中国語文の処理・産出能力における知覚訓練の有効性に関する検討

Abstract

本学の中国語の中上級レベル学習者のリスニング能力は比較的高いが、文の産出や意思のスムーズな表現に難しさを感じている学生は少なくない。また、習得が比較的難しい文法である“把”構文(処置文)、能力・動作を実行する可能性を表す助動詞“能・会・可以”、可能表現、比較表現、動態助詞“了・着・过”などの習得・定着・応用に関する課題も多く残っている。

Bongaerets(1999)は実験を通じ、成人学習者の第二言語の学習の成功は、3つ要因の組み合わせによるものだと主張した。それは、(1)高いモチベーション(high motivation)、(2)第二言語の大量のインプットへの継続的なアクセス(continued access to massive L2 input)、(3)第二言語の発音の知覚と産出に関する集中的な訓練(intensive training in the perception and production of L2 speech sounds)である。また、第二言語習得と言語脳科学に基づいた研究(篠塚、2008)では、神経細胞のニューロンと神経回路網の構造・働きは学習や経験により容易に変化する可塑性をもち、ジェームス(2006)は、短期間かつ高頻度でニューロンを刺激しシナプスの伝達率を数日で増強することで、神経細胞が繋がり情報伝達がしやすくなると発表した。

本発表では先行研究での知見に基づき、学習者にとって習得が困難な文法事項に中日同形類語の単語を取り入れた文シャドーイングの集中的な訓練を通して中国語の発音や文に対する認知・保持・処理及び文の産出能力を向上させるための知覚訓練法の構想を報告する。