(最終更新:2021年1月6日)
教科書:野矢茂樹『論理学』(1994年、東京大学出版会)(必ず購入すること)
野矢茂樹『論理学』(1994年、東京大学出版会)を輪読。毎回参加者をランダムに指名、演習問題をホワイトボードにひたすら解いていくことを繰り返し(オンライン開講の場合はなので、悪筆を自他共に認める担当教員がひたすら共有画面で解いていき)、最終的には「ゲーデルの不完全性定理」までの理解を目指し以って、一般教養としての古典論理学の基礎に習熟せんことを目論む。期末筆記試験あり(公式シート教科書以外持ち込み不可)。内容は以下の順序である。なお初回の前に、序論「論理と言語」(全10ページ)に目を通しておくこと。
1. 命題論理の意味論
2. 命題論理の構文論
3. 述語論理前史と述語論理の基本概念
4. 述語論理の意味論と構文論
5. パラドクス前史とラッセルのパラドクス
6. 形式主義とメタ論理
7. 直観主義論理:排中律の拒否
8. 直観主義命題論理の公理系LIP、意味論、妥当式
9. 不完全性定理の証明(1)
10. 不完全性定理の証明(2)
11. 公理系の内と外
関連して気楽に読める著作として、同著者による『無限論の教室』(1998年、講談社現代新書)や『まったくゼロからの論理学』(2020年、岩波書店)も挙げておく(前者は教科書後半部分の物語仕立てとしてお勧め出来るが、しかし後者については、教科書を読み込むことの方が有益なので、敢えては購入する必要は全くない)。なお、欠席は原則不可であるが止むを得ず、葬儀等で欠席する場合は、ゼミ開始時刻までに、理由を含めて担当教員に電子メールで連絡すること。加えて、事後的にでも良いので、証明書あるいはそれに代わる証明書類を提出せよ(例えば、欠席者本人も被写体に取り込まれた葬儀の写真などでも構わないとも言えなくはないであろうが、ここは欠席者自身の良識が試される場面でもあることに他ならない)。これを怠った場合、単位を取得することは出来ない。同様に、参加態度に少しでも欠陥が認められる者も、当然単位を取得することが出来ない。
教科書:古沢泰治・塩路悦朗『ベーシック経済学 新版』(2018年、有斐閣)(必ず購入すること)
担当者は文科系一般教養に位置する本科目の名に於いて、平成30年度は「ミクロ経済学」(教科書:小川光・家森信善『ミクロ経済学の基礎』2016年、中央経済社)、平成31年・令和元年度は「計量経済学」(教科書:田中隆一『計量経済学の第一歩』2015年、有斐閣)を取り上げてきたが、本年度は、古沢泰治・塩路悦朗『ベーシック経済学 新版』(2018年、有斐閣)を用いて、「マクロ経済学」に重点を置いた解説を行う(ちなみに令和3年度は、阿部・大坂・大野・佐藤・佐藤・中谷・二宮・伴『資本主義がわかる経済学』(2019年、大月書店)を使用して「マルクス経済学」に重点を置く予定)。
より具体的には、GDP及びそれに関する諸概念に触れた後、教科書前半のミクロ経済学パートの中から第5章「企業行動と財の供給」を学ぶ。第5章を抜き出す理由は、第14章「人々の将来予想と経済変動」において、企業の価格設定の知識が前提とされるためであるが、但し、教科書の内容を拡張し、近年担当者らが提唱している「市場支配度指数アプローチ」、即ち、「ゲーム理論に直接依らずして不完全競争のエッセンスを展開する方法論」も併せて紹介する。そうして不完全競争的マクロモデルについても考察を行い、出来ればここで、「市場支配度指数アプローチ」との接合を試みて、最終第16章「日本経済とマクロ経済学」までカヴァーする(注)。なお、講義の構成としては、以下を予定している。
1. GDPとは?(教科書第9章)
2. GDPに関連する諸概念(教科書第10章)
3. 企業行動と財の供給(教科書第5章)
4. 市場支配度指数アプローチに基づく不完全競争の理解(こちらの動画の理解を前提)
5. 長期モデル1:総生産の決定(教科書第11章)
6. 長期モデル2:物価水準(教科書第12章)
7. マクロ経済の短期モデル(教科書第13章)
8. 人々の将来予想と経済変動(教科書第14章)
9. 不完全競争的マクロモデル(Mankiw (1988) "Imperfect Competition and the Keynesian Cross," Economics Lettersや、西村清彦(1989)「マクロ経済学:不完全競争分析」、伊藤元重・西村和雄編『応用ミクロ経済学』安達貴教(2021)「不完全競争の一般均衡モデルで考える競争政策の意義 」に依拠)
10. 日本におけるマクロ経済学的話題:「失われた10年」とアベノミクス(教科書第16章)
11. 新型コロナウィルスのマクロ経済学(田中聡史(2020a)「新型コロナウィルスのマクロ経済学(1) 感染症拡大防止政策のトレードオフ」『経済セミナー』2020年8・9月号、田中聡史(2020b)「新型コロナウィルスのマクロ経済学(2)」『経済セミナー』2020年10・11月号)
Jaffe, Minton, Mulligan, and Murphy, Chicago Price Theory (2019, Princeton University Press)に沿って、価格理論の基礎と応用について解説する(英語での講義)。「シカゴ大学の価格理論」の伝統は基本的には部分均衡的フレームワークにおける完全競争を前提とするものの(注)、価格理論の現実説明力を重視する点に於いて、近年担当者らが提唱する「市場支配度指数アプローチ」、即ち、「ゲーム理論に直接依らずして不完全競争のエッセンスを展開する方法論」と親和性が高いものと期待される。そこで両者の有機的接合を試むことに挑み、そうして、不完全競争をベンチマークとしながら公共政策や競争政策の諸問題がどのように考察され得るかについての検討に重点を置く。なお、数学的な議論を補うためには、例えば、Jehle and Reny, Advanced Microeconomic Theory, 3rd Edition (2011, Pearson)などを参照できるようにしておくこと。 --> 終了
--> (2020年8月1日) 本科目を講義したことから得られた研究成果:
"Chicago Price Theory Meets Imperfect Competition: A Conduct Parameter Approach"
"耐久財の静学モデルと動学モデル:森嶋の「耐久財のディレンマ」再考"『経済セミナー』2021年2・3月号掲載予定