SciFi杯1605結果発表
●SciFi杯1605結果発表
◎総評
一年たって、SciFi杯が成立したことに感慨をおぼえる。作者として、審査員として、読者としてのいずれであっても参加していただいたみなさんに大変感謝しています。また、今回成立したことは、ある方からいただいた助言によるところが大きいと思う。ここではお名前は挙げませんが、ありがとうございます。
さて、成立したからといって、この総評も、各作品の評価と短評も、甘くするつもりはない。もしかしたら、今回がSciFi杯の今後の方向を決めることになるのかもしれないのだから。ただし、いずれも面白く、考えさせられる内容を持った作だった。とはいえ、各サイトにおける評価とまったく逆の評価となっている作もあるかもしれない。各作の作者ご自身、そしてその作のファンにとっては不満を感じる結果となっているものもあるかもしれない。そうなっていたとしてもご容赦願いたい。
また、各賞は評価点のみにもとづいている。だが、評価項目のみで作のすべてを評価できるとは考えていない。ぜひ、評価点だけでなく短評も、そして作を未読の方は作そのものもご覧いただきたい。
応募作には、人間とロボット、あるいは被造物について扱ったものが多かった。これは時代的に、やはりというところもあるのかと思う。
そこで、「ロボットものの本」と、私が言ったとしよう。どのようなものを思い浮かべるだろうか? もちろん、私はSciFiだけを指しているのではない。まさしく、あらゆる分野の専門書や論文においても、SciFi的なロボットについて紹介され、関係する議論がされている。これは、大きなネタ帳だ。使わない手はない。だが同時に、作者が書こうと思ったものは、すでに書かれているという場合がありうるということでもある。
「すでに書かれている」という点については説明が必要かもしれない。SciFiにおいては、一つの概念を示したことが、その作品がどれほどの技巧を凝らして書かれたのか以上に評価されることがある。それは、SciFiの作品だけでなく、専門書や論文も含めての話でもある。ある概念についてそういう評価がされた作品などが存在する場合、後発の作品はその概念をどのように扱ったかで違いを出すしかない。だがそれも、そういう作品などがすでにあるということを知っていなければ、対応することはできない。もちろん、どう扱ったかについても、技巧以上に評価される場合がある。そして、仮にそれらが被った場合、「すでに書かれている」という扱いになる。
もし、「SciFiは難解なジャンルだ」などのように思われているとしたら、こういう点も影響しているのかもしれない。みんなして、被らないようにむちゃくちゃやっているからだ。
SciFi杯の企画そのものについて思うこともある。シリーズもの、あるいはそれに類するものの扱いだ。いや、SciFi杯の企画というよりも、読者として参加してくださっているみなさんにも、ぜひ応募作と合わせて読んで欲しいと思える作がある。そのためには、SciFi杯の企画としてシリーズやそれに類するものを受け入れるようにするのも一つの方法だと思う。だが具体的な方策となると、小説家になろうのシリーズという機能をそのまま使えばいいというわけでもなかろうし、またカクヨムにおいてはそもそもどうしたらいいのかという課題がある。現在、一つの候補として考えているのは、応募作とは別に「自薦作品」という項目を用意する方法だ。このような方法については、どう思われるだろうか?
