第2回 2017.5.7 特任教員であることの難しさ(よし)

まず特任教員って何?ということですが、任期付教員(有期雇用の教員)の一形態です。大学によって呼び方に違いがあるものの、特任教授、特任准教授、特任講師、特任助教といった職名が一般的だと思います。なお任期付教員の背景には、1997年「大学の教員等の任期に関する法律」の存在があります。

従来の大学教員の業務の範疇ではない多様な業務を担うのが特任教員だといえます。特任教員(FD担当)、特任教員(キャリア支援・教育担当)、特任教員(IR担当)、特任教員(URA担当)、特任教員(男女共同参画推進担当)等など。本科研の課題でもありますが、特任教員になるには様々な経路があります。わたしのように大学院を出てそのまま移行した者、企業での勤務経験を経て特任になる者、他には例えばスチャダラパーのBoseさんのような有名人も特任教員という形で大学教員となっています。

わたしの専任教員としての初職は、文科省による時限付補助金事業「大学生の就業力育成支援事業(就業力GP)」の特任教員でした。ところが着任数か月後に就業力GPは行政刷新会議にて「事業仕分け」対象となり、廃止が決まりました。当時「事業仕分け」についてメディアが盛んに報じており、自分の職がこうした形でなくなることにやりきれなさを感じたことを覚えています。ただ事業は廃止となりましたが、勤務校の教職員のみなさんのご尽力により雇用継続となりました。その後ご縁があり大学を移り、そこの任期切れにともない現在の勤務校に移りました。

以下、特任教員であることの難しさをわたしの経験、またわたしが見聞きしたことから書いてみたいと思います。まず、雇用の不安定性があげられます。学生支援等をする特任教員も多いと思いますが、学生の卒業より教員の「卒業」のほうが早いことも多く、見通しが立てづらいということがあります。「先生、来年度どうしようか?」と一緒に事業を行なっている学生に聞かれたことがありますが、「来年度僕はいないよ」とその時は言えませんでした。また、メンバーシップのなさや同僚の少なさも特任教員、特に非学部組織(キャリアセンター等)所属の特任教員であることの難しさだと感じています。

特任教員は形式的には教員ですが、従来の大学教員のように学部や大学院に所属する「メンバー」ではありません。所属したとしても他の教員は「任期なし」教員であり、自分とは様々な点で違いがあります。また、非学部組織に所属する特任教員は非常に少ないのが現状です。特任教員は従来の教員と事務職員のそれぞれの要素を兼ねる立場であり、事務職員と協働しての仕事も多いのですが、事務職員の「メンバー」でもありません。すなわち、特任教員は従来の大学教員の「メンバー」でも事務職員の「メンバー」でもなく、かつ同僚の少ない状況下で仕事をしており、いわば「大学内部の外部者」という位置づけにいるのです。

以上のことがどこまで一般性を持っているのかわかりません。こうしたことを研究するのも、本科研の大切な仕事だと考えています。