敷地面積は約1,000㎡。事業計画としては将来の分割も視野に入れて、一つの大きな集合住宅ではなく、戸建サイズの賃貸を複数棟建てる案を採用。
館名 ラクール (La Cour) の由来 : フランス語で中庭の意。中庭を囲む小さな街並みを作るのでこの名前とする。中庭を意味する言葉としてはスペイン語のパティオの方が有名だが、弊社の既存物件がフランス語名 (ソレイユ=太陽、リバージュ=川岸) を付けているためそれに合わせた。
黒い戸建て7棟(ただし内6棟は、1F/2Fで分けて賃貸する)で構成される「黒い街並み」。昨年リリースした「白い街並み」のショコラとは対照的。(二つの街並みは、実はすぐ近くにある!)
2018年12月竣工 鉄骨2階建
設計・施工 : 積水ハウス株式会社
住所 : 埼玉県戸田市笹目 1丁目40-10
最寄駅 : JR埼京線 北戸田駅 西口 徒歩 14分
今回の物件の目的
多くの大規模開発地で段階の世代が高齢化を迎え、大規模マンションやニュータウンも活気を失ったり、空き室・空き家が増加したりと社会問題となっている。理由の一つに、それらが分譲物件であることが挙げられる。賃貸物件であれば、入居者層の新陳代謝が常に図られ、当初のデザインコンセプトが守られ、管理会社により美観が維持される。高齢化社会を迎えた日本に賃貸のメリットを改めて訴求したい。しかも高品質で長く安心して使用できる賃貸住宅を。
将来的に売却の必要性が生じた時に備えて、土地・建物をスムーズに分割できるように配慮する。そのため、複数の戸建住宅の体裁を取るが、一方で分譲住宅地と同じにならないように中庭を設けるなどの差別化を図る。
二世帯住宅ならぬ、二世帯賃貸住宅の提案。(親・子、それぞれの家族のライフスタイルは年々変わっていくため、高価な二世帯住宅を建築しても、間取りを活かしきれない、もしくは住宅ローンが子供世代に残ってしまうなどのリスクとなる。そのリスクを抑えて、必要な時に必要な間取りを賃貸という形で最も効果的に入居者様に利用していただく。当物件の中で親子が別所帯で契約される場合、どちらか一方の家賃を割り引くなども将来的に検討。)
コンセプト
統一した邸宅感、街並み感を戸建住宅7棟と中庭(ガーデン)で実現する。
分譲住宅地でも街並み感は出せるが、複数の建物の集合体からなるひとつの塊(例、回廊で結ばれた大きな邸宅)感を出すことはできない。なぜなら個々の所有者様が各々の住宅で個性を発揮したいと思うのが当然であるため。行政が景観条例で一定の統一感を持たせることはできるが、全体設計は無理。しかし賃貸であれば理想の統合的な設計が可能となり、分譲住宅地との差別化が図れる。
共有スペースであるガーデン部分を広く取る (一般的に分譲住宅地では困難)。また一般的に集合住宅では将来のメンテナンスを考えて手入れの比較的容易な植生を採用する傾向があるが、当ガーデンではあえて手入れの必要な植生とする。剪定や花の植え替えなどの手間はかかるが、個人では難しい日常的な手入れを管理会社がすることにより他の集合住宅との差別化を図る。
近くの笹目川沿いに近年整備された広い遊歩道、また車で10分程度の道満公園はペットの散歩にも適している。よって積極的にペットも共生できる賃貸住宅とする。特にD棟(戸建て)、G棟1Fは土間を取り入れ、大型犬をも入居可とする。
2017年度の新築物件ショコラは南欧の街並みを想像させる「白い街」だったが、2018年の当物件は「黒い街」。過去に黒い板塀を使った武家屋敷や醸造蔵の古い街並みがあったが、現代の黒い住宅街はほとんど見たことがない。果たして黒い街並みはどのような印象を与えるのか。 (検索ワード : 黒壁の家 黒い外観 黒い外壁の家 戸田の黒い家 黒い家並み 黒い街 黒い街並み 集合住宅)
(積水ハウス 及び 当社で検討を重ねた末の最終形模型)
* 外壁は当初黒い木調(黒塀風)を検討したが、求める質感とは違ったため黒のタイル調を採用。中心の棟には車寄せを模したキャノピー(カーポート 及び 宅配ボックス置き場)を設置。
特徴は、黒い家並み、統合的な設計、木目の軒天。木目の軒天をベランダ下にも採用するため、ベランダは外壁で囲む仕様とした。
完成予想模型
奥に行くに従いグランド・レベルが上がっていく雛壇状の敷地造成、建物の基本的な配置などをこの段階で決める。
