「やれやれ、巫女がそんな感じだと先が思いやられるねえ」
「誰!?」
「腑抜け巫女に語る名はないね!」
「って、お前は、大江金!」
「ふん。あいつの頼みだからって来てみたけど、これじゃやる気も起きないってもんだ」
「あいつって、まさか母さん!?」
「さあね。依頼人は内緒さ。契約は厳格に守る性質なものでね」
「鬼が巫女関連で動くとなるとあの人以外は考えにくいけどな・・・」
「それを言うのは野暮ってもんさ」
「まあそうだな。で、何の用で来たんだ?それくらいは教えてくれてもいいだろ」
「いやだが?」
「ちょっと、母さんの頼みじゃなかったの!?」
「だから依頼人は言わないよ。んで、その頼みもお前らの腑抜けた様子でやる気がなくなったからやめたわ」
「いや、契約って言ってたんだから対価とか違約金とかあるだろう?それを放棄していいのか?」
「む、痛いところを突くねえ。まあ、その指摘に免じて、一つ教えてやろうか」
「今、お前たちは一つの記憶を消されたのさ。そしてそれを自覚出来なかった。そっちの村娘はともかく、巫女も気づいてないのは危機感が足りてないんじゃないかな」
「記憶を消された?そんな・・・」
大江の話に疑問を持った瞬間、強烈な頭痛と眩暈が襲ってくる。
それらに立っていられなくなり、うずくまる。と同時に吐き気も湧き上がり、口をおさえる。
だが、それらは長くは続かなかった。
吐く直前で収まる頭痛・眩暈・吐き気、次第に明瞭になる視界と共に、
一つ、何かを忘れたという実感が沸き起こってきた。
それを自覚し、顔を上げる。
「!?」
先ほどの言葉に納得するように大江の方を見ると、異様な光景が広がっていた。
大江の周囲に霊魂が多数浮かんでいたのだ。
いや、大江の周りだけではない。
理紗にも私にも・・・それ以上に至る所に霊魂が存在していた。
「なにこれ・・・」
「やっとわかったかい。この異様な状況を」
「大丈夫か、透香。急に真っ青になってうずくまるもんだから私はビビったぜ」
「え、ええ。今は収まったから私は大丈夫。でも、今はそれどころではないわね」
「なんかあった、いや、なんかあるのか?私には見えないが」
「大量の霊魂があるのよ。それもそこら中に大量にね。理紗の近くにもあるわ」
「む、霊魂か。嫌だな・・・って大量に?それはおかしくないか?」
「そう。これは異様・・・つまり異変ということね・・・
大江。この状況をなんとかするため、何かを頼まれたということね」
「そういうことだ。だが、それだけだとまだ初歩の初歩ってところだな」
「んむう、