3. 海

3. 海 (漕ぎ出すこころ)


今回突き当たりの壁に掛けてある、一番大きい絵についてお話します。


これは屋久島でスケッチを描きました。

屋久島は杉や登山で有名なところかもしれません。

私は、その島の周囲を取り巻くたくさんの港にある堤防に魅了されました。


珊瑚礁に囲まれ、リーフエッジのある石垣島は鏡のような海でしたが、

屋久島の周囲はすぐ外海になるようです。

そのため波が荒く、とても大きい堤防が港を守っています。


海面から堤防の上まで8〜9メートルもあるような高い堤防があり、

その先端にいくとすぐ眼下に生きたうねりを見ることができました。

本当に、生きているのです。

水の粒子がひとつぶひとつぶ、生きて意思をもって動いているようなのです。


その先端にたち風を受けていると、

舟の先端にたち航海をしているような気分になります。

堤防は格好のスケッチ場所だったのです。





その堤防の上で何を描いていたかというと、こんな風景でした。





海の上を大きな雲が、雨と光の足を従いながら滑っていきます。

その様子を360度体感しながら描いていきます。





やがて、その大きな雲は頭上で雨を降らせ、西に去っていきました。

その一連の様子は、まるで大きな神様の手のひらが、海をなでていくようでした。





「海を滑る雲」堤防よりスケッチ



「万境に従って転ず」 7200×150(cm) 2007年



そんな風景をもとに描きました。



「4. 川」へつづく