さて、SciFi杯の大賞は成立した。次に目指すのは、大賞と部門賞のすべてが成立することだ。よろしければ、今回参加していただいたみなさんも、またこれを読んでいただいているみなさんも、これからもお付き合いをお願いできればと思う。応募だけでなく、審査員としても、また応募作を読むという形でもかまわない。
SciFi杯1605に作品にて参加していただいたみなさんにも、審査員として参加していただいた方にも大変な感謝をしている。この総評、各々の作品の評価と短評が、みなさんの創作に役立てばと思う。
(宮沢弘, Jul 31, 2016)
追記:
SciFi杯1605の掲示板を設けました。作品やSciFi杯そのものへの感想などなど、ご活用ください。
短評:
中編の枠の中で、状況の設定や話がうまく組み立てられている。ただ、最後の部分は予想できるとはいえ、果たして必要だろうかとも思える。あるいは、最後の部分のゆえに、うまくまとまりすぎているようにも思えてしまう。そのため、他の結末の可能性もあったのではないかと考えてもしまう。
細かいことだが、出だしの部分では二つの話題の時系列がすこしばかりわかりにくい。また、全体としては説明的であるかもしれない。
短評:
現在問題になっている原発/労働力のロボットへの代替という出発点から、「あるかもしれない」未来を見事に導き出していた。読んでいて考えさせられた。人工知能との対決/生活に普及したロボット/未来の人間の視点、どれを取ってもよく練り込まれていた。
一点だけ気になったのは、ロボットの動力。ソーラーパネルの発電効率がそれほど上がったのはどうしてか。また、電力の全てを太陽電池で賄うロボットの外観はどのような姿になっているのか。
この二つは主題から外れるかもしれないが、しかし一文でも良いからきちんと描くとこの作品に強いリアリティが与えられると思う。
いずれにせよレベルの高いエンタメだった。最後の逃走シーンなど、楽しませていただいた。この世界の別の物語があれば、読んでみたいと思う。
受賞の一言(百(難しい童話)):
まさか、優勝できるとは思っていなかったので、吃驚しています。こういった賞の類では、大体、何の賞も取れないので(笑)
雑学本を読んで、「こんな事があったら、面白いかも」的な空想をした事を、小説に落とすというのが僕のスタイル…… の一つなので、いつでも自由にこういったタイプの話が書けるとは限りませんが、今後も参加してみたいと思います。
まぁ、気張らないで、マイペースで。
短評:
今回の応募作の中では、異色の作品だ。
スキットという、おそらく対話によって胚から形成されていくという点に興味を覚えた。また、人工知能と身体の関係などとの関連も重要な要素として描かれている。だが、ではなにが物語られているのかというと、はっきりしない。おそらくは前半と後半の結びつきが弱いのではないかと思う。しかし、それがこの小説の持ち味でもある。
短評:
シンギュラリティというよく聞くアイデアから、こう発展させる作品が出るとは予想できなかった。
何気なく示唆された人類の未来のなんと暗いことか。さらりと流しているだけに、想像がかき立てられる。
ナルキッサという機械の名前、指向性なく成長させた結果得られた形質。それがもしも人類全体に広まっていったら? それが暗示するものは見事に暗い。
情事の描写にも力が割かれていたのでSciFiらしさを4にしたが、正直5に限りなく近い。
ナルキッサがこのような形質を得ることの理由もきっちり示唆されており、SciFiとしてバランスの良いものになっていた。面白かった。
短評:
なにが人間を人間たらしめているのか。それは生物学的なものによるのか、それ以外のなにかがあるのか。掌編であっても掘り下げることは可能だろう。
だが、この小説はトリックないしギミックに頼ってしまったように思える。そのために問題とした部分が軽く見えてしまう。また、トリックやどんでん返しは使うとしても、キレを鋭くしたほうがいいだろう。その点について考えると、最後の一節はおそらく長過ぎる。
短評:
よくまとまっていた。アンドロイドと人間を対比させ主人公が偏見を持っていると描いた上でのあのオチだから、皮肉が効いててよかった。
ただ、思弁が弱い。語り手が熱を出す兆候だったり、熱が一体なんなのかというのが文章から読み取れなかったりしたのが残念。
アンドロイドが語り手であれば、「熱」という症状が機械的には何を意味するのか伝わるように書いてほしかった。対処不能の事態による熱暴走であれば、それを示唆するともっとよかったと思う。
読み返した時、語り手がアンドロイドであることが読み取れるような工夫などもあれば良かった。
文句をつけたものの、読んだ作品の中ではかなり好きでした。今後の活躍を期待しています。
受賞の一言(深海映):
結果に驚きました!
支持して下さった方、ありがとうございます。
オチに頼った作品であまり論理的では無かったかもしれませんが、楽しんで下されば何よりです!
