樫鳥絲縅鎧(源義家の薄金鎧)猿投神社所蔵
樫鳥絲縅鎧(源義家の薄金鎧)猿投神社所蔵
平安時代中期の大鎧です。愛知県猿投神社所蔵、重文樫鳥絲縅鎧は、後三年の役に源義家から伴次郎が賜った源氏重代八領の鎧のうちの「薄金」であると伝来および寄進状にある鎧です。
「鉄革交ぜ」の三目札(敷目札)を啄木打の絲(樫鳥の羽色に打った六組絲)で縄目緘にしています。初期鎧の形式のように縅毛の幅が狭い(毛幅8mm)ことが分かります。弦走韋の下の縅が縦取緘である点はすこぶる古式であることが分かります。
脇楯は三目札(敷目平札)の革小札を藍韋で縅しています。大袖は三目札(敷目平札)の革小札を黄返紅・黄小桜韋を2間ずつ交互に縅しています。大袖と脇楯はほぼ同年代の別物とされています。
鳩尾板は2段蝶番付で屈曲し幅広長大。栴檀板4段(現在は3段に補修されている)という特色が見られ、これも他に例はありません。
小札は全体的に革札で、厚さ1.5cmほど。一部鉄革交ぜ(鉄札1枚に革札2枚交ぜ)になっています。胴背面・草摺上段まで鉄交ぜがされているのは異例です。全長73cm。草摺が通常どおり5段ではありますがやや長いことから『御著長の鎧』と称されています。
左側草摺の蝙蝠付に接する小札頭に水引を敷いた化粧板を配して菊座の八双鋲で留めているのも特徴です。逆板や菱縫板における菱縫が赤韋で行われており、透漆(すきうるし)がかけてあるのも初期的手法です。
絵韋については別で詳細を記しますが、藤襷霰地に三連の蝶円文(あるいは菱襷に蝶丸・藤花襷霰地に中央菊花に三ツ蝶などとも)です。矢絣状の襷のなかに菊花を置き周りを三匹の蝶で囲み霰地としてあります。
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
鳩尾板
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
栴檀板
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
栴檀板の冠板
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
障子板
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
脇楯の草摺
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』
脇楯の草摺
笹間良彦推定復原
笹目良彦『日本の甲冑武具事典』