フィリップ・コトラーほか著『非営利組織のマーケティング戦略〔第6版〕』メモ-3(2005.11.22)

フィリップ・コトラー, アラン・R・アンドリーセン著. 井関利明監訳. "第5章 マーケティング情報の収集と活用". 非営利組織のマーケティング戦略〔第6版〕. 東京. 第一法規, 2005, pp.171-206

2005.11.22

加藤久明

1. はじめに〔pp.171-173〕

(1)マーケティング調査の重要な役割:顧客の態度と行動を理解し、組織とキャンペーン・レベルのマーケティング戦略計画を立てること。

(2)マーケティング調査:「計画されたデータの収集と分析であり、そのデータは、マーケティング・システムのある特定側面を測定するものであり、組織のマーケティング意思決定を改善することを目的としている」〔pp.173〕

(3)単なる観察や体系的考察とは異なる理由⇒(1)計画的、(2)特定の意思決定状況と関連するため。

2. 非営利組織におけるマーケティング調査〔pp.173-178〕

(1)非営利組織は、能力的・必要性の点から、十分なマーケティング調査を行っていない。

(2)非営利組織のマネージャーをマーケティング調査から遠ざける「6つの神話」〔pp.173-〕

(a)「大きな決断が必要」という神話⇒調査は、コストと便益の観点から検討されるべき。

(a1)コスト:調査そのものに関する費用/結果が出るまでに意思決定が遅れることにより、行動変革と競争的優位性を失うコスト。

(a2)便益:意思決定によってもたらされた改善の程度。

(b)「調査マイオピア(近視眼)」という神話⇒「マーケティング調査=実地調査」というスキーマ⇒マーケティング意思決定を改善するために信頼できる情報は、すべてマーケティング調査と考えられる⇒多くの調査が選択肢に挙げられる〔pp.175-176〕

(c)「多額の金がかかる」という神話⇒マネージャーは、従来型の調査をいつ、どのようにして行うべきか、また、従来型調査の代わりに低費用の調査方法をいつ、どのようにして用いるかを理解する必要がある。

(d)「時間がかかり、待っていられない」という神話⇒調査が業務を遅らせ、時間を要するという思い込み⇒「正しい意思決定のために必要な情報は何か」という問題を真剣に考える⇒必要なのは、意思決定のための簡単・迅速・論理的なデータである。

(e)「高度な知識をもつ調査員が必要」という神話⇒マーケティング調査には、複雑なサンプリングと念入りなデザインは必要無い⇒あまりコストがかからない援助の例:地元の調査専門家の自発的な協力。

(f)「ほとんどの調査結果は読まれない」という神話⇒少なくとも、「十分によく計画された」調査が役に立たなかったためしはほとんど無い⇒調査が効果を発揮する3つの条件〔pp.178〕

3. マーケティング情報システム(MIS)〔pp.179-205〕

(1)組織レベルでのマーケティング調査⇒経営の意思決定に絶えず影響を及ぼす情報システム

(2)マーケティング情報システム(MIS):「マーケティング意思決定者がマーケティング活動の計画、実行、統制を行うにあたって人と設備および収集、整理、分析、評価の手順、適切かつタイムリーで正確な情報伝達が、継続的に相互作用する構造体」〔pp.179〕

「マーケティング環境⇔4つのサブシステム⇔マーケティング・マネージャー」〔pp.180, 図5-1〕

(3)MISのサブシステム

(a)内部記録システム:全ての内部記録システム⇒スピード、包括性、正確さという側面で改善の余地がある⇒目指すものは、高い費用対効果でマネージャーの情報ニーズを満たすシステム⇒そのため、マネージャーが定期的に内部記録システム改善に関する調査を行う必要がある⇒〔pp.181, 表5-1〕

(b)マーケティング・インテリジェンス・システム:マーケターに対して、組織にできることと組織がすべきことに大きな影響を与える外部環境についての情報を与える役割を果たす⇒そのため、より組織的で、体系化されている必要がある⇒このために必要な3つのステップ〔pp.182-183〕

(b1)組織内の全ての人々から得た情報について収集・伝達する能力を向上させる。

(b2)少しでも有益情報を獲得するため、組織と関連のある外部団体と人間に呼びかける。

(b3)マーケティング情報の収集・伝達を専門的に行う責任者を任命する。

(c)マーケティング調査システム:中央管理部門のマネージャーも、保留されている組織レベルの意思決定のための十分な情報を得るため、定量的あるいは定性的なマーケティング調査を必要としている。

(d)分析的マーケティング・システム:内部記録、マーケティング情報、特定のマーケティング調査からのデータを、マネージャーによって使えるような情報と見識にする⇒具体的には、(d1)マーケティング・データ、(d2)マーケティングの問題を分析する技法、によって構成される。

(4)マーケティング調査機能

(a)マーケティング調査の使命:MISが持つ、「マーケティング・マネージャーの意思決定を助ける」という基本的使命⇒そのため、システム設計に際しては、マネージャーの意思決定をまずもって考えるべきである。

(b)長期戦略

(c)予算

(d)個々の計画を実行する手段

(e)組織

(f)評価と管理のシステム

(5)逆向き調査プロセス(The backward research process)

(a)「調査設計を最初に行う」:伝統的な調査手順

(b)「逆向き(backward)アプローチ」:調査プロセスの最後の段階から出発⇒逆向きのプロセスで作業をしていく⇒〔pp.191, 図5-3 : pp.192-198〕

(c)初期ステップにおいて、かなりのフラストレーションがたまる作業⇒しかし、経験的には、長期的に見れば相当な費用を減らし、効果をあげることができる。

(6)低費用の調査方法:定性調査、実験、便宜的サンプリング、雪だるま式サンプリング、抱き合わせ調査、ヴォランティアのフィールド・ワーカー、学生による計画、2次的情報源、理事会〔pp.198-205〕