小桜韋黄返縅鎧(源為朝鎧)厳島神社所蔵

小桜韋黄返縅鎧(源為朝鎧)厳島神社所蔵

小桜韋黄返縅鎧(厳島神社所蔵)は、古来、源為朝(1139~1170年)が奉納したと伝わる鎧です。脇楯と鳩尾板などを欠失しています。

鎧高65.5cm(72.7cm)、兜鉢高11.5cm・前後径19.5cm・左右径18cm・頂辺孔径5.1cm、大袖の高(射向)47.1cm(馬手)48.4cm(46.5cm)・幅33.1cm(32.6cm)。この時代の鎧としては大型です。

小札は黒漆塗の革小札で、小桜韋をもって縅しています。小札の幅が著しく広く大型で大荒目、縅毛もまた太い傾向にあります。長側の小札幅5cmは法住寺殿跡出土の小札に次ぐ大きさ。札足8cmも唐沢山神社の大鎧残欠の小札に次ぐ大形の平小札です。厚さ7mm。小札総数およそ1,080枚は遺物中最少。本来は革札を主としますが、弦走韋下の大部分を鉄札(長側3段は全て鉄・発手は1枚交ぜ)の構成は極めて異例です。保元・平治の乱(1156~1160年)ころにつくられたのではないかと推測されています。

前立挙は12枚、13枚の二段、後立挙は15枚、16枚(逆板)、16枚の三段とし、長側は50枚、52枚、54枚、51枚の4段の小札枚数。胴回上87cm・胴回下(発手)99cm、胸板幅19.1cm、押付幅27.4cm、小札の出幅は1.7cmほどなので2cm弱の縅毛(韋)巾かと思われます。大袖は1段に18枚の小札を用いる6段下がり。草摺は前を21枚、24枚、26枚、28枚の4段下がり、引敷を23枚、24枚、28枚、30枚の4段下がり、射向を20枚、22枚、24枚、26枚、29枚と5段下がり。前後草摺の菱縫板を二分していないのは古式で類例は少ないです。栴檀板6枚3段。

兜1枚張筋伏星兜(空星)、1行6点・葵葉座と腰巻各1点、𩊱(しころ)4段(44・50・56・62枚)を下げ4段を吹き返す。遺例の少ない1枚張。4段の𩊱(しころ)を4段とも吹返すのは異式で遺物は唯一です。

絵韋は別で詳細を記しますが、唐花襷に帽額文(または唐花襷に窠文)です。

大袖の冠板

(笹目良彦『日本の甲冑武具事典』)

小桜韋黄返縅

(笹目良彦『日本の甲冑武具事典』)

絵韋

(笹目良彦『日本の甲冑武具事典』)

鉢裏の絵韋

(笹目良彦『日本の甲冑武具事典』)

『集古十種』甲冑部巻11に所載された小桜韋黄返縅鎧の部分図

障子

(笹目良彦『日本の甲冑武具事典』)

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