大賞: 特別賞
作品: 無知性の凱歌 Revised 1
URL: http://ncode.syosetu.com/n1853de/
作者: 宮沢弘
注: 宮沢弘自身の作品であり、担当した審査員が一人であるため特別賞としました。また、評価の()の数値は、審査員二人が審査した際の推定の値です。
評価:
短評:
全部最高評価にしてしまった。審査員にあるまじき評価基準かもしれないと反省しているが、とても面白かったので、自分の感覚を信じることにする。
補助脳による知性の強化。それだけならばどこかで見たような設定だっただろう。しかしそこに「8/9人権」という設定が加わることで、奇妙な化学変化が起きている。人々は知性を画一化しようとした、平等という正義の名の下に。
結果として、人々は魂を、魂の一部を失なった。
生物として、画一化した生命は弱い。絶滅の渦に足を踏み入れているだろう。だが、その暗澹とした未来の予感の一方で、物語は幸福に包まれる。結婚式の日に送られたメール。それは人類の時代の次の生命=ネットワークを生きる新たな生命の時代が予言される。
未知の風景への好奇心がSFの醍醐味だとするならば、この小説はまさにSFだった。
◎部門賞受賞作
各部門賞については、すべて不成立となりました。
◎審査結果一覧
審査結果の一覧です。上記受賞作もともに挙げてあります。
○掌編部門
作品: アンドロイドの妻 (大賞: 銅賞)
作者: 深海映
URL: https://kakuyomu.jp/works/1177354054880957976
評価:
短評:
なにが人間を人間たらしめているのか。それは生物学的なものによるのか、それ以外のなにかがあるのか。掌編であっても掘り下げることは可能だろう。
だが、この小説はトリックないしギミックに頼ってしまったように思える。そのために問題とした部分が軽く見えてしまう。また、トリックやどんでん返しは使うとしても、キレを鋭くしたほうがいいだろう。その点について考えると、最後の一節はおそらく長過ぎる。
短評:
よくまとまっていた。アンドロイドと人間を対比させ主人公が偏見を持っていると描いた上でのあのオチだから、皮肉が効いててよかった。
ただ、思弁が弱い。語り手が熱を出す兆候だったり、熱が一体なんなのかというのが文章から読み取れなかったりしたのが残念。
アンドロイドが語り手であれば、「熱」という症状が機械的には何を意味するのか伝わるように書いてほしかった。対処不能の事態による熱暴走であれば、それを示唆するともっとよかったと思う。
読み返した時、語り手がアンドロイドであることが読み取れるような工夫などもあれば良かった。
文句をつけたものの、読んだ作品の中ではかなり好きでした。今後の活躍を期待しています。
短評:
全部最高評価にしてしまった。審査員にあるまじき評価基準かもしれないと反省しているが、とても面白かったので、自分の感覚を信じることにする。
補助脳による知性の強化。それだけならばどこかで見たような設定だっただろう。しかしそこに「8/9人権」という設定が加わることで、奇妙な化学変化が起きている。人々は知性を画一化しようとした、平等という正義の名の下に。
結果として、人々は魂を、魂の一部を失なった。
生物として、画一化した生命は弱い。絶滅の渦に足を踏み入れているだろう。だが、その暗澹とした未来の予感の一方で、物語は幸福に包まれる。結婚式の日に送られたメール。それは人類の時代の次の生命=ネットワークを生きる新たな生命の時代が予言される。
未知の風景への好奇心がSFの醍醐味だとするならば、この小説はまさにSFだった。
短評:
ボンゴのネタなどなどはわかる人にだけわかる小ネタであり、「どうだろうか?」と思ってしまう。とくに、小説としてそれらの小ネタが発展しているのかと考えると、厳しい評価にならざるをえない。
その上で考えるのだが、この作品はスラップスティックだろうか? ナンセンスだろうか? 正直なところ、作者がこの小説で目指したところがどのあたりにあるのかが、見えない作品である。
短評:
現在に、過去の人物を外挿しようという気概は伝わってきた。しかし、正直に言うと、私はこれをSciFiと呼ぶべきか悩んだ。
