(最終更新:2025年10月30日)
2025年10月30日:昨日(10月29日)、学内での関係教員有志が集まり、カジュアルに進めるインナーの研究会におきまして、現在進行中の研究の一つである「連続する合併はますます有害か?3G-4G時代における欧州移動通信産業からの実証分析」(David J. Salant氏との共同;"Are Successive Mergers Increasingly Harmful? Evidence from Europe's Mobile Telecommunications Industry during the 3G-4G Era")を報告させていただきました。多くのご議論をいただき、今後、更なる改善を図っていかなければならない諸点が明確となりました。このような貴重な機会を与えていただきました、主催の岩﨑康平、淺井顕太郎、中林純の三先生とご参加の方々に深く感謝申し上げます。
2025年9月18日:【京都大学経済学部生2回生向け情報提供】来年度の演習の紹介は以下となります。詳細につきましては、後日、教務掛からの事務連絡を確認するようにお願い致します。
前期は、成田悠輔・矢田紘平(2021-2025)「データで社会をデザインする 機械学習・因果推論・経済学の融合」(『経済セミナー』連載)の輪読から始めることによって、データ・サイエンス的手法と、ミクロ経済学/ゲーム理論的知見の相互連関の可能性を探ることに主眼を置き、後期への基礎作りとしたい。後期は、現時点では、M. Shum (2020) Econometric Models for Industrial Organization (available online)の輪読を考えているが、最終的にどのテキストを選ぶかは、演習参加者と相談の上、決定する。全体として、競争政策や産業政策に関わる産業組織論の研究に資する内容となる。
追記(9月30日):本年度後期は、予定通り、上武康亮・遠山祐太・若森直樹・渡辺安虎『実証ビジネス・エコノミクス』(2025年、日本評論社)の輪読を行っています。来年度後期は、上記の教材の他、川口康平先生がオンラインで提供している教材の輪読・実習も候補の一つと考えています。(10月20日):Jaffe, Minton, Mulligan, and Murphy (2026), Chicago Price Theory, 2nd Editionも輪読候補に考えています。
2025年9月8日:去る9月5日、京都先端科学大学・京都太秦キャンパスで開催されました、京都で開催する応用ミクロ経済学・ワークインプログレス研究集会にて、現在進行中の研究「連続する合併はますます有害か?3G-4G時代における欧州移動通信産業からの実証分析」(David J. Salant氏との共同;"Are Successive Mergers Increasingly Harmful? Evidence from Europe's Mobile Telecommunications Industry during the 3G-4G Era")の途中経過について報告を致しました。当該研究での初の口頭報告の機会となります。お陰様で、今後クリアーにしていかなければならない諸論点が浮き彫りになり、ご参加の皆様方、並びに開催にご尽力をいただきました難波敏彦先生には深く感謝申し上げます。
2025年6月15日:【京都大学経済学部生向け情報提供】本年度の当演習では、6月一杯で川口康平・澤田真行『因果推量の計量経済学』(2024年、日本評論社)の輪読を終える予定です。7月中は、次学期に輪読予定の上武康亮・遠山祐太・若森直樹・渡辺安虎『実証ビジネス・エコノミクス』(2025年、日本評論社)の準備を兼ね、産業組織論の古典を現代的視点から読む試みとして、伊藤元重・清野一治・奥野正寛・鈴村興太郎『産業政策の経済分析』(1988年、東京大学出版会)から以下の諸章の輪読を予定しています。ここで、「現代的視点」とは、(1) 40年後の視点から当時の日本や世界が置かれていた政治経済的状況をいわば後知恵的に振り返ってみようという回顧的意味(温故)と、もう一つは、(2) 40年前のトゥールであったとしても現代で生じている問題の分析にも十分役立つのではという期待的意味(知新)を指します。もっとも、「古典を読む」とは、常にそうした「現代的視点から読む」作業に他ならないわけではありますが笑
第3章 産業構造の変化と産業政策
第4章 幼稚産業保護論-展望
第5章 産業確立のセットアップ・コストと「マーシャルの外部効果」
第6章 規模の経済性と情報
第7章 産業構造の選択と経済厚生
第8章 戦略的行動とナッシュ均衡
なお、夏・秋休み中には一日を使って(大文字山に登山後)、各自が選んだ研究論文の解説を行っていただく「特訓日」を予定しています。←【9月10日追記】9月某日実施:9:30~11:10登山、11:10~12:30近隣の某ラーメン店・昼休み、12:30~20:00ゼミ
取り上げた論文:
M. Nishida (2015) 「戦略的ネットワーク選択モデルの推定:沖縄におけるコンヴィニエンス・ストア産業」("Estimating a Model of Strategic Network Choice: The Convenience-Store Industry in Okinawa")
