第6回 2017.10.14 コンサルティング・アウトソーシング(にの)

この研究プロジェクトでは、大学で働く「新しい専門職」に焦点を絞っています。大学に求められる新たな役割に応じて、あるいは、これまでも存在した仕事の「専門職化」に即して雇用されるわけですが、大学はそれとは別の方法を採ることでそうした解決のためのノウハウを持っていない課題に対応しようとすることがあります。その一つは、外部のコンサルティング企業、団体等に業務を委託する(アウトソーシングする)というものです。

実は、1960年代にはすでに大学向け―正確には学校法人向け―のコンサルティング事業は存在していて、そのほとんどは細かく煩雑で、文書化されていない規則がある膨大な書類作成が必要となる短大・大学の新規設立に向けた助言ビジネスだったのですが、その時代に比べれば広い範囲の分野が商売の対象になっているようです。以下、いくつかの企業、団体等を挙げてみます。


  • 塾・予備校ほかによる教育サービス

河合塾グループ サービス案内「大学支援」

株式会社ナガセ 中途採用案内「大学向けコンサルティング営業」

ブリティッシュ・カウンシル「高等教育の国際連携」

株式会社ベネッセ i-キャリア(アイキャリア)「大学支援・キャリア教育支援サービス」

Z-KAI「大学向けソリューション」


  • 総合コンサルティングによる経営サービス

株式会社三菱総合研究所「大学経営、イノベーション政策」

アビームコンサルティング「教育機関向け 改革・改善ソリューション」

アクセンチュア「高等教育機関・大学向けサービス」

日本総研「大学経営」

公益財団法人日本生産性本部「大学経営トータルサポート」

日本経営システム株式会社「公企業体コンサルティング 学校法人改革」

株式会社矢野経済研究所「YRI 教育事業」


  • 書店・メディアほかによる各種サービス

紀伊国屋書店「教育・研究活性化支援」

丸善雄松堂株式会社「大学経営コンサルティング」

廣告社株式会社「高等教育関連マーケティング・データ」

日経BPコンサルティング「戦略のある大学広報」


  • 大学、教育機関にターゲットを絞った各種サービス

大学プロフェッショナルセンター http://www.nv-professional.jp/

大学イノベーション研究所 http://research.under.jp/index.html

NPO法人NEWVERY(ニューベリー) http://www.newvery.jp/

株式会社学び http://i-manabi.co.jp/

コアネット教育総合研究所 http://core-net.net/


  • 就職情報関連企業、人材紹介企業ほかによるキャリア系サービス

株式会社リアセック「法人・学校関係者向けサービス一覧」

フォースバレー・コンシェルジュ株式会社「大学向けコンサルティング」

ネッツ人材総合サービスサイト「大学向けコンサルティングサービス」


これらの企業、団体等で働く人びともまた「新しい専門職」と重なることがあるのかもしれません。実際、大学で働く「新しい専門職」は任期付き雇用(期間の定めのある雇用契約を結ぶ)で採用されることが多く、その前職、あるいは、任期終了後の次の勤務先で、同じ仕事を行う事例もあるようです。

伝統的な大学教職員の立場からすると、とりわけ教育サービスを外部に委託することや(他方、そもそも大学教育が長年の間、非常勤講師に依存していたことはアウトソーシングという意味であって、根の深い問題でもあります)、経営サービスに関して大学経営などということについて考えなければならないことについて抵抗を感じることがあるでしょう。しかし、たとえば、学生の中退「予防」、受験生の増加、合格から入学までの学力・意欲の向上を兼ねつつの「リテンション」、新しい学部・学科に関するマーケティング、競合校の情報をふまえた経営戦略の策定、大学経営に従事する優秀な事務職員の確保などに関して、大学はその方法について必ずしも詳しいわけではありません。教職員が本来業務の片手間に行っていて、必ずしも成果が得られていないということもあります。大学の抱える「新しい」課題に対して、外部の機関から提供される「ソリューション」を拒むことは難しいでしょうか。

もちろん、問題がないわけではありません。「新しい専門職」の能力開発や雇用の安定、受験生・学生の支払う授業料や政府からの交付金・助成金が大学を通じて外部の企業、団体に支払われること、提供されているサービスの量と質の適切さ、こうした問題はこれまであまり検討されてこなかったはずです。「新しい専門職」に強く関連する問題として、機会を見つけて考えてみたいです。