今作は確かに過去実在した人物の性格や逸話を盛り込んでエピソードを組み上げている。コメディ小説としてみた時、結構笑えたので出来はいいかもしれない。
しかしSciFi的用法で外挿法を使うならば、過去の人物が「現在、同じタイミングで就職活動をしていることから何年の生まれになるはずだ」ということを踏まえた上で、現在の社会を再構築し、科学の発展状況も再考慮し、……と、入念なシミュレーションをすべきだ、と思う。
これでは昨今ありがちの「過去の偉人が一同に介したら」というファンタジー漫画/アニメ/小説と大差なく、SciFi的要素はまったく見られない。
作中には一貫した論理があったし、面白かっただけに、「コメディとして読んだら面白かった」というのが私の結論だ。
短評:
今回の応募作の中では、異色の作品だ。
スキットという、おそらく対話によって胚から形成されていくという点に興味を覚えた。また、人工知能と身体の関係などとの関連も重要な要素として描かれている。だが、ではなにが物語られているのかというと、はっきりしない。おそらくは前半と後半の結びつきが弱いのではないかと思う。しかし、それがこの小説の持ち味でもある。
短評:
シンギュラリティというよく聞くアイデアから、こう発展させる作品が出るとは予想できなかった。
何気なく示唆された人類の未来のなんと暗いことか。さらりと流しているだけに、想像がかき立てられる。
ナルキッサという機械の名前、指向性なく成長させた結果得られた形質。それがもしも人類全体に広まっていったら? それが暗示するものは見事に暗い。
情事の描写にも力が割かれていたのでSciFiらしさを4にしたが、正直5に限りなく近い。
ナルキッサがこのような形質を得ることの理由もきっちり示唆されており、SciFiとしてバランスの良いものになっていた。面白かった。
短評:
中編の枠の中で、状況の設定や話がうまく組み立てられている。ただ、最後の部分は予想できるとはいえ、果たして必要だろうかとも思える。あるいは、最後の部分のゆえに、うまくまとまりすぎているようにも思えてしまう。そのため、他の結末の可能性もあったのではないかと考えてもしまう。
細かいことだが、出だしの部分では二つの話題の時系列がすこしばかりわかりにくい。また、全体としては説明的であるかもしれない。
短評:
現在問題になっている原発/労働力のロボットへの代替という出発点から、「あるかもしれない」未来を見事に導き出していた。読んでいて考えさせられた。人工知能との対決/生活に普及したロボット/未来の人間の視点、どれを取ってもよく練り込まれていた。
一点だけ気になったのは、ロボットの動力。ソーラーパネルの発電効率がそれほど上がったのはどうしてか。また、電力の全てを太陽電池で賄うロボットの外観はどのような姿になっているのか。
この二つは主題から外れるかもしれないが、しかし一文でも良いからきちんと描くとこの作品に強いリアリティが与えられると思う。
いずれにせよレベルの高いエンタメだった。最後の逃走シーンなど、楽しませていただいた。この世界の別の物語があれば、読んでみたいと思う。
短評:
アンドロイドやサイボーグなどが登場することがウリの小説だ。だが、アンドロイドやサイボーグなどがなぜ登場するのかがわからない。もちろん、理屈としては「サイボーグやアンドロイドなどによる犯罪の凶悪化」という言葉が出てくるだろうし、その状況を受けての対応としてということとなるのだろう。だが、作者の思惑としてはむしろ逆のように思える。銃を出したいから、銃に対抗できるなにかを出す。重火器を出したいから、重火器に対抗できるなにかを出す。そのようなものに思える。
そして、登場するアンドロイドは、あまりに人間的だ。正直に言えば、普通の人間が特殊装備を使ったのといったい何が違うのかと考えなければならないほど、アンドロイドの内面はただの人間だ。
つまりは、作者は「まず、アンドロイドを出したい」と思い、それに対してバランスを取るためのかさ上げとして、相手方のアンドロイド、サイボーグなどを出したのではないかと思えてしまう。そして、アンドロイドという存在そのものについては置き去りにしている。
