コーポレートガバナンス
Corporate Governance
Corporate Governance
コーポレートガバナンス(企業統治)と聞くと難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、端的には「経営上の意思決定が、会社の経済的または非経済的利益に貢献できる判断となるように管理および統制する仕組みのこと」を指します。事業規模が大きくなるにつれ、この仕組みをどう構築し、機能させていくのかが企業の永続において非常に重要なポイントとなります。
コーポレートガバナンスは経営者の独断や暴走、組織全体での企業倫理の逸脱などを防ぐための仕組みであり、具体的には社外取締役や社外監査役、委員会の設置、執行役員制度の導入などが挙げられます。上場企業であれば、これらの機関は設置されていることが一般的です。
一方、日本の企業の99.7%を占める中小企業においても、一般的には「コーポレートガバナンスがあった方が良い」と考えられています。金融機関から円滑に融資を受けたり、社会的な信頼を得るために有効だと考えられているからです。
しかしながら、中小企業の多くがこれらの企業ではコーポレートガバナンスが機能しづらい、または機能不全に陥っています。それはなぜでしょうか?
中小企業の多くが、経営者と大株主が同一人物、または経営者の親族が大株主となっているファミリービジネスであるといわれています。ファミリービジネスでコーポレートガバナンスが効きにくい大きな要因はこの「所有と経営の一体」にあります。
コーポレートガバナンスを強化するかどうか、そして機関を設置し誰を任命するかを決定できるのは経営者と株主です。しかし、コーポレートガバナンスは ”経営者の独断や暴走を抑制するための仕組み” であることから、その強化はオーナー経営者にとって自由を奪われ、管理、統制されることを意味します。そのため義務化されていないコーポレートガバナンス強化そのものに消極的になるのも自然なことと言えます。
事業規模が大きくなるにつれ、金融機関等の債権者やその他社会的な要請・圧力により、コーポレートガバナンス体制を整備していく必要に迫られる企業がありますが、社外取締役や社外監査役、委員会を設置したとしても、それで機能するわけではありません。オーナー経営者に対し、苦言を呈することができる人材を集めることも困難でしょうし、そもそもオーナー経営者自身がそのような人材を登用することに否定的であることが普通です。また、取締役会や委員会も、オーナー経営者の顔色を見てしまい、その意に沿った議事進行になることは想像に難くありません。
では、どうすればコーポレートガバナンスをファミリービジネス(≒中小企業)で機能させることができるのでしょうか?
それより前に、考えなければならないのが「そもそもコーポレートガバナンスがファミリービジネスに必要なのか?」という点です。
経営/法人哲学には「会社は誰のものか?」という古くから問われている問題がありますが、経営学を学ぶ多くの人が「株主のもの」と答えるのではないでしょうか。
例えば、経営陣を選ぶのは株主ですし、会社を売買するときは、その会社の株主が保有している株式を買い手側に譲渡することで様々な権利が移行します。会社の解散などに際しては、残った会社の資産を分配して受け取る権利があります。
代表取締役(多くの場合”社長”)が会社の大株主と同一人物であれば、その代表取締役を管理・統制する必要があるのか、という問いが生じてきます。会社の所有者である株主自身が法律の範囲内で経営する限り問題はない、という考え方もできるからです。
この考え方を否定するとすれば「会社は誰のものか」という問いに対する答えとその論拠がなければなりません。KAXでは分かりやすい事例から入り込み、経営/法人哲学に隣接する領域まで深く考えるカリキュラムを用意しています。