フィリップ・コトラーほか著『非営利組織のマーケティング戦略〔第6版〕』メモ-6(2006.01.17)

フィリップ・コトラー, アラン・R・アンドリーセン著. 井関利明監訳. "第8章 人材の獲得:スタッフ、ヴォランティア、理事". 非営利組織のマーケティング戦略〔第6版〕. 東京. 第一法規, 2005, pp.301-335

2006.01.17

加藤久明

1. はじめに〔pp.301-303〕

(1)全ての組織には、効果的な計画、運営、運用が必要とされる。

(a)民間部門 :人ではなくシステムによってこれらの業務が行われている。

(b)非営利の世界:個人と個人からの貢献によるところが大きい⇒「人的セクター(people sector)」。

(2)マーケターが人材確保を行うにあたっての、特徴的な3つの課題(pp.302-303)。

(a)非営利組織の常勤スタッフは、一般に、他の労働市場より低い賃金で雇われなくてはならない。

(b)非情に多くの領域で、スタッフはヴォランティアによって補われる必要がある。

(c)理事をひきつけなければならない。

(3)非営利組織には、上記の3課題を満たす2つの大きな強みが存在する。

(a)非営利組織は人に訴える特性を持っている。

(b)民間部門が、社員のヴォランティア活動と、幹部の非営利組織理事就任について、次第に価値を認め始めている。

(4)現実には、全ての非営利組織には競争が存在する⇒そのため、非営利組織と公共サービスを提供する組織は、(a)支援を募る為の非情に明確な根拠を提供し、(b)同時に何らかの提供できる便益を持ち合わせる必要がある。

2. ヴォランティアの採用〔pp.304-324〕

(1)自らの目標達成にヴォランティアの助けが必要である、という点で非営利組織は特殊である。

(2)ヴォランティア活動は、非営利組織の支出抑制に役立ち、社会意識の高い人が自ら信ずる慈善事業に貢献するためのチャンネルを提供している。

(3)「個人が自発的に、個人的に、自由に選択した活動に参加する」という基本的な考え方:活動は、「公共の便益を発展・躍進させるもの、人々の参加により躍進するもの」に求められる⇒また、ヴォランティア活動は、社会のいかなる組織からも強制させられるものではなく、金銭的報酬のために行われるものでもない。

(4)ヴォランティアのコンセプト:近代のアメリカが体験したことに深く根ざしている⇒生きていくために不可欠な地域の総合扶助、宗教的な観念⇒「民主主義社会における実験の中で、社会ニーズに合ったヴォランティア組織をつくりたいという」コンセプト⇒しかし、これはその他の国々ではうまく受け入れられなかった。

(a)北欧諸国:個人が行う多くの慈善活動は、政府が実行する「社会民主主義」モデルによって統治。

(b)旧社会主義国:社会主義時代は、ヴォランティア活動の必要性は殆ど無し⇒民主化を経た今日では、必要とされるサービスやセーフティーネットの提供が、個人レベルのヴォランティア活動と非営利部門によって行われるようになっている。

(c)アフリカ:様々な理由から、民間ヴォランティア組織がより重要になっている〔pp.307〕。

(d)アジア:アメリカと同じようにヴォランティア活動が根付いているが、日本のような一部諸国では、異なった宗教観に基づいていることを留意せねばならない⇒自治会の例〔pp.307〕。

(5)最近の問題:最大グループであるベビー・ブーム世代の参加が減りつつあること、人の直接のかかわりあいが求められる社会問題に関して、お金の寄付による参加に変わりつつあること〔pp.312〕。

(6)ヴォランティアの採用:マーケターにとっての3つの課題がある〔pp.312〕。

(7)組織の主たる競争相手の判断:競争に該当する4段階がある〔pp.314〕。

(8)採用活動:どこに焦点を絞るかを早い段階で決定する必要がある⇒そのための市場分析に用いる2つのコンセプトモデル〔pp.315〕。

(9)他者の存在:ヴォランティア活動への動機には、他者が非常に重要な影響を及ぼす〔pp.318〕。

(10)内部マーケティング(Internal Marketing)の必要性⇒3つの理由〔pp.322〕

(11)ヴォランティア活動に関して、マーケターが抱える二重の課題〔pp.323〕

(a)現実的で実現可能な期待をうまく取り扱うこと⇒マーケティングの責任

(b)便益を確実にもたらすこと⇒人事専門家の範疇に属する

(12)消費者契約とヴォランティア契約の大きな違い〔pp.323〕:前者は「取引」、後者は「関係」である⇒「関係」は、より高い感情的満足であり、個人間の信頼と、あいまいで微妙なあやがある。

(13)今日のヴォランティア参加者は、対象範囲が広く、従来より多くのことを要求し、多様な動機を持っている。

3. ヴォランティア・マネジメント〔pp.324-328〕

(1)ヴォランティアと常勤スタッフの混在は、不安定なものである。

(2)ヴォランティアは、非営利組織にサービスを寄付しており、組織からは何ら報酬を得ていない⇒そのため、様々な態度をとることがある〔pp.324-325〕。

(3)組織の専門的常勤スタッフがヴォランティアを二流の働き手と見た場合、両者の間に衝突が発生することがある⇒そのような問題に関する意見〔pp.325〕⇒しかし、それはマネジメント層の姿勢の問題である⇒解決策:ヴォランティアをできる限り専門職の常勤スタッフと同じように扱うこと〔pp.326〕

4. 理事会とマーケティング機能〔pp.328-〕

(1)理事会は、非営利組織にとって極めて重要な組織であり、その機能は、組織のマーケティング活動に直接的な影響力を持っている。

(2)理事会の機能〔pp.328-330〕

(a)監督

(b)直接的な意思決定⇒組織確立まで、「つなぎとしてのCEO」の役割を果たす。

(c)特定の専門知識の提供

(3)多くの非営利組織にとって、まともな理事会メンバーの獲得は非常に難しい⇒そこで、「ターゲット顧客のニーズと欲求を知ることから始める」マーケティングの考え方が役立つ。