アナザーストーリー③

アナザーストーリー③ 美味しいパスタは数多くあるが、美味しくない理由は決まっている

世界の麺は中華麺とパスタに分類されるそうです。この場合の麺は、小麦粉仕様で、そば粉や米粉は含まれていません。そば粉はそばになり、米粉はビーフンやフォーとなります。うどんはパスタと同じ小麦粉なのでパスタに分類されます。パスタの前に、中華麺から始めました。3カ月もして弟の中華麺が出来上がると、製麺機は休んでいる時間が多いことに気づきました。融資を受ける手前、もっと売り上げを作らないといけないなということで、パスタも作って販売すると事業計画を立てていたので、パスタづくりに取り組みました。ラーメンやそばと比べ挑戦している人が少なく、パスタは種類も多いので、魅力がありました。中華麺づくりは弟のためでしたが、パスタは、自分のために作りました。


始めると、簡単と思っていたパスタも、私が作りたいパスタって何だろうかとかお客様が食べたいパスタって何だろうって、わからない時間がじわじわとふえました。みんなどこで食べたいのだろう。パスタが普及しない理由って何だろう。いろいろ考えました。美味しいパスタを作ろうと、ホームページで検索してみると、いろんな製麺所やレストランのこだわりが書かれてあり材料にこだわっているとか書かれている部分を読んでも、ピンと来なかったし、同じことをして真似しても、後発ではだめだと思いました。


誰もが美味しいパスタを作ろうとするけれど、現状把握をしていないことに気づきました。美味しいパスタを作ろうとせずに、美味しくない理由、食べたくない理由、食べられない理由を考えると、自分の作りたいパスタのヒントが少しずつ固まってきました。たとえば、ゆで時間が長いから朝食に作りにくい、保存料のにおいが鼻につく、激安のレトルトパスタソースは美味しくない、などです。美味しくないと感じる理由を1つずつ排除していくことで、より多くの人に選ばれるパスタのイメージがわきました。


競って1番になって好かれようとするより、嫌われそうになる理由を1つずつ改善し、嫌われないことに徹する方が、美味しいパスタというか、より多くの人が食べたいパスタになるのではないかと思い始めました。ゆで時間の長いパスタより短いパスタ、保存料を使わないパスタ、レストラン風のパスタソースを家庭で食べられるパスタ、そんなイメージか固まってきました。既存の価格より安い価格で提供できるなら、それは一つの優位性を確立できるのではないかと仮説を立てたのです。あとはやってみるだけです。こうして既存より優れたパスタを開発しました。


大半のお店は、作り方や素材にこだわるけれど、食べる人に合わせて作らない。こだわりの度が過ぎると、押し売りと思われるほど、個性は我として強くなり、食べる人を無視する傾向に向かいがちです。それよりも、より多くの人に受け入れられるために、現状を分析し、現状の課題をまず最優先に解決すべきだと考えました。パスタ愛好者の無意識の欲求を愚見化する作業でした。ケーブルテレビの営業時代にも、お客様の立場に立って提案するスタイルだったので、パスタづくりも同じようにしました。どんなに優位性があっても、私が模倣したように、いつか模倣されるのだから、状況に応じて変化していく姿勢も大事にし、常に改善の気持ちは持ち続けると再確認しました。アナザーストーリー④ パスタのターゲットを決める