ハードSF杯1505

結果発表

◎評価方法の変更

HSF杯1505に、「The Blue Rose」〔虚白〕、「さよなら、Detritus」〔蒼ノ下雷太郎〕の二作品の応募をいただきました。虚白さま、蒼ノ下雷太郎さま、ありがとうございます。

さて、二作品の応募をいただきましたので、HSF杯1505を不成立とするのももったいないと思います。かと言って、どちらが高ポイントかという評価をするのも野暮かと思います。そこで、私、宮沢弘と、虚白さま、蒼ノ下雷太郎さまの互いの感想をここに挙げることで、評価に代えたいと思います。

何作品の応募で成立とするか、またどれだけ多くの応募を得られるようにするか、評価方法については、今後また検討課題とさせていただきます。

◎結果(感想)

○The Blue Rose 著 虚白さま

感想1:

  • メタ的な世界だが、セリフ、内言、ウロボロスにより「世界の完結」,あるいは「世界が完全になったこと」を示しているとも思えるが、その部分の引きが弱いように思う。
  • 「物語は完結すれば読者は現実世界に帰還する。」とあるが、作品自体はメタ的としても、ではここでの「読者」は何者を想定しているのか。製作者たちか? 実際の読者か? 読者を巻き込むなら、もっと強烈に巻き込む方法はないだろうか?
  • 主人公の世界は、なぜ箱庭だったのか。ホーガンの「未来の二つの顔」のように、箱庭でありつつ現実と接点を持つことは考えられなかったのか。その接点があった場合、主人公の成長と、最後の判断は作品と同じものになっただろうか。
  • 事実を伝えた理由を「お偉いさんの指示」としてあるが、製作者はなぜそれに従ったのか。抵抗したとしたら、どのような抵抗をしたのか。お偉いさんはなぜ事実を伝えるように指示したのか。お偉いさんはプロジェクトの崩壊の可能性を検討しなかったのか。
  • 「いま、僕は、幸せだ。」というセリフで終わるが、そのために情緒に偏りすぎているように思える。むしろこのセリフはいらないか、あるは主人公の表情や行動の描写でかまわないのではないか。
  • 作品内の世界のコピーは存在しないのか?
  • 主人公の行動は突然明かされた事実による動揺によるもののように思える。


感想2:

  • 構造自体はよく出来てると思います。
  • よくある話ではありますが、【被造物が、創造者に反抗する話】としては短くあまり無駄なくまとまってるとは思います。
  • ただ、問題点もいくつか。
    • 教室で部活をやる、ここは必要だったのか。
      • いや多分、他の生徒、botと呼ばれるのを見せる必要があったのかもしれないが。それだったら、授業風景でも学校なら見せるものがあったろうし。教室で部活という、なじみにくいものから始めることで、読者が入りにくいスタートというのはこれは? と。
      • まぁこれは、他が無駄が少ないから目立ってってのもありますが。
    • 管理者権限。
      • 無駄はないけど、よく分からないというか。
      • 何でこれを主人公に与えたのか。
      • AIではなく人にさせるため?
      • いやぁ、だったらそれを納得させる説明も必要だったし、管理者権限を与えておいて「え、死ぬの? ちょ、おまっ!」というのはどうなんだ。創造者、お前本当に頭良いのか、となる。
    • 感情移入しにくい
  • 短い物語だしってのもあるんだが。
    • この物語は被造物が~って話なら、被造物である彼らに感情移入させないと、物語としてどうなのか。させないなら、「あぁ、そう。反抗するんだ」と、どうでもよくなるのでは、と思ってしまう。
      • 特に、ユズハはもっと読者が恋しくなるような描写を入れるべきだったのでは。いや、難しいことかもしれんが
      • あと、単純に珍しい話
        • いや、よくできた話、といってもどっかで見たことある話なんでね。
        • 引用物自体も有名だし。
        • てか、これだったら引用された『マトリックス』を見ればよくない? と思ってしまう。
  • 全体としては構造はよくできてると。
    • ただ、「あっ」と驚かせるようなものではなかったです。


○ さよなら、Detritus 著 蒼ノ下雷太郎さま

感想1:

