アカデミック・ライティング授業における自己修正を促すための作文指導とは

要旨

日本語教育における作文授業では、学習者の作文をフィードバック(以下、FB)する際に、教師が添削して返却するのが一般的である。しかし、これが学習者の書く力を向上させるのに効果的か甚だ疑問である。実際、作文を再提出させたところ、作文の内容について教師が書いたコメントをそのまま写して提出した例が挙げられている(坂井、1998)。では、どのようなFBが効果的なのであろうか。APUの日本語初級クラスでは、作文の誤用に下線を引くというFBを行っているが、この方法では誤字脱字等といった表層レベルでの修正は行われるものの、内容面での修正が行われにくいと石橋(2000)は報告している。しかし、日本語の能力が高いと自己修正の頻度が上がるという調査結果が出ており、日本語上級になれば段落や文章全体の構成、内容等の自己修正も可能になると予想した。自己修正は、学習者が自律的に誤用に気づくための機会を与えることができ、それが学習の内在化に効果的であることが利点として挙げられる(石橋、2000)ことから、長期的なライティング能力の向上へと繋げるために、本実践では下線を引くだけの明示的な誤用指摘を行うことにした。調査対象者は、日本語上級・超級学習者5名であり、4つのトピックで作文を書いてもらい、学習者がどの程度自分の誤用に気づいて修正できるのか、また誤用を指摘された箇所以外でも学習者は作文を修正できるのかを検証することにした。