また、小説に登場するものの多くが、「技術的にはこのようにあるだろう」というものよりも、見た目や映像的な印象からの設定ではないかと思えるものに溢れている。幻惑感が前面に出るような小説であればそれは問題とはならないが、このような小説の場合では、やはり気になってしまう。
正直なところ、アクションものとしては成立しているとしても、SciFiとして成立しているかというと、首を傾げざるをえない。
短評:
非常に骨太な、エンタメサイバーパンク、という印象。士郎正宗の「アップルシード」とはまた異なる、サイボーグコップの物語。着想自体はちょっと古いかな? と思ったが、それを補って余りある個性の強いキャラクターと胸躍る戦闘描写やガジェット。ところどころ誤字があったり、戦闘描写を描くのに注力するあまり方向性があまり見えてこなかったのが残念。
選考期間中に第1章を読むことができなかったので、これからじっくり読もうと思う。どのように「国際テロリスト」と「特攻装警」が戦うのか、楽しみだ。
作品: Re^2 (Rescuer); of the Frankenstein's Monster
作者: 刹多楡希
URL: http://ncode.syosetu.com/n0665db/
評価:
短評:
原作の直後から自然哲学へ目を向けるアイディアはいいと思うのだが、その使いこなしが壊滅的と思える。理由は以下のようなものだ。
この小説は散漫であるように思える。場所やらがあちこちに飛び、それでありながら部分部分を引きつけておく中心がない。このように評すると、読まれたかたからは指摘も入るだろう。だとしても、やはり中心がないのだ。二部構成にした意図もわかるような気はするが、それもむしろ散漫さに拍車をかけているように思える。だが、この点を考えると、構成のしかたによって印象が変わるのかもしれない。
また、作者は、原作をどのようなものとして読んだのだろうか。あの結末から怪物が再び動き出すには、北極圏はあまりに寂しいように思える。ヴィクターの日記は、怪物にとっての安らぎであるように思える。
この点が、中心のなさに関係しているのかもしれない。ヴィクターと怪物は、互いを回る双子星のようなものだ。互いを回っている間には、その軌道の中心が存在する。だが、双子星の片方が失われたとしたら、もう片方は中心をも失い、どこかへ消えていくしかない。
ならば中心を求めて怪物を動き出させようという方向はわかる。中心がないゆえに散漫さが出てしまうのも、理解できないことではないのかもしれない。だが、そのような意図が作者にあったとしても、それは表示される文字列からはあまりに遠いように思える。そのような意図と自然哲学を眺めるというのは、残った片割れ星に道を示すということにもなるのかもしれない。だが、それもまた表示される文字列からはあまりに遠いように思える。あるいは、ある女性が、最初から中心として存在するという意図があるのかもしれない。だが、正直なところ、「よくわからないが、たびたび出てくる女性」でしかない。もし、作者にこれらのような意図があるのなら、そのような意図があるのだということを、早い時期に印象付けるなにかが必要だろう。すくなくとも、この短評を書いている時点で、作者にそのような意図があるのだと私には確信できていないのだ。
短評:
濃密な歴史補完SFだった。少々文章は読みづらかったが、それを補って有り余る熱意と、フランケンシュタインの救済の物語はとても面白かった。まだ読めていなかった「フランケンシュタイン」を読んでみようという気になった。
しかしその熱意の迸りは人称の混乱をももたらしてしまっていた。また、自然哲学者とフランケンシュタインを多く関わらせたゆえに、非常に遠回りな物語になっている。これは、作品そのものの価値を損なっていると感じた。
非常に興味深い試みだったがゆえに、少々の瑕疵が見えているのが残念だった。軽く手を加えるだけで格段に面白くなると思う。今後のいっそうの活躍が楽しみでならない。
○論考部門
応募作はありませんでした。
結果発表は以上です。
(宮沢弘、Jul 31, 2016)