佐久間義浩(2008)「日本市場における財務諸表監査の経済的機能に関する検証」
C. I. Jones and C. Tonetti (2020) 「非競合性とデータ経済学」("Nonrivalry and the Economics of Data")
追記(7月19日):個人的には、日米貿易摩擦、コメ市場開放、ジャパン・バッシングなどといった言葉が躍った40年前(1980年代)の政治経済状況を振り返るために、最近では(順不同)、村上泰亮『反古典の政治経済学 上・下』(1992年、中央公論社)、中曾根康弘・佐藤誠三郎・村上泰亮・西部邁『共同研究「冷戦以後」』(1992年、文藝春秋)、柄谷行人・岩井克人『終りなき世界』(1990年、太田出版)といった書籍を再読し(学生時分以来笑。いずれの書籍も品切であることが惜しまれますね)、その過程で、高坂正堯『平和と危機の構造』(1995年、NHK出版/2024年、中公文庫)にも触れることができました。特に同書の第6章「「競争力」という妄想」では、1995年当時の「戦略的貿易理論」が、規模の経済性、外部性、不完全競争に着目している点を評価しつつも、「競争力重視の理論は、いくつかの点で間違っており、それゆえ危険な妄想だと言わなくてはなりません」(2024年版、p.141、強調は引用子)とし、「全体として、われわれは経済関係の対立的側面を誇張すべきではない」(p.142、同)、「基本はやはり市場経済と自由貿易ということになります」(p.148)と述べています。高坂の慧眼をどう受け止めるのか、21世紀に生きる読者の思索を促す内容となっています。
2025年4月26日:去る4月17日、公益財団法人・稲盛財団による2025年度稲盛研究助成金贈呈式に合わせて開催された「盛和スカラーズソサエティ(3S)」交流会において、ポスター発表を行いました。このイヴェントは、過去の研究助成対象者(弊職は2016年度の対象者)が、最新の研究内容をまとめたポスターに基づいて、多様な分野の参加者に対して解説する趣旨のもので、計22名(自然科学系15名、人文・社会科学系7名)の研究者が研究成果を説明し、関係する参加者からの質疑に応じました。弊職の発表題目は、「不完全競争下における従量税・従価税の厚生的・分配的帰結に関する公式の図解的解説」で、税や為替の変化に代表されるような外的ショックが、価格転嫁(パススルー)を通じて、経済の効率性にどのような影響がもたらされるのか、そして異なる経済主体間にはどういった影響の違いがもたらされるのかを解明しようと研究の一端を紹介させていただきました。普段お会いする機会が中々ない、経済・経営系以外の研究者との接点の場をご提供いただいた、財団関係者のご尽力に心から感謝申し上げます。
2025年3月28日:「第6回・台湾と日本の主導的4大学による合同経済学シンポジウム」(於大阪大学中之島センター)において、現在進行中の研究「内生的な品質選択を伴う不完全競争下における課税、転嫁、および帰着」(土居直史氏との共同;Taxation, Pass-Through, and Incidence under Imperfect Competition with Endogenous Quality Choice)についての報告をさせていただきました。オーガナイザーの先生方並びにご参加の方々・事務サポートの皆々様に深く感謝申し上げます。なお、失念しておりましたが、3月3日に、研究書『不完全競争の経済学に向けて 市場支配度指数アプローチ』(勁草書房)を出版いたしました。前著『21世紀の市場と競争 デジタル経済・プラットフォーム・不完全競争』に引き続き、勁草書房編集部の黒田拓也様からご編集を担当いただきましたことに厚く御礼申し上げます。なお、本書出版に際しては、日本証券奨学財団様並びに京都大学経済学会からの出版助成を受けましたことにも、改めて感謝申し上げます。
2025年2月5日: 弊学の学際融合教育研究推進センターが主催する「京大100人論文」(1月27~31日)において、経営・経済分野を代表し、弊職自身の研究テーマに関してポスター発表をし、また、トーク・セッションに登壇しました。会場には、各分野からの参加者の研究に関するポスターが常置されており、来場者は、付箋に自由にコメントを書き残すというユニークな形式の研究交流の集いと理解しております(写真はこちらとなります)。弊職は、「競争政策の経済学」について紹介させていただいたほか、各分野からの研究者10名ほどと、学問分野ごとの違いをざっくばらんに紹介するオープニング・セッション、更には、他分野の研究者5名ほどと「学問と社会の地続き性」について議論するトーク・セッションに登壇しました。付箋のコメントには全て目をを通させていただき、今後の研究の方向性に対する指針が与えられたと同時に、広く、社会と学問の関係性について、ご来場の皆様と共に考える機会が与えられました。コーディネーターの宮野公樹先生を始めとするセンターの皆様並びに本イヴェントに関係された皆々様に深く御礼申し上げます。