2. 雨

2. 雨 (親しい隣人)


東京へ戻ってきました。


東京では雑木林の多い多摩川の近くに住み、

樹々や水辺を求めてスケッチをしました。

とくに人の居ない雨の森に親しみました。


やがて、むき出しだった心が

雨のベールで和らいでいくのを感じました。

その経験からか、私は雨がとても好きになりました。





窓にコツコツと音がします。

誰かきたのかな?と首を伸ばします。

静やかな足音がそっと忍び寄ってきます・・。


雨は、たまらなく懐かしく親しい、隣人の来訪です。


今日も私は雨に話しかけます。

雨は静かに、その沈黙をもって、やさし包み込み

懐かしい土地の匂いを運んできてくれます。





「野に降り注ぐ雨」スケッチ



雨が野に山に畑に降り注ぎます。

そして地面染み込んでいきます。


人の心の細かいひだの内にも

ゆっくりとやさしく浸透していきます。





「雨」スケッチ



その温度と湿度をもって胸に抱いてくれるようです。

とくに孤独感を感じているときなどは、

それがやわらいで溶けていくのを感じることができますね。





「雨の森」 2007年



「慈雨の森」 2007年



霧雨も大粒の雨も、

その雨のリズムは風景と交響曲のように調和していますね。

私たちが日常でいつの間にかぶれてしまった心の軸を、

まるでメトロノームのように、

コツコツコツ・・・と、

雨音は心の軸を中心に戻す働きをしてくれると感じています。



「3. 海 」へつづく