  • 「東京駅爆破事件」とあるが、もっと大規模な方が主人公や「情報部」の動機をより強く伝えられるのではないか。
  • 作中に登場する小説がうまく機能している。
  • 「しかも、日本の小説まで買っちゃって。スパイお得意の方法でね。」とあるのに対し、赤井の小説が(システムの)検閲などにひっかからないのはなぜか。
  • 「シゲン」は「始源」、「至言」、「資源」など、一体なんだったのか。
  • 二人の世界への対し方の対比が面白い。
  • 最後の章は魔法という新しい文明が芽生えているのか、それとも崩壊の途中でたまたま魔法が現れているのか、そのような魔法が現れている根拠ないし理由がわかりにくい。
  • なんとなくではあるが「ジナス-ZENITH」〔吉田 聡〕と通じる感覚を感じる。通じることの善悪ではなく。


感想2:

  • 現代の流れを見れば、ヨーロッパ=白人社会が世界を主導する立場にないのは明白です。その流れを汲んだ未来像、そこには肌で感じられるリアリティがありました。
  • また、小説を用いることで最終的に世界を破滅させてしまう物語は、「虐殺器官」を彷彿とさせました。筆者様が言葉というものをどのようにお考えなのか? というのが薄っすらと伝わった気がします。会話や叙述にそのアイディアを織り込むと、ストーリーが一層深くなるのではないかな、と思いました。
  • ただ、魔女セツナの登場には少々違和感がありました。最後まで魔法についての説明もありませんでしたし、赤井と羽佐間を遭遇させるためだけに登場させたのなら、もっと別なやり方で再会させたほうがストーリーが盛り上がったのではないでしょうか。
  • 第四話から第五話にかけてすこし展開が急なようにも感じましたが、物語の終わらせ方としてはとても良かったです。読後、もう少し赤井と羽佐間のエピソードが読みたくなるほど、キャラクターが魅力的でした。とてもおもしろかったです。

●告知概要

ハードSF杯 2015年 5月開催告知

私こと宮沢弘がハードSFを読みたい、それだけの理由で開催します。一応、Kuzu / NULL による後援となります。

多数の参加をお待ちしています。

応募は、以下の要項をお読みの上、応募フォームからお願いいたします。

また、同時に審査員も募集します。下の「HSF杯1505審査員募集」の項をお読みの上、ご参加願います。


●ハードSF杯とは

ハードSF杯とは、「小説家になろうに」おいて公開されているハードSFを対象にした個人企画です。

ハードSF杯には、以下の4つの部門があります。

  • 掌編部門: 小説情報の文字数において200字以上5,000字以下
  • 短編部門: 小説情報の文字数において5,001字以上25,000字以下
  • 中編部門: 小説情報の文字数において25,001字以上50,000字以下 (HSF杯1505では募集しません)
  • 長編部門: 小説情報の文字数において50,001字以上100,000字以下 (HSF杯1505では募集しません)

なお、部門は文字数によってのみ規定されており、小説家になろうでの「短編」、「連載」の区分とは別の基準になっている点に注意してください。


●ハードSF杯応募条件

ハードSF杯への応募条件、およびハードSF杯が求める作品の条件は次のとおりです。

なおハードSF杯における "SF" は "Science Fiction" であり、「すこしふしぎ」、「サイエンス・ファンタジー」、「スペース・ファンタジー」などは対象としません。

  1. 「小説家になろう」のアカウントを持っていること。
  2. ハードSFであること
  3. 応募時に完結していること
  4. 一人につき、応募できる作品は一つとする
    • ここで一作品とは、「小説家になろう」のNコードが一つであることとします。
    • 複数作を応募された場合、その方が応募した全作品の応募を無効とします


●賞品など

賞品などは一切ありません。


●ハードSF杯応募方法

ハードSF杯への応募は、作品のキーワードに、以下のキーワードを記載してください。

  • 掌編部門: 「HSF杯1505掌」
  • 短編部門: 「HSF杯1505短」
  • 中編部門: 「HSF杯1505中」 (HSF杯1505では募集しません)
  • 長編部門: 「HSF杯1505長」 (HSF杯1505では募集しません)


加えて次のページのフォームから、次の項目を投稿してください。

項目:

  • 「作者名」
  • 「作品名」
  • 「応募部門」
  • 「小説のURL」
  • 「小説家になろう」のマイページURL

なお、応募作が極めて少ない場合、中止する場合があります。

HSF杯応募フォーム(回答)

●ハードSF杯における作品の評価

◎ハードSF杯評価基準

HSF杯1505における評価項目は次のとおりとします。また、各々の評価項目は1、2、3、4、5のいずれかの評点を得ます。いずれの評価項目も3点をニュートラルとして評価します。

  1. ハードSFらしさ: 1 (らしくない) …… 5 (らしい)
  2. ストーリー・文章: 1 (引き込まれない) …… 5 (引き込まれる)
  3. アイディアの着想: 1 (魅力がない) …… 5 (魅力がある)
  4. アイディアの使いこなし: 1 (使いこなせていない) …… 5 (使いこなせている)
  5. トリック・どんでん返し的要素: 1 (ある) …… 5 (ない)


上記の2、3、4はいずれも1の「ハードSFらしさ」と類似の評価内容が含まれます。作品のハードSFらしさにより重きを置くために、1の「ハードSFらしさ」を設けています。

以下の項目については、その登場や描写は、評価項目1の「ハードSFらしさ」や評価項目3の「アイディアの着想」において評点を下げる可能性があります。

  • VRMMOや、それに類するもの
  • 転生や憑依
  • 変身
  • 魔法
  • 超能力や異能、その他の特殊能力
  • 巨大ロボット
  • ファンタジー的要素
  • コメディー的要素
  • 恋愛など情緒に主眼があるもの


ただし、これらの要素が存在することが、評価項目1の「ハードSFらしさ」と評価項目3の「アイディアの着想」の評点が下がることに直結するわけではありません。これらの要素が存在しても、「ハードSFらしさ」が存在すれば、これらの要素は問題とはなりません。ただし、これらの要素が強く出ているような場合、作者に「どの点を持ってハードSFと認識されたのか」などの質問をさせていただく場合があります。


◎ハードSF杯評価方法

HSF杯1505では、全ての評価項目の評点の合計を、その作品の評点として結果を求めます。最高点を得た作品が、各部門の優勝作品となります。

審査員が複数になった場合、審査員全員が全ての作品の全ての項目を評価するとは限りません。その場合、項目を評価した審査員がつけた評点の平均値を、その作品のその項目の評点として扱います。例えば、三人の審査員がいて、ある作品のある項目には二人しか評点を与えなかったとします。その場合、その評点を3で割るのではなく、2で割るように扱います。


●HSF杯1505予定

  • ハードSF杯 2015年 5月開催予定
  • 告知: 2015年 5月 16日
  • 締め切り: 2015年 6月 30日
    • 2015年 7月4日に変更
  • 結果発表: 2015年 7月 31日


締め切りについては、応募フォームで見ることができるタイムスタンプが2015/7/04までのものとします。


●HSF杯1505審査員募集

ハードSFを好む審査員を募集します。以下のページのフォームから登録してください。

審査員については、基本的にこちらで審査することはありません。ただし、「好きな作品」があまりに主旨から外れる場合、確認させていただく場合があります。


URL: HSF杯1505審査員登録フォーム

項目:

  • 「お名前」
  • 「好きな作品(複数可)」
  • 「小説家になろう」のマイページURL

審査員登録はフォームで見ることができるタイムスタンプが2015/6/30までの方とします。

HSF杯1505審査員応募フォーム(回答)

●ハードSF杯キーワードについて

今回のハードSF杯のキーワードは例えば「HSF杯1505短」としています。これは三つの部分からなります。

一つは杯の名称です。これは「HSF杯」が該当します。

二つめは、杯IDです。これは「1505」の部分が該当します。

杯IDはさらに二つの部分からなります。

一つは「15」という年の部分です。これは西暦の下2桁を用います。もう一つは「05」という月の部分です。この杯IDは、HSF杯を今後も開催したいという考えから加えています。なお杯IDの月の部分は、毎月開催するというつもりではなく、単に年の中での複数回開催を区別するためのものです。

また杯IDとなる年と月は、告知日に該当するものとします。

最後の三つめは部門を示すものであり、「掌」、「短」、「中」、「長」が該当します。

以上