日本語を学ぶ個人的意味を考えさせる実践-日本語中上級で進行中の活動の紹介

要旨

APUの日本語クラスではしばしば、日本語を学ぶ目的や意味を見失った学生が見受けられる。本発表では、このような学生から日本語学習への意欲や自律性を引き出す試みとして、今学期の日本語中上級で行っている活動の構想過程と、発表時までの成果を紹介する。


本活動の構想は、発表者①が先学期担当した中上級クラスのある学生が、学期末に「考えるべきだったことを考え始めた」と述べたことに着目し、インタビューしたことに端を発する。その学生は、幼少時から中高生にかけ生きにくさを感じた経験があり、その後、自分らしく自由に生きられる国として日本を留学先に選んだ。しかし来日して以来、その動機と日本語学習をつなげて考えることがなく、それが「考えるべきだったこと」と語った。つまり、クラスでの活動が自身の留学の目的と日本語学習を捉え直す機会となったのである。これを受け発表者①は、上記の学生の例をモデル作文とし、学生が個人的経験に基づく日本語を学ぶ理由を、クラスメイトと共に考えながら書く作文活動を立案した。


本発表では、上記過程の概要、および各発表者のクラスでの注目すべき事例を提示し、APU日本語コース全体における本活動の意義を聴衆と議論したい。また将来的には、本例における先学期の振り返り、新たな活動の構想と教師の協働的実践というプロセスを実践研究(細川、三代2014)の観点から、研究論文等としてまとめることを目指す。