アナザーストーリー②

アナザーストーリー② 初めて麺を売る

麺を作っても、買って食べてくれる人がいなければただの趣味なので、麺を継続してた作るためには、買い手が必要でした。弟のお店の魅力づくりを提案することで、麺づくりに関しては、弟の了解を得ることができました。弟の条件は、現状を維持する、現状を少し超える麺を作ることでした。事業を始める前から、生パスタも計画にありましたが、現在弟が使用している中華麺の再現が当面の目標になりました。


40以上の職場を経験したものの。製麺業は未体験。それでもなんとかなるという、根拠のない自信がありました。今までの職場でも、0から新しいものを作ろうとすると、なかなかうまくいかないことを知っていたし、新しいことに取り組むとき、既存の成功例を模倣し、かいぜんすることで大きな成果が上げられる体験で知っていたからでした。全く独自のものを作る才能はないけれど、現状の課題を見つけ、一工夫することで、どの職場からも、重宝されてきました。私生活では、手作りのピザ、パン、石鹸を作ったこともあるし、リサーチにかけては、時間の許す限り納得するまで調べつくしました。製麺機メーカーの製麺指導をうけ、麺づくりが始まると2回で理解できました。製麺を始めて1年経つと、当時と同じ製法を続けているわけではなく、少しずつ改良を重ね、現在に至っています。


1つの例として、加水率は麺づくりでは大切なことになっています。少なければさらさらして麺帯にならないし、多ければ、ローラーに巻き付いて麺帯にならない。低加水麺とか、多加水麺とかを売りのコンセプトの1つとするお店があります。小麦粉がどれだけの水分を必要としているのかは、品種によって大体決まっています。各品種によって、保水率が決まっているのに、多加水や低加水というこだわりをもつ必要があるのだろうかというのが持論です。加水率は、何回か試作し調整していく中で適正量がわかってきます。前回こんな感じだったから、今回は少なめにしてみよう、そんな感じです。練りこまれた生地の質感が答えであるなら、加水量は小麦粉だけが知っていると思います。多加水や低加水によるこだわりは作り手の傲慢だとさえ思うほどで、最終的には、小麦粉が適した麺になるよう手助けするだけになれればと思っています。まだまだその領域に達するまで時間がかかるのは当然で、それまで麺づくりも退屈しないでしょう。よくよく考える癖は哲学系の大学を出ているせいかもしれないが、考えるだけでなく、試しができる点では、恵まれた職場にいることになります。


小麦粉は、麺の性格を決める大きな割合を占めています。メーカー内でも数多くあり、製粉メーカーも数多くあります。初心者が数多くある小麦粉から選ぶには時間がどれだけあっても足りません。同じ小麦粉でも麺の形状が異なれば食感も異なるので、最初は多くの麺に触れている専門家の意見を聞いて、そこから工程ごとにローラーの厚みなどを決めていき、ひとまず私の創る麺が出来上がりました。


製麺機は食品を取り扱うため、使用した後に毎回清掃をします。毎回行う清掃は、手を抜かずに、かつ効率良く行わなければいけません。掃除の時間も働く時間の1つだからです。ここで役に立ったのは、半導体の工場とテーマパークで働いた経験です。クリーンルーム内では、塵一つ製品に付着してはいけないし、そこで様々なことが取り決められていまいす。高額な機械を分解し、また組みなおす作業の繰り返しです。テーマパークでは、翌朝には初演のごとくと、真鍮の指紋がなくなるまで徹底的に毎晩磨いていました。精密機器の扱いや清掃の心構えは、ここで養われていた。