文化の古典的定義:どこに遡りえるのか

2010.3.1

加藤久明

大学のスタートが「文化情報学」という領域であったこともあるのだが、文化というキーワードとは縁の切れない人生である。しかし、改めて考えてみると文化と呼ばれる概念ほど取り扱いが難しいものはない。さらに、文化の古典的定義というもの自体、大学の教養課程でちゃんと教えているのかも最近では怪しいと思っている。

古典的には、Edward Burnett Tylorが1873年に著したPrimitive Cultureという著作における定義に遡りえるのだが、現在では翻訳本も絶版となっており、原典に出会うこともなかなか難しい。

(E・B・タイラー. 比屋根安定訳. 『原始文化』 東京, 誠信書房, 268p, 1962)

本書の「文化科学」と題した第1章 において、その古典的定義は以下のように記されている。

「広い人類学の意味でいう文化あるいは文明とは、知識・信仰・芸術・法律・習俗・その他、社会の一員としての人の得る能力と習慣とを含む複雑な全体である。人類のさまざまな社会にある文化の状態は、人間の思想と行動との法則を研究すれば、わかるのである。一方には、文明が広く亘って統合していることは、統合した原因の統合した行動によっているからであるし、他方ではそのさまざまな段階は、発達あるいは進化の段階として見なされ、その各段階は過去の歴史から来り、また将来の歴史を形成しようとしている。人類学の部門におけるこれら二大原理を調査するに際し、低級種族の文明が高級諸国の文明と関係することを特に考えるのが、本書の目的である。」(p.1)