(北側からの視点)
(南側からの視点)
(東側からの視点)
棟の配置図
(図の上が北)
(北側からの視点)
建築経緯
2018/6/6 地鎮祭
2018/6/7 地盤改良開始
コンクリート杭による地盤改良
2018/6/21 基礎工事開始
2018/7/18 建方工事開始
軽量鉄骨造り
2018/7/30 木工事開始
2018年9月 仕上工事
2018年10月 外構・植栽
中庭工事
(2018/7/1 基礎工事中)
(2018/7/15 基礎工事中)
(2018/7/21 建方工事中)
* 建物の外観が出来上がるのは早い。基礎と足場が出来たと思っているうちに、数日見ないと外壁が出来上がっている。ただ、今年は猛暑で鉄骨の温度が高くなり、組み上げに難渋したと聞く。
外壁が組まれた後に屋根が葺かれる。
(2018/7/21 建方工事中)
* 外壁(対衝撃性に優れた基材と裏面に鉄板を裏打ちした、ハイブリッド構造)を内側から見ると、確かに裏が鉄板になっている。鉄骨、外壁、筋交いで建物の強度が保たれている。
(2018/8/29 建方工事 及び 木工事中)
* C棟2Fから、F棟、G棟を望む
* 2Fの天井は断熱材、金属製のスパン、石膏ボードで形成されるのが見える。1F天井の場合は、2Fの床音を防ぐために構造はより複雑で、2Fの床材、高剛性セメント板、吸音材、吊り天井、石膏ボードの構造となる。(シャーメゾンの遮音性能より)
(2018/09/06)
7棟で順次工事を進めているため、なかなか全貌は見えないが、最初のコンセプトにもあるように、戸建て7棟でありながら、7棟全体で一つの構造物と見えるように狙っている。そのため棟を跨いで繋がるように、北側では真ん中の棟に低くキャノピー、左右の棟で対称位置に縦ルーバーを配置した。
(北道路面を東側から写す)
(北道路面を西側から写す)
竣工 (2018/12/10)
A棟
A1 (1階) 間取り
A2 (2階) 間取り (玄関は1階)
B棟 (左側) & C棟 (右側)
B1 (1階) 間取り
B2 (2階) 間取り (玄関は1階)
B2 屋内 (LDKからシステムキッチンを望む。右は洋室)
C棟
C1 (1階) 間取り
C1 アイランドキッチン (明るい南面窓を活かし、他の部屋にはないアイランドキッチンを導入。左に見えるのは洋室)
C2 (2階) 間取り (玄関は1階)
D棟 (戸建て賃貸)
D棟間取り
1階 (DKから土間リビング&吹き抜けを望む。土間リビングはカフェスタイルの生活や大型犬との生活も視野に入れて導入。土間には硬質のクッションフロアを使用しているため、タイルのように冷たくはなく、スリッパ生活も可。正面窓は3分割式とすることで、大きな間口の解放感が得られる。窓幅が広いため、シャッターは電動式。専用ベランダには水道も用意)
2階 (LDから洋室を望む。用途を決めずに自由に使えるようにあえて仕切りはない。移動棚や衝立などを設置することで、子供部屋や寝室とすることも可。南面窓は1階と同じものが使用されているため、大きな間口の解放感が得られる。窓幅が広いため、シャッターは電動式。)
E棟
E1 (1階) 間取り
E1 屋内 (LDKからキッチン、洋室のライトスルースクリーンを望む)
E2 (2階) 間取り (玄関は1階)
E2 屋内 (各戸に一部屋、折り上げ天井を設置。物入は階段上部を有効活用したもの)
E2 屋内 (LDKから洋室のライトスルースクリーンを望む)
F棟 (真中)
F1 (1階) 間取り図
F1 屋内 (LDKから玄関側を望む)
F2 (2階) 間取り図 (玄関は1階)
F2 屋内 (キッチンからLDK & 洋室を望む)
F2 屋内 (洋室側からキッチンを望む)
G棟 (真中の黒い建物)
G1 (1階) 間取り図 : 土間リビングが特徴
G1 : 大型犬との生活にも対応した土間リビング
G1 : 居室側から土間リビング 及び ベランダを望む
G2 (2階) 間取り図 (玄関は1階)
G2 : リビングと居室
G2 : ベランダから中庭を望む
ドローン空撮 (中庭上空、左にA, B, C棟、正面がD棟、右に少し見えるのがE棟)
夜景 (正面に館銘板)
D棟
シンメトリックな B棟(左) と C棟 (右)
中庭からE, F, G棟を望む