電源部品 (パワー・サプライ) の知識
シリーズ電源とスイッチング電源
シリーズ電源は、AC100Vをトランスで先ず大体必要な電圧に変換してから整流、直流化する。構成は単純だが、トランスは低周波で動作するため重くて大きくなる。
一方、スイッチング電源は、AC100Vをそのまま整流して直流(DC140V)に変えた後、高周波インバータで50kHz以上の高周波交流に変換し、これをトランスで変圧して、再度整流、直流化する。ここで使用するトランスは高周波で作動するため劇的にコンパクトになる。そのため小型化・低価格化を図ることができ、コンピュータ用電源装置として広く利用されている。
シリーズ電源とスイッチング電源の模式図
典型的なスイッチング電源の回路図
動作の説明 : 商用電源(100/200V AC)を一旦整流(交流 à 直流)してから、高周波インバータを用いて約100KHzで発振させる(直流 à 交流)。これを高周波用トランス(トランスが利用できるのは交流のみ)で必要な電圧に変換し、各々の電圧の交流を再度整流(交流 à 直流)して規定の直流を出力する。
マグ・アンプは、磁気的PWM (pulse width modulation: 発振周波数を一定にし、電流の導通時間を制御して定電圧を得る方式) を利用して電圧を一定に保つ働きをする。
各出力は電圧/電流が常時監視されており、異常時(over voltage/under voltage/over current)には出力を遮断する設計となっている。また、電源装置内部温度も常時監視されており、異常温度検知時には同様に出力を遮断する。
電源が立ち上がらない場合の問題判別
[ 現象 ] 電源スイッチを押すが電源が入らない (電源オンのLEDが点灯しない。機械内部でファンの音がしない。)
1. 電源部品の構成
PCの電源関係の部品は、電源部品(パワー・サプライ)、マザーボード、電源スイッチなどで構成されています。
2. 電源が上がる手順
3. 構成と手順より考えられる電源障害の原因
外部要因による電源障害 (出典 : 「NIKKEI BYTE/JUNE 1995」)
1. 「瞬断」=「瞬時電圧低下(瞬低)」: 70m-200msの間、電圧の低下する現象。
原因 : 電力会社の送電系統の切り換え (通常1本の送電線は障害対策のために2系統で構成されている。送電線の保護リレーが異常(落雷等)を検出すると系統の切り換えが行われる。この時「瞬断」が発生する。発生頻度は各電力会社の管轄範囲内で10数回/年。)
2. ラッシュ・カレント(Rush Current)
機器のスイッチを入れた時に、電源装置の整流回路のコンデンサに流れる大電流(100-200A)のこと。この時にブレーカーの接点が一瞬閉じかける為に電圧が低下し、1 Cycle(17-20ms) 程度の短い瞬断が発生する。
3. ビルの受電装置(トランス)への負荷の増大
トランスの電力供給能力に対して負荷(電流)が上限近くになると電圧が下がり瞬断が起こる。
4. 誘導電圧
ビル近くの線路を電車が通過する時に誘導電圧によりUPS(無停電電源装置)の電圧が異常上昇し壊れたケース。
5. モーター系機器(掃除機,扇風機)の併用
モーター系機器は、電力の波形を歪め、電圧の実効値を上げたり下げたりする。よって同じ系統のコンセントを使用している時は要注意。
6. 電源装置の不良
スイッチ・オン時にノイズが発生し、電源装置の2次側(直流5,12V)に高い電圧が発生するケース。
一般的なPC電源の対瞬断能力
電圧 : 90V以上 瞬断 : 20ms以下