔とは媒体料が違うので、コンテンツさえ強ければ媒体に執着する必要はない。
田中:コンテンツにしっかり投資をしないと、間違った印象を与えることもある。
坂口:それを考えるとコンテンツを作れる皆さんの価値が上がってくる。
黄G:パーパスの見つけ方が気になった。ユーザーの視点によってパーパスは複数あってもいいのか?1つに絞るべきなのか?
田中:基本的には1つに絞る。企業のパーパスは1つで、ブランドはブランド毎にあっても
よい。パーパスの導き方は明日の講義で。クリエイティブの人達はインプットも
とても大切。
黄G:社員全員に(パーパスを)落とし込む方法は?
田中:インナーのブランドブックを作ったり、映像を作る企業もある。デジタルで共有されるとよいと思う。
坂口:ミッションを作る仕事をする際に、IばかりでWeはなかった。クレドカードを作ったり、読み合わせをしたりした。ビジョン、バリューを作って、人事考課に使おうとしたこともあった(やりすぎた)。今はOne or Oneのような方法が現代的。
田中:行動指針まで落とす企業もある
青G:沖縄では経営理念も持っていない企業が多い中で、パーパスが作れるのか?
田中:できると思う。経営理念があれば材料にはなるが、大企業であっても、どこでも言え
るようなあやふやな理念が多い。しかし、経営者に聞いていくと必ず想いがあるので、それを引き出すスキルも重要。
坂口:田中さんは「社会課題」をどういう情報源から収集しているのか?
田中:日頃は、朝日、日経、毎日の新聞から収集している。記事は似ているが「投書欄」な
どをよく読んでいる。ネットも8サイトくらいを見る(TVはほぼ見ない)。
毎朝1.5時間~2時間かけてインプットして、アップデートしてからでないと企画作業に取り掛からない。1日で 社会課題は変わっているので、毎日やらないといけない。
雑誌も10誌くらい読んで、興味のない領域のも敢えて選んでいる。特に振り幅を広げるよう脳の幅を広げるような努力をしている。気になる生地はエバーノートに記録する。
坂口:「楽天マガジン」は扱っている雑誌がたくさんあり、特集の記事だけを画面をスクショして貼り込んでいる。田中さんと共有で使っているツールが「広辞苑」と「類語辞典」なのが意外だった。
田中:「類語辞典」は閃いたりするので、この2冊がないと仕事にならない。発想を拡げるためにも使える。「広辞苑」以外にも「大辞典」も使い、2種類以上で意味を確認するようにしている。